60 / 85
第三章
第六部分
しおりを挟む
H前は御台が席を外すのを待っていたが、なかなか動かない。
「仕方ない、ベタな作戦を実行する~。」
心の中で実行宣言をしたH前。
「喉が乾いた。ジュースおくれ~。」
「そうだね。これは気が利かずに失礼したよ。」
御台はそう言って部屋を出た。わりと事務的な態度に、微妙に落胆するH前であった。
少し首をまわして、変な気持ちを振ってから、H前は吉宗にラインでメッセージを送った。
「つ、ついに来たわ。超速で、この家に入るわよ。」
御台家の真ん前に十二単で待っている吉宗。携帯用の椅子に座っている。
「ママ、あれ何?」
「見ちゃダメよ、あんな人に付いて行っちゃ危ないからね。」
一般民家の前で十二単が堂々と座っていれば、不審者認定は極めて容易であり、この母子を始め、近所の人たちが集まって、吉宗を指差していた。
「なんだか、回りが騒がしいわ。将軍が上洛すると下賤な者は跪いて注目するのね?」
注目はされていたが、跪く人は当然不在である。
「上様、何やってるの~。渡心君が戻って来ちゃうよ~。」
「すぐ行くわ!」
玄関のドアノブに手をかけて、ドアを開いた瞬間、吉宗の目に、御台の背中画像が刺さった。御台が妹の部屋に戻る瞬間だった。
「ヤバいわ!」
慌ててドアをクローズした吉宗。
「あれ?今玄関先に誰かいたような気がしたけど。」
御台は数秒間ドアの方に視線をフォーカスしていた。
「何でもないな。外で人の声がしてたけど、勘違いしたようだな。」
御台はすぐに妹の部屋に戻った。
「はあはあはあ。失敗を寸止めできたわ。さすが、アタシ。」
失敗したが、自画自賛の吉宗。ポジティブな解釈である。
「困ったわ。作戦失敗よ。これで布切れ王子が次に部屋を出るまで時間がかかりそうだわ。でも次の作戦、ゲ剤よ。これをジュースに混ぜて、布切れ王子に飲ませるのよ。」
「上様、ゲ剤って、ゲスの発言っぽいよ~。要は毒を盛れというのか~?そういう悪だくみって、結果的にあたしが飲むことになるというのが、オチだよ~。第一、正義の味方の大岡H前が犯罪者というのはNGだよ~。」
「それもそうねえ。失敗確率、高いかもねえ。」
そんなやり取りをしている最中に、家の外が騒がしくなった。
「仕方ない、ベタな作戦を実行する~。」
心の中で実行宣言をしたH前。
「喉が乾いた。ジュースおくれ~。」
「そうだね。これは気が利かずに失礼したよ。」
御台はそう言って部屋を出た。わりと事務的な態度に、微妙に落胆するH前であった。
少し首をまわして、変な気持ちを振ってから、H前は吉宗にラインでメッセージを送った。
「つ、ついに来たわ。超速で、この家に入るわよ。」
御台家の真ん前に十二単で待っている吉宗。携帯用の椅子に座っている。
「ママ、あれ何?」
「見ちゃダメよ、あんな人に付いて行っちゃ危ないからね。」
一般民家の前で十二単が堂々と座っていれば、不審者認定は極めて容易であり、この母子を始め、近所の人たちが集まって、吉宗を指差していた。
「なんだか、回りが騒がしいわ。将軍が上洛すると下賤な者は跪いて注目するのね?」
注目はされていたが、跪く人は当然不在である。
「上様、何やってるの~。渡心君が戻って来ちゃうよ~。」
「すぐ行くわ!」
玄関のドアノブに手をかけて、ドアを開いた瞬間、吉宗の目に、御台の背中画像が刺さった。御台が妹の部屋に戻る瞬間だった。
「ヤバいわ!」
慌ててドアをクローズした吉宗。
「あれ?今玄関先に誰かいたような気がしたけど。」
御台は数秒間ドアの方に視線をフォーカスしていた。
「何でもないな。外で人の声がしてたけど、勘違いしたようだな。」
御台はすぐに妹の部屋に戻った。
「はあはあはあ。失敗を寸止めできたわ。さすが、アタシ。」
失敗したが、自画自賛の吉宗。ポジティブな解釈である。
「困ったわ。作戦失敗よ。これで布切れ王子が次に部屋を出るまで時間がかかりそうだわ。でも次の作戦、ゲ剤よ。これをジュースに混ぜて、布切れ王子に飲ませるのよ。」
「上様、ゲ剤って、ゲスの発言っぽいよ~。要は毒を盛れというのか~?そういう悪だくみって、結果的にあたしが飲むことになるというのが、オチだよ~。第一、正義の味方の大岡H前が犯罪者というのはNGだよ~。」
「それもそうねえ。失敗確率、高いかもねえ。」
そんなやり取りをしている最中に、家の外が騒がしくなった。
0
あなたにおすすめの小説
おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ
双葉 鳴
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。
彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。
そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。
洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。
さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。
持ち前のサバイバル能力で見敵必殺!
赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。
そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。
人々との出会い。
そして貴族や平民との格差社会。
ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。
牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。
うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい!
そんな人のための物語。
5/6_18:00完結!
帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。
【完結】離縁など、とんでもない?じゃあこれ食べてみて。
BBやっこ
恋愛
サリー・シュチュワートは良縁にめぐまれ、結婚した。婚家でも温かく迎えられ、幸せな生活を送ると思えたが。
何のこれ?「旦那様からの指示です」「奥様からこのメニューをこなすように、と。」「大旦那様が苦言を」
何なの?文句が多すぎる!けど慣れ様としたのよ…。でも。
ねえ、今どんな気持ち?
かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた
彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。
でも、あなたは真実を知らないみたいね
ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・
捨てた騎士と拾った魔術師
吉野屋
恋愛
貴族の庶子であるミリアムは、前世持ちである。冷遇されていたが政略でおっさん貴族の後妻落ちになる事を懸念して逃げ出した。実家では隠していたが、魔力にギフトと生活能力はあるので、王都に行き暮らす。優しくて美しい夫も出来て幸せな生活をしていたが、夫の兄の死で伯爵家を継いだ夫に捨てられてしまう。その後、王都に来る前に出会った男(その時は鳥だった)に再会して国を左右する陰謀に巻き込まれていく。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
【完結】婚約者なんて眼中にありません
らんか
恋愛
あー、気が抜ける。
婚約者とのお茶会なのにときめかない……
私は若いお子様には興味ないんだってば。
やだ、あの騎士団長様、素敵! 確か、お子さんはもう成人してるし、奥様が亡くなってからずっと、独り身だったような?
大人の哀愁が滲み出ているわぁ。
それに強くて守ってもらえそう。
男はやっぱり包容力よね!
私も守ってもらいたいわぁ!
これは、そんな事を考えているおじ様好きの婚約者と、その婚約者を何とか振り向かせたい王子が奮闘する物語……
短めのお話です。
サクッと、読み終えてしまえます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる