魔境放眼は地獄へ行く

木mori

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第一章

第二話・桃羅ノイズ発動

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 そんなふたりのやり取りを見ていた顕微鏡・双眼鏡・天体望遠鏡少女しのぶ。眇めた眼をさらに冷たく細くした。

「ねえ、桃ちゃん。その会話って、ただの仲のよいバカ兄妹にしかみえないけど。」

「ありがとうしのぶ。だからしのぶは親友なんだよ。てへッ。」

「別にほめてないし。」

「しのぶもお兄ちゃんにパンツ見せる?」

「えっ、ムリムリ、ゼッタイムリ!わたしのパ、パンツなんて、大悟兄さんには目の毒だよ!ねえ、大悟兄さん!」

「う、うむ。しのぶは冗談を言えない性格だからな。」
「くだらないわ。」

 眉根を寄せながら三人の会話を聞いていた楡浬が、大きめな声を出した。すると、イケメンのサッカー部エースストライカーに告白して『ごめんな』を食らった女子中学生の淡過ぎる夢のように、会話が突然途切れた。

 四人はいつもの登校ルートを10分ほど歩いて、今は学校の正門前である。門には黍尊(しょそん)高等学校とある。ここは去年までは、黍尊女子高校であったが、今は共学となり、校名を変更したのだが、まだ十分に定着しておらず、従前通り『キビジョ』と呼ばれている。男子生徒もほとんど入学していないのが現状である。

 学校が近づくにつれて、声をかけてくる女子もいる。

「おはよう。宇佐鬼くん。」

「桃羅ノイズ発動!」

「キャー!」

 近づいてきた女子はどこかへ飛ばされてしまった。

「またノイズか。いい加減にしなよ、桃羅。」

「ダメだよ、お兄ちゃん。女子はみんなオオカミなんだよ。お兄ちゃんを狙っているんだからね。モモが常に桃羅ノイズという魔法の盾で、お兄ちゃんを守るんだよ。」

「はあ。朝からたいへんだよ。」

 嘆息する大悟は5メートル後ろを歩く楡浬に視線を送ろうとしたがやめた。

 大悟と楡浬は今年16歳になった高校一年生であるが、桃羅としのぶは大悟よりも1歳年下である。それでも四人は同級生である。しのぶと桃羅は飛び級入試でこのキビジョに入学したのであった。

「それじゃあ、お兄ちゃん。あたしはここで。」

「おう、じゃあな。」

 大悟と楡浬・しのぶはいつものように、教室に入っていったが、桃羅は違う校舎に向かって行った。
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