魔境放眼は地獄へ行く

木mori

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第三章

第八話・許嫁

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エレベーターに乗って女子の部屋に入る大悟たち。明かりがなく、カーテンを閉めきっており、すべての壁が真っ黒なので、昼間なのに部屋の広さもわからない。


ドアが開かれた。黒く長い髪で顔の半分を隠した女子。黒いワンピースを着ている。片方だけが見える目は意外に円らである。肌は浅黒く、服に似合っている。


「これをどうぞ。手ぶらでは失礼だからにゃ。」


「ケーキ!久しぶり!」


「外出してないと聞いたからにゃ。ケーキは宅配便もないだろうし。」


「妾の分はあるんじゃろうな。なかったりしたら全妾が泣くぞ。」


「大丈夫だじょ。つるぺた幼女でも女子。女を泣かすのは趣味じゃないにゃ。」


「気が利くわね。やっぱりあなた、面白いわ。人としゃべるの、苦手なんだけど、あんたは初対面って感じじゃないわ。」


「それは光栄だ。女に誉められるのは趣味だからにゃ。」


「臭いセリフ言っても何も出ないわよ。」


「いや、お前が話してくれていることが、お礼のつもりだりょ?」


「べ、別にそんな気持ちなんてないわよ。」


「じゃあ、お礼の代わりにひとつくれないきゃ。」


「なによ。」


「名前を教えてくれたらありがたいにゃ。ちなみにオレは宇佐鬼大悟だじょ。」


「黒霞雨(くろかめ)よ。」


「黒霞雨は饅頭人居住区の区長なんだりょ?」


「正確には私を食べた饅頭人が黒霞雨だけどね。今は精神融合してるみたい。」


「黒霞雨に頼みたいことがありゅ。オレの幼なじみが饅頭人に食われて、防腐剤を投与しているが、間もなく命が消えてしまう。黒霞雨の力で、楡浬を救ってくれないきゃ?」


「ふ~ん。そういうこと。その子って、あんたの何なの?」


「あまり言いたくはないが、いちおう、オレの許嫁だじょ。」


「あらあら、それはたいへんだわね。ならばいいわ。助けてあげる。」


「そうか、ありがたいじょ!」


「でも条件があるわ。」
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