特売フイギュアワゴンの中に手を入れたら、人生変わるので注意してください。

木mori

文字の大きさ
52 / 70
第四章

第四話

しおりを挟む
大悟・楡浬はクラスではなんの役割も持っていなかった。クラス委員選定時に、各委員は決めてしまうので、転入してきた大悟は無任所生徒であった。

「何も役割がないということは、逆に何でもやれるっていうことですわ。ほら、あの生徒は体調が悪そうですから、保健室に連れて行きますわ。授業中ですから、保健委員も授業を抜けたくはないでしょうから。」
 こうして、大悟は体調不良の生徒を保健室へ連れていった。

 さらに、体育授業時に、ケガをした生徒を率先して保護したり、休憩時間に転倒した生徒を助けるなど、していた。但し、生徒からは特に感謝されることもなく、保健委員の仕事を勝手に取っているだけとの冷たい評価が続いた。
図書室で借りた本の返却忘れ代行も行った。クラスメイトへの声掛けを行った大悟。
実際依頼する生徒もいたりして、そこそこ役に立っていた。
しかし、クラスでの評判は必ずしもよくはなかった。

「選挙目当てでしょう。」「見え見えだわ。」「点数稼ぎ。」

(大悟。やっぱりこんな風に言われるのは当然だわ。)

「でもこれでいいのですわ。」
食堂手伝い、美化活動など地道なことをひたすら続けた大悟。

(もういくらやっても無駄だわ。)という楡浬の意見を取り入れることはなかった。
 
選挙一週間前になった。
委員長は一度自分の支持者を確認しておこうと集会を開いた。

「ここに来てくれたみんなはあたいを支持してくれるよね。今日は集まってくれてありがとう。」
委員長は笑顔を浮かべてたものの、その表情には曇りがあった。
放課後の教室に集まった生徒は20人だった。クラス全員では30名である。

「予想外に少ないね。これでも悪魔の二倍はあるから、圧倒的に有利なんだけど。悪魔を支持するなんて、いったいどんな了見なんだろう。」
出席者が意外に多くなかったことと、来なかったクラスメイトの気持ちが理解できず、委員長の考えはまとまらず、この日の集会は、改めて委員長のクラス運営方針を示すことなく、票読みためのものに終わった。

一方、大悟は集会を開かなかった。委員長の集会に20人集まったという情報は、桃羅から大悟のところにももたらされた。用務員室ホテルの部屋でくつろぐ大悟。
単純計算で委員長集会に出席しなかったクラスメイトが大悟支持だとすると10人。

「よく10人も集まりましたわ。」

(何言ってるのよ。20対10って完敗じゃない!あと一週間しかないのよ。)

「いやいや、10人も支持があるというのは大きな成果ですわ。スタートは2人だったんですから。クラスでは、別に委員長に不満があるわけではないけど、なにかやってくれるかもしれないというそこはかとなき期待感。変化がないことは悪いことではありません。しかし、現状維持は完璧ではありません。なにかあらぬ方向からの刺激があると、ほんの少しでもいいから現状を変えたいと思ってしまう。それが狙い目。委員長になんら失策はなく、むしろクラス運営が順調であるならば、スキはないけど、なにか変わればいいかなと思う者が出てくる。オレはそう考えてますわ。それなりの結果は出せてます。しかし、このままでは選挙でダルマの両目を黒くすることは難しいですわね。」

(そうでしょ!選挙は勝たないと意味がないわ。ああ、これからどうするのよ~?)
楡浬の小さな絶叫が部屋中に響いた。
さらに一週間、クラスの手伝いを粛々と実行した大悟。

(大悟。結局、この一週間、何もしてないわよ。こんなのでいいの?)

「何もしてないとは失礼な!ちゃんとクラスに役立つように、雑用、いや庶務をしっかりやりましたわ。」

(それって、票集めに何か役立つの?)

「十分役立ちますわ。おそらくオレに投票するであろう8人の票固めですわ。」

(負け前提!?そんなにやる気がないとは思わなかったわ。大悟のことを見損なったわ。)
楡浬はこの言葉を最後に表に出てこなくなった。

「クククッ。これであたいの勝利は揺るぎないものになったね。後はどうやって悪魔を料理するか、下拵えでもするかな。悲鳴といういいダシが出そう。言い出しっぺはあたいだよ。あたい、ウマい!プププ。」
密かに大悟ウォッチをしていた委員長の口元は、吊り上がっていた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...