21 / 53
第一章
第二十部分
しおりを挟む
「まさか、あいつが試験官だというの?」
「よし、ヒーローは送れてやってくるものだ。」
ヴァーティの仮免実技試験官は五竜であった。
「ちょっと、どうしてあんたが試験官なのよ?
「オレも教官のひとりだ。仮免試験官をやるのに、何の問題もないぞ。今までも何百回と試験官をやってるからな。特に補習常習犯をしっかりこの目で確認することには、大いにやりがいを感じているぞ。」
「あたしを落とす気満々だわね。」
「ああ、恋に落とすのなら、得意だけどな。」
「な、何言ってるのよ。アタマ、おかしいんじゃないの?」
「じゃあ、緊張が解けただろうから、試験開始だ。」
「わ、わかってるわよ。」
ヴァーティは確かに硬さが取れたことを実感して、少しうれしい気持ちになっていた。ゆえに、コースを走るのもリラックスして運転できた。
好事魔多し。順調に見えたヴァーティの運転は、クランクというカーブの連続するところで、ミラーがわずかにポールにコツンと当たった。
「やっちゃったわ!ポールに当たるということは、接触事故とほぼ同義だわ。あたし、不合格コースにハマッてしまったわ。ガックリ。」
ヴァーティは五竜が揺れるポールを見つめていることもわかった。
すっかり意気消沈して、試験コースを走ってゴール地点に到着したヴァーティ。
車から降りる時も肩を落として、老婆のようである。
ヴァーティは下を向いたまま、五竜に確認した。
「あたし、やってしまったのね。ううう。」
五竜は涙ぐむヴァーティの言いたいことを察したのか、気遣いして、冷静に回答した。
「うん。仮免実技試験は合格だ。」
「そうよね。わかっていたけど。・・・ええっ!合格?あたし、聞き間違えたのかしら。」
「もう一度言うぞ。仮免は合格だ。」
「はあ?さっき、ポールに当てたのよ。激突して大破した大事故を起こしたのよ。道路交通法をめっちゃ違反したのよ。死刑に相当するのよ!」
「だから何度も言わせるな、合格だ。」
「ま、まさか、あんた見逃し三振したの?」
「別に三振なんかしてないぞ。ちゃんとフルスイングして査定したつもりだけど。」
「全然納得いかないわ。あたしはインチキしてまで仮免免許証をほしくはないわ。そんなの、あたしのプライドが許さないわ。」
「よし、ヒーローは送れてやってくるものだ。」
ヴァーティの仮免実技試験官は五竜であった。
「ちょっと、どうしてあんたが試験官なのよ?
「オレも教官のひとりだ。仮免試験官をやるのに、何の問題もないぞ。今までも何百回と試験官をやってるからな。特に補習常習犯をしっかりこの目で確認することには、大いにやりがいを感じているぞ。」
「あたしを落とす気満々だわね。」
「ああ、恋に落とすのなら、得意だけどな。」
「な、何言ってるのよ。アタマ、おかしいんじゃないの?」
「じゃあ、緊張が解けただろうから、試験開始だ。」
「わ、わかってるわよ。」
ヴァーティは確かに硬さが取れたことを実感して、少しうれしい気持ちになっていた。ゆえに、コースを走るのもリラックスして運転できた。
好事魔多し。順調に見えたヴァーティの運転は、クランクというカーブの連続するところで、ミラーがわずかにポールにコツンと当たった。
「やっちゃったわ!ポールに当たるということは、接触事故とほぼ同義だわ。あたし、不合格コースにハマッてしまったわ。ガックリ。」
ヴァーティは五竜が揺れるポールを見つめていることもわかった。
すっかり意気消沈して、試験コースを走ってゴール地点に到着したヴァーティ。
車から降りる時も肩を落として、老婆のようである。
ヴァーティは下を向いたまま、五竜に確認した。
「あたし、やってしまったのね。ううう。」
五竜は涙ぐむヴァーティの言いたいことを察したのか、気遣いして、冷静に回答した。
「うん。仮免実技試験は合格だ。」
「そうよね。わかっていたけど。・・・ええっ!合格?あたし、聞き間違えたのかしら。」
「もう一度言うぞ。仮免は合格だ。」
「はあ?さっき、ポールに当てたのよ。激突して大破した大事故を起こしたのよ。道路交通法をめっちゃ違反したのよ。死刑に相当するのよ!」
「だから何度も言わせるな、合格だ。」
「ま、まさか、あんた見逃し三振したの?」
「別に三振なんかしてないぞ。ちゃんとフルスイングして査定したつもりだけど。」
「全然納得いかないわ。あたしはインチキしてまで仮免免許証をほしくはないわ。そんなの、あたしのプライドが許さないわ。」
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。
拾われ子のスイ
蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】
記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。
幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。
老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。
――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。
スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。
出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。
清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。
これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。
※週2回(木・日)更新。
※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。
※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載)
※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる