22 / 53
第一章
第二十一部分
しおりを挟む
「いや合格だ。」
「そんなんじゃ、理解できないわ。」
「仕方ないな。じゃあ、コースに戻ろうか。」
「そう、それでいいのよ。再試験なら受けて立つわ。」
五竜は自分で教習車を運転してバーティをコースに連れていく。
「ちょっと、運転するのはあたしじゃないの?ま、まさか、あたしをどこかへ連れてって、あんなことやそんなことをする気じゃないでしょうね?」
「あんなことやそんなことはしないけど。」
「ふう。良かったわ。ザンネン。」
「何か言ったか。」
「何でもないわ。」
「あんなことはしないけど、こんなことはするよ。」
「えっ!やっぱりケダモノだったの?」
『バタン。』
ドアを開いた五竜は、ヴァーティの手を取った。
「きゃあああ。お・か・さ・れ・る・わ。」
ヴァーティは怯えているのか、喜んでいるのか、わからないリアクションを公明正大に示した。
「あれ?こんなところで、ナニをするの?」
ふたりは実技コースのクランクのところに立っていた。
試験中に、ヴァーティがポールに当たったところである。五竜は曲がって折れかかったポールを触っている。
「これは取り替えないといけないな。ポールが古くなって曲がっていたんだよな。
まさか、だからあたしの車に当たったっていうこと?」
五竜は何も言わずに、校舎にゆっくりと歩いていった。
取り残されたヴァーティは、後ろ姿の五竜に聞こえないような声で、『ありがとう。』と言った。
ヴァーティが夕陽の眩しさに気づかず、五竜の背中を見つめていた。
仮免合格の翌日。駐車場のヴァーティの前には、五竜が立っていた。
「どうしてあんたがあたしの教官なの。」
「路上コースはオレが担当する。これからのこともあるしな。」
「これから?」
「早くエンジンをかけろ。時間がもったいない。」
「そんなんじゃ、理解できないわ。」
「仕方ないな。じゃあ、コースに戻ろうか。」
「そう、それでいいのよ。再試験なら受けて立つわ。」
五竜は自分で教習車を運転してバーティをコースに連れていく。
「ちょっと、運転するのはあたしじゃないの?ま、まさか、あたしをどこかへ連れてって、あんなことやそんなことをする気じゃないでしょうね?」
「あんなことやそんなことはしないけど。」
「ふう。良かったわ。ザンネン。」
「何か言ったか。」
「何でもないわ。」
「あんなことはしないけど、こんなことはするよ。」
「えっ!やっぱりケダモノだったの?」
『バタン。』
ドアを開いた五竜は、ヴァーティの手を取った。
「きゃあああ。お・か・さ・れ・る・わ。」
ヴァーティは怯えているのか、喜んでいるのか、わからないリアクションを公明正大に示した。
「あれ?こんなところで、ナニをするの?」
ふたりは実技コースのクランクのところに立っていた。
試験中に、ヴァーティがポールに当たったところである。五竜は曲がって折れかかったポールを触っている。
「これは取り替えないといけないな。ポールが古くなって曲がっていたんだよな。
まさか、だからあたしの車に当たったっていうこと?」
五竜は何も言わずに、校舎にゆっくりと歩いていった。
取り残されたヴァーティは、後ろ姿の五竜に聞こえないような声で、『ありがとう。』と言った。
ヴァーティが夕陽の眩しさに気づかず、五竜の背中を見つめていた。
仮免合格の翌日。駐車場のヴァーティの前には、五竜が立っていた。
「どうしてあんたがあたしの教官なの。」
「路上コースはオレが担当する。これからのこともあるしな。」
「これから?」
「早くエンジンをかけろ。時間がもったいない。」
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる