進芸の巨人は逆境に勝ちます!

木mori

文字の大きさ
34 / 76
第一章

第三十三部分

しおりを挟む
寮を出る前に、美散から激励という名の命令を受けて登校する智流美。
「何が何でも学校でレイちゃんに話しかけるんだよ。それ以外は何もしなくていいよ。三食授業中昼寝付きなんだよ。サラリーマンが泣いて喜ぶストレスレス待遇なんだからね。かわいいから、これだけ優遇してやってるんだよ。ぺたぺた。」
 ぺたぺた攻撃に慣れた智流美は、あっさりとかわした。
「どうしてアタシが命令なんてされないといけないのよ。早く学校に行ってふて寝しまくってやるわ。どうせ勉強なんかアタシには関係ないし。」
ブツブツ文句を言いながら前のめりになって、騒音を立てて歩いている智流美。大股での歩行スピードは思いの外速く、均整の取れた広い背中が視野に入ってきた。すると急に内股になって、足音も小さくなった。
「玲駆の後ろ姿、実に凛々しいわ。脱いだらスゴいのかしら。触れたら堅いけど、温かな筋肉の躍動を感じることができるハズだわ。ああ、その血色のいい肌に、アタシの爪で彫り物したい!」
スーパー銭湯に出入り禁止させようとする意図のような発言をしつつ、玲駆の5メートル後ろにピタッとつけて、アオリ歩行する智流美。
「よし、告白しようっと。そう思ったら、電車が走ってくるよね。今はそういう時間帯じゃないし。」
そのように、周囲の状況を確認し、気持ちを高ぶらせて、玲駆に挑もうとする美散。
「ちょっと、玲駆。待ちなさいよ!」
 勇気を振り絞った智流美。
「いたたた。」
動こうとした智流美の目の前に、禿げたじいさんが転がってきた。
『ガクッ』とよろけた智流美は気を取り直して、少しずつ間合いを詰めてついに玲駆の背中に爪を当てようとしたが、今度は白い腕が邪魔をした。その腕は玲駆の左肩から右肩に伸びた。
「オハヨウゴザイマス。ドレイクサン。」
「お早う。って、いきなり何するんだ、ローザ!」
玲駆はローザの腕を振りほどいた。
「ゴメンナサイ。コレガ、ジャパニーズ、モーニングスキンシップダト、勘違イシマシタ。」
「それなら仕方ないな。しっかり学習しろよ。」
「誰、あの女?ハーフっぽいけど、玲駆は知り合いみたいだわ。なんかヤバいニオイがする。匂いじゃなくて、臭いって感じのヤバさだわ。」
 智流美は少し歩いて、学校が見えてきた。
「ここが学校ね。初めて来たけど、美散の記憶にあるから、これからの行動に問題はないわね。『彫り物背中』は先に行ったから、もう学校に着いてるわね。」
玲駆は警察にマークされかねないニックネームを植え付けられてしまった。
智流美は校舎に入ると、中をじっくりと確認しながら教室に向かっていく。
「この教室に入ればいいのね。アタシの席は、廊下側のいちばん後ろの廊下から三列目だわ。」
智流美の視線が、廊下側のいちばん後ろをサーチした。そこには玲駆が座っていて、カバンの中身を確認していた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

悪役令嬢と弟が相思相愛だったのでお邪魔虫は退場します!どうか末永くお幸せに!

ユウ
ファンタジー
乙女ゲームの王子に転生してしまったが断罪イベント三秒前。 婚約者を蔑ろにして酷い仕打ちをした最低王子に転生したと気づいたのですべての罪を被る事を決意したフィルベルトは公の前で。 「本日を持って私は廃嫡する!王座は弟に譲り、婚約者のマリアンナとは婚約解消とする!」 「「「は?」」」 「これまでの不始末の全ては私にある。責任を取って罪を償う…全て悪いのはこの私だ」 前代未聞の出来事。 王太子殿下自ら廃嫡を宣言し婚約者への謝罪をした後にフィルベルトは廃嫡となった。 これでハッピーエンド。 一代限りの辺境伯爵の地位を許され、二人の幸福を願ったのだった。 その潔さにフィルベルトはたちまち平民の心を掴んでしまった。 対する悪役令嬢と第二王子には不測の事態が起きてしまい、外交問題を起こしてしまうのだったが…。 タイトル変更しました。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

悪役令嬢、休職致します

碧井 汐桜香
ファンタジー
そのキツい目つきと高飛車な言動から悪役令嬢として中傷されるサーシャ・ツンドール公爵令嬢。王太子殿下の婚約者候補として、他の婚約者候補の妨害をするように父に言われて、実行しているのも一因だろう。 しかし、ある日突然身体が動かなくなり、母のいる領地で療養することに。 作中、主人公が精神を病む描写があります。ご注意ください。 作品内に登場する医療行為や病気、治療などは創作です。作者は医療従事者ではありません。実際の症状や治療に関する判断は、必ず医師など専門家にご相談ください。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

逆行令嬢と転生ヒロイン

未羊
ファンタジー
【注意】この作品は自己転載作品です。現在の他所での公開済みの分が終了後、続編として新シリーズの執筆を予定しております。よろしくお願い致します。 【あらすじ】 侯爵令嬢ロゼリア・マゼンダは、身に覚えのない罪状で断罪、弁明の機会も無く即刻処刑されてしまう。 しかし、死んだと思った次の瞬間、ベッドの上で目を覚ますと、八歳の頃の自分に戻っていた。 過去に戻ったロゼリアは、処刑される未来を回避するべく、経過を思い出しながら対策を立てていく。 一大ジャンルとも言える悪役令嬢ものです

処理中です...