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第一章
第三十三部分
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寮を出る前に、美散から激励という名の命令を受けて登校する智流美。
「何が何でも学校でレイちゃんに話しかけるんだよ。それ以外は何もしなくていいよ。三食授業中昼寝付きなんだよ。サラリーマンが泣いて喜ぶストレスレス待遇なんだからね。かわいいから、これだけ優遇してやってるんだよ。ぺたぺた。」
ぺたぺた攻撃に慣れた智流美は、あっさりとかわした。
「どうしてアタシが命令なんてされないといけないのよ。早く学校に行ってふて寝しまくってやるわ。どうせ勉強なんかアタシには関係ないし。」
ブツブツ文句を言いながら前のめりになって、騒音を立てて歩いている智流美。大股での歩行スピードは思いの外速く、均整の取れた広い背中が視野に入ってきた。すると急に内股になって、足音も小さくなった。
「玲駆の後ろ姿、実に凛々しいわ。脱いだらスゴいのかしら。触れたら堅いけど、温かな筋肉の躍動を感じることができるハズだわ。ああ、その血色のいい肌に、アタシの爪で彫り物したい!」
スーパー銭湯に出入り禁止させようとする意図のような発言をしつつ、玲駆の5メートル後ろにピタッとつけて、アオリ歩行する智流美。
「よし、告白しようっと。そう思ったら、電車が走ってくるよね。今はそういう時間帯じゃないし。」
そのように、周囲の状況を確認し、気持ちを高ぶらせて、玲駆に挑もうとする美散。
「ちょっと、玲駆。待ちなさいよ!」
勇気を振り絞った智流美。
「いたたた。」
動こうとした智流美の目の前に、禿げたじいさんが転がってきた。
『ガクッ』とよろけた智流美は気を取り直して、少しずつ間合いを詰めてついに玲駆の背中に爪を当てようとしたが、今度は白い腕が邪魔をした。その腕は玲駆の左肩から右肩に伸びた。
「オハヨウゴザイマス。ドレイクサン。」
「お早う。って、いきなり何するんだ、ローザ!」
玲駆はローザの腕を振りほどいた。
「ゴメンナサイ。コレガ、ジャパニーズ、モーニングスキンシップダト、勘違イシマシタ。」
「それなら仕方ないな。しっかり学習しろよ。」
「誰、あの女?ハーフっぽいけど、玲駆は知り合いみたいだわ。なんかヤバいニオイがする。匂いじゃなくて、臭いって感じのヤバさだわ。」
智流美は少し歩いて、学校が見えてきた。
「ここが学校ね。初めて来たけど、美散の記憶にあるから、これからの行動に問題はないわね。『彫り物背中』は先に行ったから、もう学校に着いてるわね。」
玲駆は警察にマークされかねないニックネームを植え付けられてしまった。
智流美は校舎に入ると、中をじっくりと確認しながら教室に向かっていく。
「この教室に入ればいいのね。アタシの席は、廊下側のいちばん後ろの廊下から三列目だわ。」
智流美の視線が、廊下側のいちばん後ろをサーチした。そこには玲駆が座っていて、カバンの中身を確認していた。
「何が何でも学校でレイちゃんに話しかけるんだよ。それ以外は何もしなくていいよ。三食授業中昼寝付きなんだよ。サラリーマンが泣いて喜ぶストレスレス待遇なんだからね。かわいいから、これだけ優遇してやってるんだよ。ぺたぺた。」
ぺたぺた攻撃に慣れた智流美は、あっさりとかわした。
「どうしてアタシが命令なんてされないといけないのよ。早く学校に行ってふて寝しまくってやるわ。どうせ勉強なんかアタシには関係ないし。」
ブツブツ文句を言いながら前のめりになって、騒音を立てて歩いている智流美。大股での歩行スピードは思いの外速く、均整の取れた広い背中が視野に入ってきた。すると急に内股になって、足音も小さくなった。
「玲駆の後ろ姿、実に凛々しいわ。脱いだらスゴいのかしら。触れたら堅いけど、温かな筋肉の躍動を感じることができるハズだわ。ああ、その血色のいい肌に、アタシの爪で彫り物したい!」
スーパー銭湯に出入り禁止させようとする意図のような発言をしつつ、玲駆の5メートル後ろにピタッとつけて、アオリ歩行する智流美。
「よし、告白しようっと。そう思ったら、電車が走ってくるよね。今はそういう時間帯じゃないし。」
そのように、周囲の状況を確認し、気持ちを高ぶらせて、玲駆に挑もうとする美散。
「ちょっと、玲駆。待ちなさいよ!」
勇気を振り絞った智流美。
「いたたた。」
動こうとした智流美の目の前に、禿げたじいさんが転がってきた。
『ガクッ』とよろけた智流美は気を取り直して、少しずつ間合いを詰めてついに玲駆の背中に爪を当てようとしたが、今度は白い腕が邪魔をした。その腕は玲駆の左肩から右肩に伸びた。
「オハヨウゴザイマス。ドレイクサン。」
「お早う。って、いきなり何するんだ、ローザ!」
玲駆はローザの腕を振りほどいた。
「ゴメンナサイ。コレガ、ジャパニーズ、モーニングスキンシップダト、勘違イシマシタ。」
「それなら仕方ないな。しっかり学習しろよ。」
「誰、あの女?ハーフっぽいけど、玲駆は知り合いみたいだわ。なんかヤバいニオイがする。匂いじゃなくて、臭いって感じのヤバさだわ。」
智流美は少し歩いて、学校が見えてきた。
「ここが学校ね。初めて来たけど、美散の記憶にあるから、これからの行動に問題はないわね。『彫り物背中』は先に行ったから、もう学校に着いてるわね。」
玲駆は警察にマークされかねないニックネームを植え付けられてしまった。
智流美は校舎に入ると、中をじっくりと確認しながら教室に向かっていく。
「この教室に入ればいいのね。アタシの席は、廊下側のいちばん後ろの廊下から三列目だわ。」
智流美の視線が、廊下側のいちばん後ろをサーチした。そこには玲駆が座っていて、カバンの中身を確認していた。
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