パイオニアオブエイジ~NWSかく語りき〜

どん

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第1話『今年の仕事』

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「まぁ、万世の秘法だけがプラスの価値でもなし、いろんな人がいていいんじゃない」 
 ナタルがぼんやり上の方を見て言った。
「一つの思想が席巻してる世界ってのも、発展性がないからね」
 その言葉に目を剥く一同。
「ちょっと! それじゃ呪界法信奉者を容認しているように聞こえるぞ」
 ポールが声を潜めて辺りを窺った。幸い周囲は自分たちの盛り上がりしか眼中にないようだった。
「あーびっくりした。ナタル、度肝抜くなら私たちといる時だけにしてよ!」
 オリーブが怒る。
「いや、俺は恋愛とか趣味とかに没頭する人たちのことを言ったんであって……」
「わかってるわよ、そんなこと。でもここは因果界よ? 私たちのネガティブな一言も真実になり得るんだからね」
「大丈夫です、空気は震撼していません」
 ランスが辺りを透視して様子を探り、異常がないことを確かめた。
「はぁ~っ」
「脅かしっこなしだぜ、ナタル」
 キーツの安堵の溜め息に、マルクの声が被る。
「な、なんかごめん」
 大きな体を縮めてナタルが謝る。
「これだから俺たちは酔っぱらえないんだよな」
 タイラーの言葉にますます小さくなる。
「他意のない一言だからよかったのよ。ナタルの発言は危なっかしいけれど、悪意がないところが救いだわ」
 トゥーラの冷静な分析に、アロンも頷いて言った。
「そうだな。危なっかしくて小心者には渡れない橋だよな」
「うーん、ナタルは偉大だ」
 キーツが言って、プッと吹き出す者数名。
「危ないついでに言っておくが、俺たちの今年の仕事はパラティヌスを飛び出して、隣国カエリウスになりそうだぞ」
 マルクの言葉に騒然となる。
「へぇ、レンナちゃんから連絡あったんだ」
 ポールが努めて明るく言った。
「そうなんだ。もう国内にはNWSが請け負えるような大きな仕事がないんだってさ」
「そりゃそうだ、平和そのものだし」
 キーツがのほほんと言った。
「レンナちゃんが取ってくる仕事だから、安全面は配慮されてるんだろうけど、カエリウスって言えば軍事国だし、例のアレは出てこないのかな?」
「アレ?」
 ナタルの発言に、みんな頭の中に疑問符を浮かべる。
「頭に呪のつく……」
「なんだ、呪界法信奉者か。そこまでビクつくなよ」
 タイラーがナタルを軽く睨む。
「その辺りのことはどうなの? マルク」
 オリーブが問うと、マルクが平然と言った。
「代表は修法陣を施すって言ってたけど、なにせ月の洞ムーン・ケイブの監視が半端なく厳しい国だ。ま、出るけど近寄れないぐらいに思ってた方がいいかもな」
「出るんだ……」
 放心したようにナタルが言うと、その背中をタイラーがバシッと叩いた。
「ビビんな。さっきの度胸はどうした」
 そこでポールが余計な一言。
「ナタル、職失うのと呪界法信奉者とお近づきになるの、どっちがいい?」
「どっちも嫌に決まってるじゃないか!」
「な、なんて正直なんだ、ナタルさん」
 ルイスが尊敬にも似た感想を漏らす。
「ここでご婦人なら気付け薬が必要なところだけどね」
 どんどん青白くなるナタルに、言い出しっぺのポールが無責任に突き放した。
「古典じゃないんだから。けど、ナタルじゃなくても尻込みするやつは結構いそうだな」
 一応突っ込んでから、アロンがNWSメンバー……特に軟派な9班の男性メンバーの顔を思い浮かべた。
「あー、ウチも他人事じゃないかも」
 キーツもノリの軽い男性メンバーと、彼に何かと絡みたがる仇っぽい女性メンバーの依存度が急上昇するのを見越してぞっとした。
「俺のところは説明次第だな」
 タイラーの8班はよく統制が取れているので定評があった。
「あらご立派。ウチは私が往くなら大丈夫って思うだろうから」
 オリーブの3班は彼女を中心に抜群のチームワークを誇っていた。
 リーダーらが戦々恐々となるのは月の洞が原因だった。
 因果界の地下世界で、万世の秘法と呪界法信奉者、二大勢力が火花を散らす危険地帯。
 環境修復技術のみの位階者では、基本的に近寄ることもできない最前線である。













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