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第1話『勢力図』
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「まぁそこは肚据えてかかるとして……呪界法信奉者の動向は頭に入れておいた方がいいだろうな」
マルクが全員の注意を促す。
「あんまり勢力図は変わってないよね?」
ポールがグラスから落ちた水滴で、大体の地図を描く。
すると、水で書いた線が浮き上がって世界地図になった。アクアドローイングという、水の精霊の力を借りた技術だ。
「有名どころでカピトリヌスは激戦地で、エスクリヌスはやつらの根城と。カエリウスとウィミナリス上層の月の洞は水際で阻止してる……」
ポールが×を書いた国が赤いマーカーに切り替わる。
「クイリナリスじゃ穀物の強奪事件が相次いで起きてるが、これがどうもやつらの仕業らしい。パラティヌスとアウェンティヌスは完全に万世の秘法の統治下にある。こんなもんか」
「そうだな。ウィミナリスもやつらと切り離して考えていいんじゃないか。最近じゃ連戦連勝で撃退に成功してるって話だ。準じてカエリウスとクイリナリスが万世の秘法の傘下にある、と」
マルクの補足でポールが〇を書いて、マーカーを青に切り替える。
「こうしてみると、万世の秘法は呪界法信奉者をぐるっと取り囲んでるんだね」
キーツが言うと、タイラーが唸った。
「カピトリヌスとエスクリヌスが膠着状態なのは、負のエネルギーが強すぎて、万世の秘法の正エネルギーを跳ね返すせいだからな。こんな有利な状態で攻めあぐねているとは……」
「POAだって、自分たちの戦闘技術が有利に展開しないと勝ち戦にならないしね」
アロンが言うPOAとは、正式には『PIONEER OF AGE 』のことで、対テロ組織である。万世の秘法の傘下で、各戦場で陣頭指揮を執っている。
「呪界法信奉者にしたって同条件で、境目でしか戦争なりテロを仕掛けられないんだから、膠着状態にもなるわな」
ポールが皮肉ると、ナタルが言った。
「でも、このバランスが崩れるようなことがあると、何が起こるかわからないよね。実際、5年前のNWSの初仕事で負のエネルギーの浄化に取り組んでた時も。銀霊鳥が星の野原まで渡り切れなくて落っこちる事件があったじゃないか。あれだってカピトリヌスとエスクリヌスの負のエネルギーが変化を妨げてたから起こったんだからね」
銀霊鳥とは、人が亡くなった時、魂が変化する姿のことである。鷺によく似ているが、頭に冠毛があり尾がふさふさとしているのが特徴的だ。東から西へと渡り、終着地は因果界の西の大樹海、そのまた向こうの星の野原。しばらくそのままの姿で過ごした後、大地に還るという――。
「俺たちの仕事は、POAが呪界法信奉者を退けて、平定した土地の浄化だからな。この先、どんな荒廃した土地を割り振られても、浄化できないとは言えないわけだ」
タイラーが不敵に笑う。
「パラティヌスにいるだけじゃ、発展は望めないか……」
オリーブが考え込むように両肘をついて前屈みになった。
「銀霊鳥化できない論外の土地を拡げないことだね。それはそうとさ、カエリウスの仕事するのはいいけど、平面者以下、応用効くのかね? どうせあれでしょ、炎樹の森の整備じゃないの」
ポールが指摘すると、マルクが答えた。
「そうなんだが……パラティヌスと違って、そもそも植生が違うだろ? さっきの話にもあったが、妖精が闊歩する土地柄ではないようだし、調査資料が頼りの難しい仕事だ。ちょっと聞いただけだが、ナラ枯れを起こした木の導管を修復するのと、そのあと土地も保護してほしい、というのが先方の希望だ」
「最低でも修法二つは施せないと仕事にならないな。パラティヌスでの仕事に慣れてる平面者に意識を変えてもらわないとね」
アロンが懸念するのはもっともで、平面者には「このくらいできればいいか」という気風があり、どうにも積極性に欠けるのだった。
「これは修法のアンケート調査を実施しないと」
キーツが頭の後ろで両手を組んで言うと、ルイスも遠慮がちに言った。
「後ろ向きかもしれませんけど、仕事の参加そのものもアンケート取りませんか?
カエリウスって聞いただけで拒否するメンバーもいると思うんですよ」
「うわーっ、そっからかぁ」
ポールの頭の中で、メンバーの形をしたドミノがバタバタ倒れる図がありありと浮かんだ。
「奮って参加してほしいよね。NWSの今後のためにも」
「こんなに見返りが大きい仕事もないからな」
オリーブの前向きな発言に、タイラーが頷いた。
「今回の報酬額は?」
「150億Eだ」
「うん、まずまずだね」
ポールとマルクが何気なくとんでもない話をする。
万世の秘法では、国際的な仕事をするほど報酬は飛び抜けて高い。NWSの場合は修法者のレンナの仕事を請け負うので、個別に仕事するよりも超高額である。
マルクが全員の注意を促す。
「あんまり勢力図は変わってないよね?」
ポールがグラスから落ちた水滴で、大体の地図を描く。
すると、水で書いた線が浮き上がって世界地図になった。アクアドローイングという、水の精霊の力を借りた技術だ。
「有名どころでカピトリヌスは激戦地で、エスクリヌスはやつらの根城と。カエリウスとウィミナリス上層の月の洞は水際で阻止してる……」
ポールが×を書いた国が赤いマーカーに切り替わる。
「クイリナリスじゃ穀物の強奪事件が相次いで起きてるが、これがどうもやつらの仕業らしい。パラティヌスとアウェンティヌスは完全に万世の秘法の統治下にある。こんなもんか」
「そうだな。ウィミナリスもやつらと切り離して考えていいんじゃないか。最近じゃ連戦連勝で撃退に成功してるって話だ。準じてカエリウスとクイリナリスが万世の秘法の傘下にある、と」
マルクの補足でポールが〇を書いて、マーカーを青に切り替える。
「こうしてみると、万世の秘法は呪界法信奉者をぐるっと取り囲んでるんだね」
キーツが言うと、タイラーが唸った。
「カピトリヌスとエスクリヌスが膠着状態なのは、負のエネルギーが強すぎて、万世の秘法の正エネルギーを跳ね返すせいだからな。こんな有利な状態で攻めあぐねているとは……」
「POAだって、自分たちの戦闘技術が有利に展開しないと勝ち戦にならないしね」
アロンが言うPOAとは、正式には『PIONEER OF AGE 』のことで、対テロ組織である。万世の秘法の傘下で、各戦場で陣頭指揮を執っている。
「呪界法信奉者にしたって同条件で、境目でしか戦争なりテロを仕掛けられないんだから、膠着状態にもなるわな」
ポールが皮肉ると、ナタルが言った。
「でも、このバランスが崩れるようなことがあると、何が起こるかわからないよね。実際、5年前のNWSの初仕事で負のエネルギーの浄化に取り組んでた時も。銀霊鳥が星の野原まで渡り切れなくて落っこちる事件があったじゃないか。あれだってカピトリヌスとエスクリヌスの負のエネルギーが変化を妨げてたから起こったんだからね」
銀霊鳥とは、人が亡くなった時、魂が変化する姿のことである。鷺によく似ているが、頭に冠毛があり尾がふさふさとしているのが特徴的だ。東から西へと渡り、終着地は因果界の西の大樹海、そのまた向こうの星の野原。しばらくそのままの姿で過ごした後、大地に還るという――。
「俺たちの仕事は、POAが呪界法信奉者を退けて、平定した土地の浄化だからな。この先、どんな荒廃した土地を割り振られても、浄化できないとは言えないわけだ」
タイラーが不敵に笑う。
「パラティヌスにいるだけじゃ、発展は望めないか……」
オリーブが考え込むように両肘をついて前屈みになった。
「銀霊鳥化できない論外の土地を拡げないことだね。それはそうとさ、カエリウスの仕事するのはいいけど、平面者以下、応用効くのかね? どうせあれでしょ、炎樹の森の整備じゃないの」
ポールが指摘すると、マルクが答えた。
「そうなんだが……パラティヌスと違って、そもそも植生が違うだろ? さっきの話にもあったが、妖精が闊歩する土地柄ではないようだし、調査資料が頼りの難しい仕事だ。ちょっと聞いただけだが、ナラ枯れを起こした木の導管を修復するのと、そのあと土地も保護してほしい、というのが先方の希望だ」
「最低でも修法二つは施せないと仕事にならないな。パラティヌスでの仕事に慣れてる平面者に意識を変えてもらわないとね」
アロンが懸念するのはもっともで、平面者には「このくらいできればいいか」という気風があり、どうにも積極性に欠けるのだった。
「これは修法のアンケート調査を実施しないと」
キーツが頭の後ろで両手を組んで言うと、ルイスも遠慮がちに言った。
「後ろ向きかもしれませんけど、仕事の参加そのものもアンケート取りませんか?
カエリウスって聞いただけで拒否するメンバーもいると思うんですよ」
「うわーっ、そっからかぁ」
ポールの頭の中で、メンバーの形をしたドミノがバタバタ倒れる図がありありと浮かんだ。
「奮って参加してほしいよね。NWSの今後のためにも」
「こんなに見返りが大きい仕事もないからな」
オリーブの前向きな発言に、タイラーが頷いた。
「今回の報酬額は?」
「150億Eだ」
「うん、まずまずだね」
ポールとマルクが何気なくとんでもない話をする。
万世の秘法では、国際的な仕事をするほど報酬は飛び抜けて高い。NWSの場合は修法者のレンナの仕事を請け負うので、個別に仕事するよりも超高額である。
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