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第2話『NWSリーダー会議』
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当番司会、トゥーラが会議の開始を告げる。
「それでは昇陽の一月清祓《せいふつ》の五日、NWSリーダー会議を始めます」
集会所の円卓を囲んで、神妙な表情のリーダーたち。
手元にはトゥーラの手による資料が配られていた。
「まず第一に仕事計画から、マルクお願いします」
「はい」
マルクが立って話す。
「先日話した通り、今年は隣国カエリウスの炎樹の森が活動場所になる。代表が言うには、去年の秋はナラ枯れを起こす、カシノナガキクイムシの被害が目立って多かったそうだ。そこで、パラティヌスとの国境、シシュ山脈とアルペンディー大山脈の麓……つまり、因果界で言うところのガーネットラヴィーン、ルビーウッズ、アンバーフットだが。この三方向から追跡マーカーを設置する。通称カシナガの分布がはっきりしたら、修法ツリーリジェネレーション《木の再生》で、詰まったナラの導管を修復していく。この作業だけで半年以上かかるとみている」
「まずはツリーリジェネレーションの講習からだな」
ナタルが資料を目で追いながら言った。
「習得人数は?」
アロンが問う。
「アンケートによると43人だ」
「少なっ!」
ポールとキーツが思わずハモる。
「その43人を追跡マーカー設置で先行させた方がよくないか?」
アロンが意見を出すと、マルクが異を唱えた。
「それでもいいが、時間がかかるだろう。人数はいた方がいい。分かれると作業に食い違いが出るからな」
「どっちにしろ講師は2、3人いれば十分だろ」
タイラーが資料を拳骨で叩きながら言った。
「トゥーラとランスさん、アロンが適任だな」
マルクが即座に名前を挙げた。
「現地の修法者との段取りはマルクが仕切ってくれよ。どうせレンナちゃんは出られないんだし」
「及ばずながらな」
ポールが念を押し、マルクが頷く。
「ツリーリジェネレーションって因果界の炎樹の森で施せば、真央界の方はノータッチでいいんでしょ?」
オリーブが眉根を寄せて言うと、アロンが答えた。
「例によって、遅効性を狙った時間差処方に留めるしかないだろうね」
「じゃあ木の保護も考えないと。アースフォローアップがいいかな」
「そうそう、カシナガを全滅させるわけにはいかないから、今回の現場域外にナラの倒木を用意するそうだ。カシナガには少数、域外に移動してもらって、域内での繁殖に時間差を設けると。そのためにもオリーブが言ったように、木の保護もしておきたいところなんだが――」
マルクが言葉を切った。
「だが――?」
ナタルが問い返すと、ポールが言い当てた。
「あれでしょ、アースフォローアップの習得者が少ない」
「実は10人切ってるんだ」
マルクの言葉にのけぞったキーツがぼやいた。
「そりゃヒドいわ」
「ナラ類の数は300万本ですよね。すると割ることの総当たり100人で3万本。さらに残日数220日で割って、1日136本! 8時間労働だとした1人1時間当たり17本ですよ。できますか?」
ルイスが自分の計算に青くなった。
「実際にはもっと厳しいだろうな。……それは100人全員がツリーリジェネレーションとアースフォローアップができる場合の計算だからな。講習は最低でも1か月は見ないといけないし、参加人数も若干減るしな」
マルクのボヤキに、ポールが短く問う。
「何人?」
「86人……今回、男性メンバーの不参加が多くてな。班ごとに見ると、ポールとキーツ、アロンのところが全滅なんだ」
「あの、うすらボケどもが!!」
足元をすくわれて、ポールの怒りが天井を突き抜ける。
「ま、そんなこったろうとは思ってたけどな」
「同じく」
アロンもキーツもメンバーに問い質す気力もないらしい。
「あらら、班体制で仕事するのは無理ねぇ」
オリーブが呑気に言った。
「そのうえ修法の習得にもバラつきがありますし、今回は上手に人材配置をしないといけないですね」
ランスが資料から目を離して溜め息をついた。
「やれやれ」
「うーん、何かうまい方法を考えださないと」
タイラーはメンバーの情けなさに呆れ、ナタルは大した考えもなく言葉を継いだ。
「はい」
トゥーラが手を上げた。
「それでは昇陽の一月清祓《せいふつ》の五日、NWSリーダー会議を始めます」
集会所の円卓を囲んで、神妙な表情のリーダーたち。
手元にはトゥーラの手による資料が配られていた。
「まず第一に仕事計画から、マルクお願いします」
「はい」
マルクが立って話す。
「先日話した通り、今年は隣国カエリウスの炎樹の森が活動場所になる。代表が言うには、去年の秋はナラ枯れを起こす、カシノナガキクイムシの被害が目立って多かったそうだ。そこで、パラティヌスとの国境、シシュ山脈とアルペンディー大山脈の麓……つまり、因果界で言うところのガーネットラヴィーン、ルビーウッズ、アンバーフットだが。この三方向から追跡マーカーを設置する。通称カシナガの分布がはっきりしたら、修法ツリーリジェネレーション《木の再生》で、詰まったナラの導管を修復していく。この作業だけで半年以上かかるとみている」
「まずはツリーリジェネレーションの講習からだな」
ナタルが資料を目で追いながら言った。
「習得人数は?」
アロンが問う。
「アンケートによると43人だ」
「少なっ!」
ポールとキーツが思わずハモる。
「その43人を追跡マーカー設置で先行させた方がよくないか?」
アロンが意見を出すと、マルクが異を唱えた。
「それでもいいが、時間がかかるだろう。人数はいた方がいい。分かれると作業に食い違いが出るからな」
「どっちにしろ講師は2、3人いれば十分だろ」
タイラーが資料を拳骨で叩きながら言った。
「トゥーラとランスさん、アロンが適任だな」
マルクが即座に名前を挙げた。
「現地の修法者との段取りはマルクが仕切ってくれよ。どうせレンナちゃんは出られないんだし」
「及ばずながらな」
ポールが念を押し、マルクが頷く。
「ツリーリジェネレーションって因果界の炎樹の森で施せば、真央界の方はノータッチでいいんでしょ?」
オリーブが眉根を寄せて言うと、アロンが答えた。
「例によって、遅効性を狙った時間差処方に留めるしかないだろうね」
「じゃあ木の保護も考えないと。アースフォローアップがいいかな」
「そうそう、カシナガを全滅させるわけにはいかないから、今回の現場域外にナラの倒木を用意するそうだ。カシナガには少数、域外に移動してもらって、域内での繁殖に時間差を設けると。そのためにもオリーブが言ったように、木の保護もしておきたいところなんだが――」
マルクが言葉を切った。
「だが――?」
ナタルが問い返すと、ポールが言い当てた。
「あれでしょ、アースフォローアップの習得者が少ない」
「実は10人切ってるんだ」
マルクの言葉にのけぞったキーツがぼやいた。
「そりゃヒドいわ」
「ナラ類の数は300万本ですよね。すると割ることの総当たり100人で3万本。さらに残日数220日で割って、1日136本! 8時間労働だとした1人1時間当たり17本ですよ。できますか?」
ルイスが自分の計算に青くなった。
「実際にはもっと厳しいだろうな。……それは100人全員がツリーリジェネレーションとアースフォローアップができる場合の計算だからな。講習は最低でも1か月は見ないといけないし、参加人数も若干減るしな」
マルクのボヤキに、ポールが短く問う。
「何人?」
「86人……今回、男性メンバーの不参加が多くてな。班ごとに見ると、ポールとキーツ、アロンのところが全滅なんだ」
「あの、うすらボケどもが!!」
足元をすくわれて、ポールの怒りが天井を突き抜ける。
「ま、そんなこったろうとは思ってたけどな」
「同じく」
アロンもキーツもメンバーに問い質す気力もないらしい。
「あらら、班体制で仕事するのは無理ねぇ」
オリーブが呑気に言った。
「そのうえ修法の習得にもバラつきがありますし、今回は上手に人材配置をしないといけないですね」
ランスが資料から目を離して溜め息をついた。
「やれやれ」
「うーん、何かうまい方法を考えださないと」
タイラーはメンバーの情けなさに呆れ、ナタルは大した考えもなく言葉を継いだ。
「はい」
トゥーラが手を上げた。
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