12 / 276
第2話『NWSリーダー会議』
しおりを挟む
当番司会、トゥーラが会議の開始を告げる。
「それでは昇陽の一月清祓《せいふつ》の五日、NWSリーダー会議を始めます」
集会所の円卓を囲んで、神妙な表情のリーダーたち。
手元にはトゥーラの手による資料が配られていた。
「まず第一に仕事計画から、マルクお願いします」
「はい」
マルクが立って話す。
「先日話した通り、今年は隣国カエリウスの炎樹の森が活動場所になる。代表が言うには、去年の秋はナラ枯れを起こす、カシノナガキクイムシの被害が目立って多かったそうだ。そこで、パラティヌスとの国境、シシュ山脈とアルペンディー大山脈の麓……つまり、因果界で言うところのガーネットラヴィーン、ルビーウッズ、アンバーフットだが。この三方向から追跡マーカーを設置する。通称カシナガの分布がはっきりしたら、修法ツリーリジェネレーション《木の再生》で、詰まったナラの導管を修復していく。この作業だけで半年以上かかるとみている」
「まずはツリーリジェネレーションの講習からだな」
ナタルが資料を目で追いながら言った。
「習得人数は?」
アロンが問う。
「アンケートによると43人だ」
「少なっ!」
ポールとキーツが思わずハモる。
「その43人を追跡マーカー設置で先行させた方がよくないか?」
アロンが意見を出すと、マルクが異を唱えた。
「それでもいいが、時間がかかるだろう。人数はいた方がいい。分かれると作業に食い違いが出るからな」
「どっちにしろ講師は2、3人いれば十分だろ」
タイラーが資料を拳骨で叩きながら言った。
「トゥーラとランスさん、アロンが適任だな」
マルクが即座に名前を挙げた。
「現地の修法者との段取りはマルクが仕切ってくれよ。どうせレンナちゃんは出られないんだし」
「及ばずながらな」
ポールが念を押し、マルクが頷く。
「ツリーリジェネレーションって因果界の炎樹の森で施せば、真央界の方はノータッチでいいんでしょ?」
オリーブが眉根を寄せて言うと、アロンが答えた。
「例によって、遅効性を狙った時間差処方に留めるしかないだろうね」
「じゃあ木の保護も考えないと。アースフォローアップがいいかな」
「そうそう、カシナガを全滅させるわけにはいかないから、今回の現場域外にナラの倒木を用意するそうだ。カシナガには少数、域外に移動してもらって、域内での繁殖に時間差を設けると。そのためにもオリーブが言ったように、木の保護もしておきたいところなんだが――」
マルクが言葉を切った。
「だが――?」
ナタルが問い返すと、ポールが言い当てた。
「あれでしょ、アースフォローアップの習得者が少ない」
「実は10人切ってるんだ」
マルクの言葉にのけぞったキーツがぼやいた。
「そりゃヒドいわ」
「ナラ類の数は300万本ですよね。すると割ることの総当たり100人で3万本。さらに残日数220日で割って、1日136本! 8時間労働だとした1人1時間当たり17本ですよ。できますか?」
ルイスが自分の計算に青くなった。
「実際にはもっと厳しいだろうな。……それは100人全員がツリーリジェネレーションとアースフォローアップができる場合の計算だからな。講習は最低でも1か月は見ないといけないし、参加人数も若干減るしな」
マルクのボヤキに、ポールが短く問う。
「何人?」
「86人……今回、男性メンバーの不参加が多くてな。班ごとに見ると、ポールとキーツ、アロンのところが全滅なんだ」
「あの、うすらボケどもが!!」
足元をすくわれて、ポールの怒りが天井を突き抜ける。
「ま、そんなこったろうとは思ってたけどな」
「同じく」
アロンもキーツもメンバーに問い質す気力もないらしい。
「あらら、班体制で仕事するのは無理ねぇ」
オリーブが呑気に言った。
「そのうえ修法の習得にもバラつきがありますし、今回は上手に人材配置をしないといけないですね」
ランスが資料から目を離して溜め息をついた。
「やれやれ」
「うーん、何かうまい方法を考えださないと」
タイラーはメンバーの情けなさに呆れ、ナタルは大した考えもなく言葉を継いだ。
「はい」
トゥーラが手を上げた。
「それでは昇陽の一月清祓《せいふつ》の五日、NWSリーダー会議を始めます」
集会所の円卓を囲んで、神妙な表情のリーダーたち。
手元にはトゥーラの手による資料が配られていた。
「まず第一に仕事計画から、マルクお願いします」
「はい」
マルクが立って話す。
「先日話した通り、今年は隣国カエリウスの炎樹の森が活動場所になる。代表が言うには、去年の秋はナラ枯れを起こす、カシノナガキクイムシの被害が目立って多かったそうだ。そこで、パラティヌスとの国境、シシュ山脈とアルペンディー大山脈の麓……つまり、因果界で言うところのガーネットラヴィーン、ルビーウッズ、アンバーフットだが。この三方向から追跡マーカーを設置する。通称カシナガの分布がはっきりしたら、修法ツリーリジェネレーション《木の再生》で、詰まったナラの導管を修復していく。この作業だけで半年以上かかるとみている」
「まずはツリーリジェネレーションの講習からだな」
ナタルが資料を目で追いながら言った。
「習得人数は?」
アロンが問う。
「アンケートによると43人だ」
「少なっ!」
ポールとキーツが思わずハモる。
「その43人を追跡マーカー設置で先行させた方がよくないか?」
アロンが意見を出すと、マルクが異を唱えた。
「それでもいいが、時間がかかるだろう。人数はいた方がいい。分かれると作業に食い違いが出るからな」
「どっちにしろ講師は2、3人いれば十分だろ」
タイラーが資料を拳骨で叩きながら言った。
「トゥーラとランスさん、アロンが適任だな」
マルクが即座に名前を挙げた。
「現地の修法者との段取りはマルクが仕切ってくれよ。どうせレンナちゃんは出られないんだし」
「及ばずながらな」
ポールが念を押し、マルクが頷く。
「ツリーリジェネレーションって因果界の炎樹の森で施せば、真央界の方はノータッチでいいんでしょ?」
オリーブが眉根を寄せて言うと、アロンが答えた。
「例によって、遅効性を狙った時間差処方に留めるしかないだろうね」
「じゃあ木の保護も考えないと。アースフォローアップがいいかな」
「そうそう、カシナガを全滅させるわけにはいかないから、今回の現場域外にナラの倒木を用意するそうだ。カシナガには少数、域外に移動してもらって、域内での繁殖に時間差を設けると。そのためにもオリーブが言ったように、木の保護もしておきたいところなんだが――」
マルクが言葉を切った。
「だが――?」
ナタルが問い返すと、ポールが言い当てた。
「あれでしょ、アースフォローアップの習得者が少ない」
「実は10人切ってるんだ」
マルクの言葉にのけぞったキーツがぼやいた。
「そりゃヒドいわ」
「ナラ類の数は300万本ですよね。すると割ることの総当たり100人で3万本。さらに残日数220日で割って、1日136本! 8時間労働だとした1人1時間当たり17本ですよ。できますか?」
ルイスが自分の計算に青くなった。
「実際にはもっと厳しいだろうな。……それは100人全員がツリーリジェネレーションとアースフォローアップができる場合の計算だからな。講習は最低でも1か月は見ないといけないし、参加人数も若干減るしな」
マルクのボヤキに、ポールが短く問う。
「何人?」
「86人……今回、男性メンバーの不参加が多くてな。班ごとに見ると、ポールとキーツ、アロンのところが全滅なんだ」
「あの、うすらボケどもが!!」
足元をすくわれて、ポールの怒りが天井を突き抜ける。
「ま、そんなこったろうとは思ってたけどな」
「同じく」
アロンもキーツもメンバーに問い質す気力もないらしい。
「あらら、班体制で仕事するのは無理ねぇ」
オリーブが呑気に言った。
「そのうえ修法の習得にもバラつきがありますし、今回は上手に人材配置をしないといけないですね」
ランスが資料から目を離して溜め息をついた。
「やれやれ」
「うーん、何かうまい方法を考えださないと」
タイラーはメンバーの情けなさに呆れ、ナタルは大した考えもなく言葉を継いだ。
「はい」
トゥーラが手を上げた。
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
「わざわざ始まるまでまたないで、今のうちに手を打ったってよくない?」
イチイ アキラ
恋愛
アスター公爵令嬢エステルは、夢をみる。それは先を映す夢。
ある日、夢をみた。
この国の未来を。
それをアルフレッド王太子に相談する。彼女を愛して止まない婚約者に。
彼は言う。
愛する君とぼくの国のためなら、未来を変えるのも仕方なくない?
公爵令嬢は結婚式当日に死んだ
白雲八鈴
恋愛
今日はとある公爵令嬢の結婚式だ。幸せいっぱいの公爵令嬢の前に婚約者のレイモンドが現れる。
「今日の結婚式は俺と番であるナタリーの結婚式に変更だ!そのドレスをナタリーに渡せ!」
突然のことに公爵令嬢は何を言われたのか理解できなかった。いや、したくなかった。
婚約者のレイモンドは番という運命に出逢ってしまったという。
そして、真っ白な花嫁衣装を脱がされ、そのドレスは番だという女性に着させられる。周りの者達はめでたいと大喜びだ。
その場所に居ることが出来ず公爵令嬢は外に飛び出し……
生まれ変わった令嬢は復讐を誓ったのだった。
婚約者とその番という女性に
『一発ぐらい思いっきり殴ってもいいですわね?』
そして、つがいという者に囚われた者の存在が現れる。
*タグ注意
*不快であれば閉じてください。
婚約破棄されたスナギツネ令嬢、実は呪いで醜くなっていただけでした
宮之みやこ
恋愛
細すぎる一重の目に、小さすぎる瞳の三百眼。あまりの目つきの悪さに、リュシエルが婚約者のハージェス王子に付けられたあだ名は『スナギツネ令嬢』だった。
「一族は皆美形なのにどうして私だけ?」
辛く思いながらも自分にできる努力をしようと頑張る中、ある日ついに公の場で婚約解消を言い渡されてしまう。どうやら、ハージェス王子は弟のクロード王子の婚約者であるモルガナ侯爵令嬢と「真実の愛」とやらに目覚めてしまったらしい。
(この人たち、本当に頭がおかしいんじゃないのかしら!?)
魔法使いとして頑張りますわ!
まるねこ
恋愛
母が亡くなってすぐに伯爵家へと来た愛人とその娘。
そこからは家族ごっこの毎日。
私が継ぐはずだった伯爵家。
花畑の住人の義妹が私の婚約者と仲良くなってしまったし、もういいよね?
これからは母方の方で養女となり、魔法使いとなるよう頑張っていきますわ。
2025年に改編しました。
いつも通り、ふんわり設定です。
ブックマークに入れて頂けると私のテンションが成層圏を超えて月まで行ける気がします。m(._.)m
Copyright©︎2020-まるねこ
差し出された毒杯
しろねこ。
恋愛
深い森の中。
一人のお姫様が王妃より毒杯を授けられる。
「あなたのその表情が見たかった」
毒を飲んだことにより、少女の顔は苦悶に満ちた表情となる。
王妃は少女の美しさが妬ましかった。
そこで命を落としたとされる少女を助けるは一人の王子。
スラリとした体型の美しい王子、ではなく、体格の良い少し脳筋気味な王子。
お供をするは、吊り目で小柄な見た目も中身も猫のように気まぐれな従者。
か○みよ、○がみ…ではないけれど、毒と美しさに翻弄される女性と立ち向かうお姫様なお話。
ハピエン大好き、自己満、ご都合主義な作者による作品です。
同名キャラで複数の作品を書いています。
立場やシチュエーションがちょっと違ったり、サブキャラがメインとなるストーリーをなどを書いています。
ところどころリンクもしています。
※小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿しています!
天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎
ギルドで働くおっとり回復役リィナは、
自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。
……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!?
「転ばないで」
「可愛いって言うのは僕の役目」
「固定回復役だから。僕の」
優しいのに過保護。
仲間のはずなのに距離が近い。
しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。
鈍感で頑張り屋なリィナと、
策を捨てるほど恋に負けていくカイの、
コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕!
「遅いままでいい――置いていかないから。」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる