28 / 276
第3話『ポールwithツリー班』
しおりを挟む
「”妖精は木の実が大のお気に入りです。
どんぐりのヘタはベレー帽、くぬぎのヘタはモヘア帽です。
秋はおしゃれが止まりません。
冬に備えて忙しくしていても、やっぱり身だしなみは大切です……”
ここんところで、男のダンディズムが語られてると思うんだよね」
「クスクス」
コノミがポールのおかしさに心を開いた。
「私もその場面好き」
アース班が集まっている机の前で、ハルニレ・ベクトラーは呟いた。
「え、何か言った、ハルニレちゃん?」
アヤに聞かれて、慌てて両手を振る。
「い、いえ、何でもないんです」
それでいて、その仲裁劇の成り行きを透視して見守る。
彼女だけではなかった。
異変に気付いて耳を傾ける観客は他にもいたのである。
「ポールさんって、変な人だと思ってたけど、やっぱり変人だったんですね」
ユチカが面白そうにからかうと、ポールは人差し指をワイパーのように動かした。
「チッチッチッ、変人じゃないの。心が豊かで知的な大人なの。タイラーみたいな朴念仁とは一味も二味も違うんだよ、おわかり?」
「アハハハ」
(おい、コラ)
(名前くらい貸してやりなさいよ。後で一杯奢ってもらうといいわ)
(それはそうだが……)
タイラーを諫めるオリーブ。
(ユチカちゃん、思いっきり笑ってますけど)
(ノッてきたなぁ……)
キーツとナタルが、ポールがいつ馬脚をあらわすか、ひやひやしている。
「賛同いただけたところで、2人とも約束を守って再会できたんじゃない。誤解はお互いしてたかもしれないけど、ケンカしてぶつかっても友情は取り戻せないよ。絆を強めるには一杯のココアを一緒に飲むだけでいいんです。それが遠慮なくできる立場になったんだから、思いっきり楽しみまひょ。わかったかな?」
「はい、ごめんねコノミ」
「私こそごめんなさい」
(セーフ! セーフ!)
(お見事でした、ポールさん)
ポールが満面の笑みの下で、安堵の溜め息をついているのを知っているのは、リーダーたちだけだった。
そこへ賑やかにNWSの女性メンバーが入ってきた。
ポールの5班メンバー、オリーブの3班メンバー、トゥーラの4班メンバー、そしてランスの6班メンバーだった。
ゴージャス女性陣揃いぶみ。
コノミやユチカと同じ、ポールのツリー班のメンバーである。
「おや、皆さん。お揃いでどったの?」
ポールが気軽な調子で尋ねた。
すると5班メンバーのメリッサ・プレイナーが、やはり砕けた調子で言った。
「ここでポールwithツリー班の親睦会が開かれてるみたいなんで、駆けつけました。コノミちゃん、ユチカちゃん、私たちも混ぜてね」
「おー、さすが気が利いてる! でも手ぶら?」
「もちろん、スイーツ持参ですよ」
「わかってるぅ~」
「というわけで、ポールさん。紅茶12人前よろしくです」
「はい――っ?!」
はたして、即席の女子会は始まった。
みんなで円卓を囲んで、コノミとユチカを中心にわいわい話す。
「事情はよくわかんないけど、みんな因果界に来られるんだから、必要以上に退かなくていいんだよ、コノミちゃん」
「そうそう、心に傷を持ってるのは、みんな一緒。同じとは言わないけど、何かしらはあるから。それで、共感できる人に小出ししていくのが、マナーでコツなの」
「臆病なのは誰だって同じなんだよ。大切なのは愛に心を開くこと」
「せっかく縁あって一緒に仕事してるんだもん。誰かとハートを分かち合ってこそ喜びもあるんだからね」
名言がバンバン飛び出して、言葉に花が咲くようだった。
班を、個人を超えて、多くの優しい手が差し伸べられた。コノミは嬉しさで小さな胸が希望に膨らむのを感じた。
ユチカは、これこそ見たかった光景だと感じ入って、ポロポロ涙をこぼした。先輩方はハンカチを貸したり頭を撫でたり、肩に手を置いたりしていた。
メリッサが言うことには
「女の子の困ったことは私たちに相談して。パティほど頼りにならないかもしれないけど、ポールさんよりは確実に役に立つから」
「もしもーし」
手を忙しく動かしながら、ポールが簡易キッチンから突っ込んだ。
(うん、言えてる)
(あんだって⁈)
キーツの絶妙の合いの手に、目くじらを立てるポールだった。
どんぐりのヘタはベレー帽、くぬぎのヘタはモヘア帽です。
秋はおしゃれが止まりません。
冬に備えて忙しくしていても、やっぱり身だしなみは大切です……”
ここんところで、男のダンディズムが語られてると思うんだよね」
「クスクス」
コノミがポールのおかしさに心を開いた。
「私もその場面好き」
アース班が集まっている机の前で、ハルニレ・ベクトラーは呟いた。
「え、何か言った、ハルニレちゃん?」
アヤに聞かれて、慌てて両手を振る。
「い、いえ、何でもないんです」
それでいて、その仲裁劇の成り行きを透視して見守る。
彼女だけではなかった。
異変に気付いて耳を傾ける観客は他にもいたのである。
「ポールさんって、変な人だと思ってたけど、やっぱり変人だったんですね」
ユチカが面白そうにからかうと、ポールは人差し指をワイパーのように動かした。
「チッチッチッ、変人じゃないの。心が豊かで知的な大人なの。タイラーみたいな朴念仁とは一味も二味も違うんだよ、おわかり?」
「アハハハ」
(おい、コラ)
(名前くらい貸してやりなさいよ。後で一杯奢ってもらうといいわ)
(それはそうだが……)
タイラーを諫めるオリーブ。
(ユチカちゃん、思いっきり笑ってますけど)
(ノッてきたなぁ……)
キーツとナタルが、ポールがいつ馬脚をあらわすか、ひやひやしている。
「賛同いただけたところで、2人とも約束を守って再会できたんじゃない。誤解はお互いしてたかもしれないけど、ケンカしてぶつかっても友情は取り戻せないよ。絆を強めるには一杯のココアを一緒に飲むだけでいいんです。それが遠慮なくできる立場になったんだから、思いっきり楽しみまひょ。わかったかな?」
「はい、ごめんねコノミ」
「私こそごめんなさい」
(セーフ! セーフ!)
(お見事でした、ポールさん)
ポールが満面の笑みの下で、安堵の溜め息をついているのを知っているのは、リーダーたちだけだった。
そこへ賑やかにNWSの女性メンバーが入ってきた。
ポールの5班メンバー、オリーブの3班メンバー、トゥーラの4班メンバー、そしてランスの6班メンバーだった。
ゴージャス女性陣揃いぶみ。
コノミやユチカと同じ、ポールのツリー班のメンバーである。
「おや、皆さん。お揃いでどったの?」
ポールが気軽な調子で尋ねた。
すると5班メンバーのメリッサ・プレイナーが、やはり砕けた調子で言った。
「ここでポールwithツリー班の親睦会が開かれてるみたいなんで、駆けつけました。コノミちゃん、ユチカちゃん、私たちも混ぜてね」
「おー、さすが気が利いてる! でも手ぶら?」
「もちろん、スイーツ持参ですよ」
「わかってるぅ~」
「というわけで、ポールさん。紅茶12人前よろしくです」
「はい――っ?!」
はたして、即席の女子会は始まった。
みんなで円卓を囲んで、コノミとユチカを中心にわいわい話す。
「事情はよくわかんないけど、みんな因果界に来られるんだから、必要以上に退かなくていいんだよ、コノミちゃん」
「そうそう、心に傷を持ってるのは、みんな一緒。同じとは言わないけど、何かしらはあるから。それで、共感できる人に小出ししていくのが、マナーでコツなの」
「臆病なのは誰だって同じなんだよ。大切なのは愛に心を開くこと」
「せっかく縁あって一緒に仕事してるんだもん。誰かとハートを分かち合ってこそ喜びもあるんだからね」
名言がバンバン飛び出して、言葉に花が咲くようだった。
班を、個人を超えて、多くの優しい手が差し伸べられた。コノミは嬉しさで小さな胸が希望に膨らむのを感じた。
ユチカは、これこそ見たかった光景だと感じ入って、ポロポロ涙をこぼした。先輩方はハンカチを貸したり頭を撫でたり、肩に手を置いたりしていた。
メリッサが言うことには
「女の子の困ったことは私たちに相談して。パティほど頼りにならないかもしれないけど、ポールさんよりは確実に役に立つから」
「もしもーし」
手を忙しく動かしながら、ポールが簡易キッチンから突っ込んだ。
(うん、言えてる)
(あんだって⁈)
キーツの絶妙の合いの手に、目くじらを立てるポールだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる