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第6話『活路』
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「そんな紙一重な方法が提示されるより、甚大な被害が予測されるから備えておけ、っていうお達しだったら、俺たちは納得したかもね」
ナタルの言葉に何人かが頷いた。
「俺たちはレンナちゃんの身内に近しいからこんなに怒ってるけど、事情を知らない人からしたら、何とか出来る人がいるならよろしく頼みます、とこうなるだろうしね」
アロンの言葉に不承不承頷くポール。
「万世の策士は一連のことについて何か言ってたか?」
タイラーに聞かれて、マルクが答えた。
「因果界に籍を置く我々に必要なことは、目先のことより常に可能性に拓かれた見地に立つことだ、と言っていた」
「可能性……」
タイラーが呟くと、ランスが続いた。
「つまり、レンナさんが名のない力の無力化に成功した、という見地ですね」
「レンナちゃんを信じろって? そうやってあの子を一人で名のない力に立ち向かわせるのかよ」
ポールはまだ怒っていた。
「私たちには何もできない、というのが本当のところじゃないかしら。生命の樹が指名したのはレンナちゃんただ一人。できない試練は与えられない、必ず解決できる
――」
「トゥーラにしては乱暴な見解だね」
キーツが言うと、トゥーラは苦笑して続けた。
「みんなも言っている通り、そもそも方法が乱暴なのよ。とても一人が受け入れられるような方法じゃないわ。でも――自分も世界も無事で済むなら、可能性に賭けようって、そう思うのじゃないかしら」
「レンナちゃんにも勝算があるって?」
ポールが驚くと、トゥーラは頷いた。
「あの子は自分にできないことは、きちんと理解してると思うの。心、というのが文字通り鍵ね。みんな覚えてる? グランドクロス事件のこと」
グランドクロス事件とは、レンナが初仕事で施した修法陣が、世界の五箇所に大きく十字を描いて広がってしまった事件である。
「あ、そうか。あれって天窓の鍵を持ってたから、あんな大事になったのかな?」
オリーブが振り返ると、みんな顔を見合わせた。
「あの子にはヒントがあるのよ。心というものはどんな不合理なものも受容できる働きがある。それが名のない力であっても同じ、ということなのじゃないかしら。天窓の鍵と繋がる、ということは体験済み。あとは――心を導管に、無にするだけ」
「そうか! 心を拡げること、即ち有なら、心を無にすることは空、つまり導管そのものを指すんですね」
ランスもトゥーラと同じ見地に立ったようだ。
「よくわからないけど、それってレンナちゃんからしてみれば応用が効くってこと?」
キーツが聞くと、ランスは何度も頷いた。
「そうです、そうです。レンナさんにしかわからない感覚が今度の件には必要なんです。もしかしたら第三層降霊界の先達にも馴染みのある感覚なのかもしれませんが。レンナさんは一度の失敗でそれを体得したんですよ。有は無いものを生むからイレギュラーですけど、無はあるがままを存在させますからね」
「じゃあ、あんまり心配しなくても大丈夫ってことですかい⁈」
「……そう思います」
「何だ、怒って損した」
ポールは気が抜けて円卓に突っ伏した。
「それならそうと早く言ってくれればいいのに。マルク、知ってたんでしょ?」
オリーブが咎めると、マルクは頭を掻いた。
「いや、万世の策士が言うには、穏やかならざる結論に至るようなら、代表に近づけられない。動揺させてしまうから。ということだったんだ。でも、俺が思った通り、代表を信頼するって結論になったから安心したよ」
「すいませんね、動揺しっぱなしで」
低い声でポールがごちる。
「つまるところ、俺たちは待機ってことですね」
ルイスが言うと、マルクがまとめた。
「そうだ、万世の秘法の上層部が具体的にNWSで何に備えてほしいか依頼があるまで待機だ。大船に乗ったつもりでいようぜ」
「グランドクロス事件で見せてくれた心の拡がりを知っている人間には、まるでこの世界は一つのハートに包まれてるようなもんだね」
「言えてる――!」
ナタルの言葉に、キーツとオリーブがハモって笑い合った。
ナタルの言葉に何人かが頷いた。
「俺たちはレンナちゃんの身内に近しいからこんなに怒ってるけど、事情を知らない人からしたら、何とか出来る人がいるならよろしく頼みます、とこうなるだろうしね」
アロンの言葉に不承不承頷くポール。
「万世の策士は一連のことについて何か言ってたか?」
タイラーに聞かれて、マルクが答えた。
「因果界に籍を置く我々に必要なことは、目先のことより常に可能性に拓かれた見地に立つことだ、と言っていた」
「可能性……」
タイラーが呟くと、ランスが続いた。
「つまり、レンナさんが名のない力の無力化に成功した、という見地ですね」
「レンナちゃんを信じろって? そうやってあの子を一人で名のない力に立ち向かわせるのかよ」
ポールはまだ怒っていた。
「私たちには何もできない、というのが本当のところじゃないかしら。生命の樹が指名したのはレンナちゃんただ一人。できない試練は与えられない、必ず解決できる
――」
「トゥーラにしては乱暴な見解だね」
キーツが言うと、トゥーラは苦笑して続けた。
「みんなも言っている通り、そもそも方法が乱暴なのよ。とても一人が受け入れられるような方法じゃないわ。でも――自分も世界も無事で済むなら、可能性に賭けようって、そう思うのじゃないかしら」
「レンナちゃんにも勝算があるって?」
ポールが驚くと、トゥーラは頷いた。
「あの子は自分にできないことは、きちんと理解してると思うの。心、というのが文字通り鍵ね。みんな覚えてる? グランドクロス事件のこと」
グランドクロス事件とは、レンナが初仕事で施した修法陣が、世界の五箇所に大きく十字を描いて広がってしまった事件である。
「あ、そうか。あれって天窓の鍵を持ってたから、あんな大事になったのかな?」
オリーブが振り返ると、みんな顔を見合わせた。
「あの子にはヒントがあるのよ。心というものはどんな不合理なものも受容できる働きがある。それが名のない力であっても同じ、ということなのじゃないかしら。天窓の鍵と繋がる、ということは体験済み。あとは――心を導管に、無にするだけ」
「そうか! 心を拡げること、即ち有なら、心を無にすることは空、つまり導管そのものを指すんですね」
ランスもトゥーラと同じ見地に立ったようだ。
「よくわからないけど、それってレンナちゃんからしてみれば応用が効くってこと?」
キーツが聞くと、ランスは何度も頷いた。
「そうです、そうです。レンナさんにしかわからない感覚が今度の件には必要なんです。もしかしたら第三層降霊界の先達にも馴染みのある感覚なのかもしれませんが。レンナさんは一度の失敗でそれを体得したんですよ。有は無いものを生むからイレギュラーですけど、無はあるがままを存在させますからね」
「じゃあ、あんまり心配しなくても大丈夫ってことですかい⁈」
「……そう思います」
「何だ、怒って損した」
ポールは気が抜けて円卓に突っ伏した。
「それならそうと早く言ってくれればいいのに。マルク、知ってたんでしょ?」
オリーブが咎めると、マルクは頭を掻いた。
「いや、万世の策士が言うには、穏やかならざる結論に至るようなら、代表に近づけられない。動揺させてしまうから。ということだったんだ。でも、俺が思った通り、代表を信頼するって結論になったから安心したよ」
「すいませんね、動揺しっぱなしで」
低い声でポールがごちる。
「つまるところ、俺たちは待機ってことですね」
ルイスが言うと、マルクがまとめた。
「そうだ、万世の秘法の上層部が具体的にNWSで何に備えてほしいか依頼があるまで待機だ。大船に乗ったつもりでいようぜ」
「グランドクロス事件で見せてくれた心の拡がりを知っている人間には、まるでこの世界は一つのハートに包まれてるようなもんだね」
「言えてる――!」
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