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第6話『続報』
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——2週間後、繁緑の四月園慰の二十一日。
「情報来たぞ。これが名のない力の衝突後の世界だそうだ」
マルクによって、NWSリーダー七人に資料が配られた。
中心から10の円が描かれた図で、それは昔から伝承されてきたこの世界の構成図だった。それが二つ左右に並んでいる。
「えっと? 真央界と因果界が入れ替わって……生命樹界が第三層になって、降霊界は第六層になるのか――」
アロンが二つを見比べながら言った。
「第四層の霊礎界って何これ?」
キーツが聞くと、マルクが答えた。
「ああ、それはな……この世界を訪れた偉人の言葉が刻まれた石碑がある場所なんだと」
「そのニュアンスから察するに――もしかして宇宙人?」
「——たぶん」
「へぇぇーっ」
全員が興味深げに大合唱する。
「第五層の虹球界ってのは?」
ナタルが続けて聞くと、マルクの表情が緩んだ。
「そう、それが今回の目玉。名のない力の衝突後に、俺たちに拓かれる新しい世界らしいぜ」
「おおーっ、すげぇ‼」
さっき以上の驚愕の情報だった。
なにしろ、この七宮廷神界は第一層真央界、第二層因果界、第三層真央界までしかないと信じられていたのだから。
それも限られた人々のみが往来できた世界だったので、一般には第一層真央界だけと言われてきた。
新しい世界に往けるとなれば、人類始まって以来の朗報である。
「どんな世界なんだ?」
タイラーが聞く。
「読んで字の如くだってさ。虹があっちこっちで生まれる、大気の濃い、生態系の豊かな大きな球状の――惑星っていうらしい――世界みたいだな」
「ほう」
「またその中に閉じ込められて暮らすのか?」
アロンが聞く。
「いや、その惑星の外側の陸地に住めるらしいぞ」
「へぇーっ」
「すごいじゃんか! それって俺たちがあるレベルに達したからこそ神々に与えられた、いわば約束の土地ってことだろ?」
ポールの興奮をマルクは肯定した。
「そういうことだな」
「なんか俺、ドキドキしてきた」
「わかります、これは人類の悲願ですから」
ナタルの言葉にルイスも胸を熱くした。
「でもさ、それって真央界の住民、つまり呪界法信奉者も含めて全員?」
アロンが冷静に問う。
「いや……ここからがすごいんだが、やつらは第一層因果界に留め置かれるらしいぜ」
「ええっ、どうやって⁈」
驚くポールに、マルクが答える。
「どうやら生命の樹が最終判定するようだが、万世の秘法と呪界法信奉者の上層部の合意でそう決まったって言うんだな。ついでに世界中のならず者も一緒に面倒見てくれるそうだ」
「決まるの早っ! だってまだ2週間だよ?」
「やつらだって新しい世界に往けると考えるほど、自分たちの行為に無自覚じゃないんだろ。だったら自分たちだけの土地を与えてもらって治めた方がずっといい。それがこれまで万世の秘法と覇権を争ってきた因果界ならなおいい。そういうことだろ」
タイラーの言葉にマルクが続く。
「ご名答。それが奇しくもやつらの悲願だったんだ。ところで、俺たちは呪界法信奉者と切り離されるわけじゃないみたいだぞ」
「というと?」
「俺たち万世の秘法は、相変わらず第一層になる因果界を往き来して、連中の更生の手伝いだと」
「出た! 万世の秘法的大義名分‼」
ポールに続き、心底嫌そうにキーツが言った。
「うへぇっ、んな面倒なこと引き受けんの⁈」
対してタイラーがごく冷静に言った。
「まぁ、そりゃそうだろうな――他に誰がいるよ?」
「うーん、まぁそいつはいい。しゃーないとして、俺たちもいきなり虹球界に移動するのか?」
「あ、いや、初めは真央界に留まるそうだ。で、往ける人から往くと」
ポールの言葉に、マルクが意味深長な発言。
「待てよ、その往ける人からっての。その移住を完成させるのも俺たちの仕事とか言わないよな」
「一部な」
「げっ」
「そこはその辺りの事情に詳しい現第三層降霊界の人たちが担当する。俺たちはそのサポートだ、安心したか」
「まぁ、多少は」
ポールとの応酬の後、タイラーがマルクに問う。
「俺たちはその虹球界とやらにフリーパスで往けるのか?」
「そっ、万世の秘法の位階者なのがパスポート代わり」
「何となく事情は飲み込めてきたな」
アロンが吐息をつくと、マルクが笑った。
「そりゃよかった。他に質問は?」
「後始末がなぁ、大変だよ」
キーツが溜め息をつくと、ポールが冗談めかして言った。
「いっそ、一大事だって騒ぎ立てた方が、みんな覚悟も決まるんじゃないの?」
それを聞いたナタルが、ぞっとして即座に否定した。
「いーや、みんなが知らないうちに、今日から新しい世界に生まれ変わりましたって、万世の占術師様に言ってもらった方が、絶対被害は小さくて済むと思う」
「同感。世の中普通の人の方が圧倒的に多いんだから、その人たちに落ち着いて行動してもらった方が得策だ」
アロンも同意した。
「そういうわけだ。これからもっと詳細な情報が届くと思うが、俺たちNWSとしては臨機応変に何でもウエルカムに徹してやろう。万世の魔女——代表のためにも」
マルクの言葉に全員が気合いを入れた。
「よっしゃ‼」
「情報来たぞ。これが名のない力の衝突後の世界だそうだ」
マルクによって、NWSリーダー七人に資料が配られた。
中心から10の円が描かれた図で、それは昔から伝承されてきたこの世界の構成図だった。それが二つ左右に並んでいる。
「えっと? 真央界と因果界が入れ替わって……生命樹界が第三層になって、降霊界は第六層になるのか――」
アロンが二つを見比べながら言った。
「第四層の霊礎界って何これ?」
キーツが聞くと、マルクが答えた。
「ああ、それはな……この世界を訪れた偉人の言葉が刻まれた石碑がある場所なんだと」
「そのニュアンスから察するに――もしかして宇宙人?」
「——たぶん」
「へぇぇーっ」
全員が興味深げに大合唱する。
「第五層の虹球界ってのは?」
ナタルが続けて聞くと、マルクの表情が緩んだ。
「そう、それが今回の目玉。名のない力の衝突後に、俺たちに拓かれる新しい世界らしいぜ」
「おおーっ、すげぇ‼」
さっき以上の驚愕の情報だった。
なにしろ、この七宮廷神界は第一層真央界、第二層因果界、第三層真央界までしかないと信じられていたのだから。
それも限られた人々のみが往来できた世界だったので、一般には第一層真央界だけと言われてきた。
新しい世界に往けるとなれば、人類始まって以来の朗報である。
「どんな世界なんだ?」
タイラーが聞く。
「読んで字の如くだってさ。虹があっちこっちで生まれる、大気の濃い、生態系の豊かな大きな球状の――惑星っていうらしい――世界みたいだな」
「ほう」
「またその中に閉じ込められて暮らすのか?」
アロンが聞く。
「いや、その惑星の外側の陸地に住めるらしいぞ」
「へぇーっ」
「すごいじゃんか! それって俺たちがあるレベルに達したからこそ神々に与えられた、いわば約束の土地ってことだろ?」
ポールの興奮をマルクは肯定した。
「そういうことだな」
「なんか俺、ドキドキしてきた」
「わかります、これは人類の悲願ですから」
ナタルの言葉にルイスも胸を熱くした。
「でもさ、それって真央界の住民、つまり呪界法信奉者も含めて全員?」
アロンが冷静に問う。
「いや……ここからがすごいんだが、やつらは第一層因果界に留め置かれるらしいぜ」
「ええっ、どうやって⁈」
驚くポールに、マルクが答える。
「どうやら生命の樹が最終判定するようだが、万世の秘法と呪界法信奉者の上層部の合意でそう決まったって言うんだな。ついでに世界中のならず者も一緒に面倒見てくれるそうだ」
「決まるの早っ! だってまだ2週間だよ?」
「やつらだって新しい世界に往けると考えるほど、自分たちの行為に無自覚じゃないんだろ。だったら自分たちだけの土地を与えてもらって治めた方がずっといい。それがこれまで万世の秘法と覇権を争ってきた因果界ならなおいい。そういうことだろ」
タイラーの言葉にマルクが続く。
「ご名答。それが奇しくもやつらの悲願だったんだ。ところで、俺たちは呪界法信奉者と切り離されるわけじゃないみたいだぞ」
「というと?」
「俺たち万世の秘法は、相変わらず第一層になる因果界を往き来して、連中の更生の手伝いだと」
「出た! 万世の秘法的大義名分‼」
ポールに続き、心底嫌そうにキーツが言った。
「うへぇっ、んな面倒なこと引き受けんの⁈」
対してタイラーがごく冷静に言った。
「まぁ、そりゃそうだろうな――他に誰がいるよ?」
「うーん、まぁそいつはいい。しゃーないとして、俺たちもいきなり虹球界に移動するのか?」
「あ、いや、初めは真央界に留まるそうだ。で、往ける人から往くと」
ポールの言葉に、マルクが意味深長な発言。
「待てよ、その往ける人からっての。その移住を完成させるのも俺たちの仕事とか言わないよな」
「一部な」
「げっ」
「そこはその辺りの事情に詳しい現第三層降霊界の人たちが担当する。俺たちはそのサポートだ、安心したか」
「まぁ、多少は」
ポールとの応酬の後、タイラーがマルクに問う。
「俺たちはその虹球界とやらにフリーパスで往けるのか?」
「そっ、万世の秘法の位階者なのがパスポート代わり」
「何となく事情は飲み込めてきたな」
アロンが吐息をつくと、マルクが笑った。
「そりゃよかった。他に質問は?」
「後始末がなぁ、大変だよ」
キーツが溜め息をつくと、ポールが冗談めかして言った。
「いっそ、一大事だって騒ぎ立てた方が、みんな覚悟も決まるんじゃないの?」
それを聞いたナタルが、ぞっとして即座に否定した。
「いーや、みんなが知らないうちに、今日から新しい世界に生まれ変わりましたって、万世の占術師様に言ってもらった方が、絶対被害は小さくて済むと思う」
「同感。世の中普通の人の方が圧倒的に多いんだから、その人たちに落ち着いて行動してもらった方が得策だ」
アロンも同意した。
「そういうわけだ。これからもっと詳細な情報が届くと思うが、俺たちNWSとしては臨機応変に何でもウエルカムに徹してやろう。万世の魔女——代表のためにも」
マルクの言葉に全員が気合いを入れた。
「よっしゃ‼」
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