80 / 276
第8話『人魚のエメラ』
しおりを挟む
「なんてこった! 絵本の中の人魚が話すなんて聞いたことないよ」
キーツが呆れ返ると、オリーブがランスに尋ねた。
「ランスさん、何が起こってるんですか?」
「私にもよくはわからないんですが……この童話の力からいって、今はこのマーメイドリーフも魔法の場なのかな、と。童話とマーメイドリーフが魔法で繋がっていて、奇跡を成さしめているのかもしれないと思ったんです」
「この上何か起こるなんて言わないですよね」
ナタルが本から目を背けて言うと、ランスが注意した。
「あ、ナタルさん。間違っても本から手を離さないでくださいね。この魔法はナタルさんの言葉がきっかけで始まってます。定石通りだと、あなたが本を閉じるようなことがあると、魔法も消えると思うんです」
「えーっ!」
ナタルの声は悲鳴に近かった。
「根性見せなさい! ナタル」
「言霊には責任を持ちましょう?」
「乗りかかった舟でしょうが」
オリーブ、ルイス、キーツに次々と言われて、ナタルは本を広げたまま突っ立っているしかなかった。
「何が起こるんだよぉ」
情けない声でナタルが言うと、オリーブが言った。
「察しつかない? マーメイドリーフで人魚が呼ぶものと言ったら――」
「まさか!」
そのまさかだった。
バシャ―ン!
因果界の海で跳びはねたのは――⁈
「人魚だ――!!」
その人魚はトゥーラによく似ていた。
長い黒髪は水面のように煌めき、美しい顔は陽光に照らされて恐ろしく透き通り、肢体は艶めかしく、胸当ては大きな貝殻だった。そして下半身は見事な青緑色の鱗が並ぶ、尾ひれのついた魚である。
岩礁に腰かけて、髪を右肩に流すと、世にもきれいな声で云った。
「もう本を閉じてもいいわよ」
「あ、はい」
ナタルが慌てて本をバフッと閉じた。
「皆さん、ようこそマーメイドリーフへ。私はエメラ。因果界に棲む人魚の一人です」
「初めまして、私はランスと申します。こちらがナタルさん、オリーブさん、キーツさん、ルイスさんです」
「よく存じております。その本が私たちの目になって、いろいろ教えてくれるので。皆さんが万世の秘法の位階者で、童話の里で作物をたくさん作っている姿を拝見しております」
「そうでしたか……私たちは急にマーメイドリーフに連れてこられてびっくりしてるんですが、何かご用件がおありになるんでしょうか」
「ええ、私たちの方でお願いがありまして、こんな形ですがお越しいただきました。どうかお付き合いください」
人魚、エメラの話とは――?
キーツが呆れ返ると、オリーブがランスに尋ねた。
「ランスさん、何が起こってるんですか?」
「私にもよくはわからないんですが……この童話の力からいって、今はこのマーメイドリーフも魔法の場なのかな、と。童話とマーメイドリーフが魔法で繋がっていて、奇跡を成さしめているのかもしれないと思ったんです」
「この上何か起こるなんて言わないですよね」
ナタルが本から目を背けて言うと、ランスが注意した。
「あ、ナタルさん。間違っても本から手を離さないでくださいね。この魔法はナタルさんの言葉がきっかけで始まってます。定石通りだと、あなたが本を閉じるようなことがあると、魔法も消えると思うんです」
「えーっ!」
ナタルの声は悲鳴に近かった。
「根性見せなさい! ナタル」
「言霊には責任を持ちましょう?」
「乗りかかった舟でしょうが」
オリーブ、ルイス、キーツに次々と言われて、ナタルは本を広げたまま突っ立っているしかなかった。
「何が起こるんだよぉ」
情けない声でナタルが言うと、オリーブが言った。
「察しつかない? マーメイドリーフで人魚が呼ぶものと言ったら――」
「まさか!」
そのまさかだった。
バシャ―ン!
因果界の海で跳びはねたのは――⁈
「人魚だ――!!」
その人魚はトゥーラによく似ていた。
長い黒髪は水面のように煌めき、美しい顔は陽光に照らされて恐ろしく透き通り、肢体は艶めかしく、胸当ては大きな貝殻だった。そして下半身は見事な青緑色の鱗が並ぶ、尾ひれのついた魚である。
岩礁に腰かけて、髪を右肩に流すと、世にもきれいな声で云った。
「もう本を閉じてもいいわよ」
「あ、はい」
ナタルが慌てて本をバフッと閉じた。
「皆さん、ようこそマーメイドリーフへ。私はエメラ。因果界に棲む人魚の一人です」
「初めまして、私はランスと申します。こちらがナタルさん、オリーブさん、キーツさん、ルイスさんです」
「よく存じております。その本が私たちの目になって、いろいろ教えてくれるので。皆さんが万世の秘法の位階者で、童話の里で作物をたくさん作っている姿を拝見しております」
「そうでしたか……私たちは急にマーメイドリーフに連れてこられてびっくりしてるんですが、何かご用件がおありになるんでしょうか」
「ええ、私たちの方でお願いがありまして、こんな形ですがお越しいただきました。どうかお付き合いください」
人魚、エメラの話とは――?
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
ショートざまぁ短編集
福嶋莉佳
恋愛
愛されない正妻。
名ばかりの婚約者。
そして、当然のように告げられる婚約破棄。
けれど――
彼女たちは、何も失っていなかった。
白い結婚、冷遇、誤解、切り捨て。
不当な扱いの先で、“正しく評価される側”に回った令嬢たちの逆転譚を集めた短編集。
完 独身貴族を謳歌したい男爵令嬢は、女嫌い公爵さまと結婚する。
水鳥楓椛
恋愛
男爵令嬢オードリー・アイリーンはある日父が負った借金により、大好きな宝石だけでは食べていけなくなってしまった。そんな時、オードリーの前に現れたのは女嫌いと有名な公爵エドワード・アーデルハイトだった。愛する家族を借金苦から逃すため、オードリーは悪魔に嫁ぐ。結婚の先に待ち受けるのは不幸か幸せか。少なくとも、オードリーは自己中心的なエドワードが大嫌いだった………。
イラストは友人のしーなさんに描いていただきました!!
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
「わざわざ始まるまでまたないで、今のうちに手を打ったってよくない?」
イチイ アキラ
恋愛
アスター公爵令嬢エステルは、夢をみる。それは先を映す夢。
ある日、夢をみた。
この国の未来を。
それをアルフレッド王太子に相談する。彼女を愛して止まない婚約者に。
彼は言う。
愛する君とぼくの国のためなら、未来を変えるのも仕方なくない?
姉の婚約者と結婚しました。
黒蜜きな粉
恋愛
花嫁が結婚式の当日に逃亡した。
式場には両家の関係者だけではなく、すでに来賓がやってきている。
今さら式を中止にするとは言えない。
そうだ、花嫁の姉の代わりに妹を結婚させてしまえばいいじゃないか!
姉の代わりに辺境伯家に嫁がされることになったソフィア。
これも貴族として生まれてきた者の務めと割り切って嫁いだが、辺境伯はソフィアに興味を示さない。
それどころか指一本触れてこない。
「嫁いだ以上はなんとしても後継ぎを生まなければ!」
ソフィアは辺境伯に振りむいて貰おうと奮闘する。
2022/4/8
番外編完結
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる