上 下
92 / 276

第9話『ナタルの案』

しおりを挟む
 ひっそりしているナタルの隣に来て、オリーブがこっそり話しかけた。
「……ナタルならどうしたい?」
「俺だったら――」
 ナタルは静かに語る。
「俺だったら、一面の花畑をイメージするな。そこに一人の童子が現れるんだ……」
「童子——?」
「うん、その童子はね、名のない力の化身なんだ。海辺の砂粒を何億回も数えるほどの遠く彼方からやってきて、レンナちゃんに旅の話をするんだ。そして、六芒宇宙には過去に二度ほど訪れたことがあるけれど、良い世界だから仲間に入れてほしいって頼むんだよ。もちろん、レンナちゃんだから快く引き受けてくれる。そしたら童子は「ありがとう」って云って、天窓の鍵の中にポワンと入っちゃうんだ」
「フンフン、なるほど」
 いつの間にか、全員が聞き耳を立ててナタルの話を聞いていた。
 ポールが円卓の反対側で身を乗り出して言った。
「採用!」
「ナタル、そんないい話、小声で話すなよ。テレパスで補聴しちゃったじゃないか」
 アロンが呆れつつ笑って言った。
「一番レンナさんに寄り添ったイメージじゃないでしょうか」
 ニコニコしてランスが褒める。
「——やればできるんじゃねぇか!」
 タイラーはそう言ったが、オリーブに優しく諫められた。
「ね? ナタルには猛々しくなっちゃダメなんだってば」
「なんだか絵本にしたくなっちゃうわね」
「それだ――!」
「どれ?」
 キーツが反射的にボケると、ポールはがっくりしたがめげずに言った。
「いや、だからさ。俺たちがレンナちゃんに何ができるかって、いっつもぼんやり話してたじゃない。今の話、全部筋立てて絵本にするってのはどうだい⁈」
















しおりを挟む
1 / 4

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

誰もが経験したことがある懐かしい事

エッセイ・ノンフィクション / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

悪役令嬢がとある王国の女王になるまで

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:15

ドームレンズ社のドームシティ計画

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

捨てる日が来た

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:3

あなたに許されるその日まで

青春 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

処理中です...