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第13話『タイラーの過去』
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「——ごめんね、タイラー。エリックのことで怒ったりして」
「……ということは、まだ希望があるんだな。いいよ、怒ってない」
「まだ苦しいの、エリックのこと考えると」
「それはそうだろう」
オリーブは胸につかえた想いを打ち明けた。
「私……ズルいよね。エリックが振り返ってくれないこと、わかってるのにいつまでも面影追ったりして。タイラーと付き合う資格ないよ」
「……そういうオリーブを好きになったんだ。エリックのことを聞いてから、俺も覚悟してる」
「……」
「しんどい思いさせて、ごめんな」
その言葉はオリーブの心に響いた。ちょっと嬉しくなる。
「——タイラーは私の他に、好きになった人いないの?」
「……いるよ」
「どんな人?」
「それを聞くか……」
「聞きたいっ!」
タイラーはスッと視線を遠くに移して、静かに語った。
「俺は元カエリウスの住民で、家は武器製造で潤っていた。成人してすぐに徴兵で軍に入って――その時に万世の秘法を知って、万武の赤にのめり込んだ。そのままいけば、カエリウスの最前線に駆り出されていただろう。ローレルは俺が徴兵前に借りていた下宿の娘で、俺のことが好きだと公言して何やかやと世話を焼くのが楽しくて仕方ない、といった風情だった。魚心あれば――ってことで、俺もまんざらではなくて、若さも手伝ってずいぶんのめり込んだけどな」
「へぇ……でも、あれ? タイラーって告白したことないって言ってなかった」
「告白されたのはカウントに入らないだろ」
「あ、そうか」
無邪気なオリーブに優しげに笑って、タイラーは話を続ける。
「ローレルは俺と結婚したがっていた。俺は当時それほどでもなくてな、かなり深刻なケンカをしたよ。結局ケンカ別れしたけどな。人伝に長患いで亡くなったことを知らされてショックを受けた。俺は彼女の病気のことを知らなかったんだ……結婚することが夢だったんだろう。ローレルの両親や親戚は俺を責めなかった。命が長くない娘を花嫁にしたって、俺が気の毒だからって弔問の時言われた」
「タイラーの前途を思っての言葉だったのね……」
「ところが俺の両親は違った。「家柄もわきまえず、平凡な娘にうつつを抜かしたおまえが悪い。自業自得だ」って言われてな……。俺は本気で自分の人生を考え直した。その時にはローレルからもらった思いやりや優しさが身に沁みていたんだ」
「……ずいぶん厳しいお家なのね……。タイラーもローレルさんも可哀想」
「ローレルが俺の家族の実態を知らなくてよかったと思うよ。とにかく、俺は家柄に相応しい人間になるより、人間らしい生き方を求めてパラティヌスにやってきた。身につけた万武の赤は必要ないことがわかって慌てたがな」
苦笑するタイラーに、オリーブが眉間を寄せて言うには
「タイラーってむやみに好戦的じゃないんだね」
「はっはっは、まぁな。それもローレルのおかげだ」
「……」
オリーブはゆっくり頷いた。
「そこからは知っての通りだ。セイル長老の口利きで修法者のアインスさんを紹介してもらって、環境修復の技術を時間をかけて教えてもらった。オリーブが言う好戦的に万武の赤の修練を積んでいた時よりはるかに充実した時間だった。なんにしても女性が俺の人生を変えるとは思ってなかった。それは今でも不思議な気がしてる」
「……ということは、まだ希望があるんだな。いいよ、怒ってない」
「まだ苦しいの、エリックのこと考えると」
「それはそうだろう」
オリーブは胸につかえた想いを打ち明けた。
「私……ズルいよね。エリックが振り返ってくれないこと、わかってるのにいつまでも面影追ったりして。タイラーと付き合う資格ないよ」
「……そういうオリーブを好きになったんだ。エリックのことを聞いてから、俺も覚悟してる」
「……」
「しんどい思いさせて、ごめんな」
その言葉はオリーブの心に響いた。ちょっと嬉しくなる。
「——タイラーは私の他に、好きになった人いないの?」
「……いるよ」
「どんな人?」
「それを聞くか……」
「聞きたいっ!」
タイラーはスッと視線を遠くに移して、静かに語った。
「俺は元カエリウスの住民で、家は武器製造で潤っていた。成人してすぐに徴兵で軍に入って――その時に万世の秘法を知って、万武の赤にのめり込んだ。そのままいけば、カエリウスの最前線に駆り出されていただろう。ローレルは俺が徴兵前に借りていた下宿の娘で、俺のことが好きだと公言して何やかやと世話を焼くのが楽しくて仕方ない、といった風情だった。魚心あれば――ってことで、俺もまんざらではなくて、若さも手伝ってずいぶんのめり込んだけどな」
「へぇ……でも、あれ? タイラーって告白したことないって言ってなかった」
「告白されたのはカウントに入らないだろ」
「あ、そうか」
無邪気なオリーブに優しげに笑って、タイラーは話を続ける。
「ローレルは俺と結婚したがっていた。俺は当時それほどでもなくてな、かなり深刻なケンカをしたよ。結局ケンカ別れしたけどな。人伝に長患いで亡くなったことを知らされてショックを受けた。俺は彼女の病気のことを知らなかったんだ……結婚することが夢だったんだろう。ローレルの両親や親戚は俺を責めなかった。命が長くない娘を花嫁にしたって、俺が気の毒だからって弔問の時言われた」
「タイラーの前途を思っての言葉だったのね……」
「ところが俺の両親は違った。「家柄もわきまえず、平凡な娘にうつつを抜かしたおまえが悪い。自業自得だ」って言われてな……。俺は本気で自分の人生を考え直した。その時にはローレルからもらった思いやりや優しさが身に沁みていたんだ」
「……ずいぶん厳しいお家なのね……。タイラーもローレルさんも可哀想」
「ローレルが俺の家族の実態を知らなくてよかったと思うよ。とにかく、俺は家柄に相応しい人間になるより、人間らしい生き方を求めてパラティヌスにやってきた。身につけた万武の赤は必要ないことがわかって慌てたがな」
苦笑するタイラーに、オリーブが眉間を寄せて言うには
「タイラーってむやみに好戦的じゃないんだね」
「はっはっは、まぁな。それもローレルのおかげだ」
「……」
オリーブはゆっくり頷いた。
「そこからは知っての通りだ。セイル長老の口利きで修法者のアインスさんを紹介してもらって、環境修復の技術を時間をかけて教えてもらった。オリーブが言う好戦的に万武の赤の修練を積んでいた時よりはるかに充実した時間だった。なんにしても女性が俺の人生を変えるとは思ってなかった。それは今でも不思議な気がしてる」
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