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第16話『ブラッシュアップ』
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盛り上がった店内は、やがて静けさを取り戻した。
ドミンゴ店長が契約書を用意する間、ポールたちは揃って談話している。
「これでキーツもミュージシャンを名乗れるね」
ポールがにやりと笑う。キーツが照れ隠しに言った。
「まぁ、この一曲だけじゃ、定期演奏会は開けないけどね」
「そこはそれ、腕の見せ所だよね。頑張んなよー、もがいてもがいてもんどりうって新曲書きな」
「ストックしてた曲じゃダメかな?」
「うーん、それは時機を見てだな。だって、あの曲……なんていう曲名?」
「宇宙思い」
「なるほど。今朝のインスピレーションで掴んだ成功だろ? それまでの音楽活動ではなかったことだって言ってたじゃんか」
「うん」
「だったらクオリティは『宇宙思い』まで持ってこなくちゃダメだよ。無難にまとめたら聴衆がそっぽ向くぞ」
「——大変だ」
ざぁっとキーツが青ざめる。頭の中で時間を捻出できるか考える。
「まずい、仕事が――」
生産修法の仕事にまで影響しそうだった。
その様子を見て、トゥーラが助け舟を出す。
「そこはNWSリーダー間で応相談じゃないかしら? せっかく掴んだチャンスだもの。みんな喜んで協力するし、手間を惜しんだりしないわ」
「うーん、そうか。でも、時間があっても仕上がるかって言ったら微妙なんだよね」
「そこは作家と似たような波があるんだね。でも、キーツ的に降ってくる状況を作るしかないんじゃない? キーツの曲のいいところは、技術でまとめてないところなんだから、それを活かさないと」
「わかった。とりあえず休日は缶詰やる」
「頑張れー、負けんなー!」
ポールがキーツに両手を向けて、花道をイメージして手をひらひらさせた。
そこへ、さっきの男性ウエイターがやってきた。
「失礼します。キーツさん、契約書の準備ができましたので、店長室においでください。ご案内します」
「わかりました。それじゃ二人とも。もう帰る?」
「待ってるわ。契約のお祝いしなくちゃね」
「奢っちゃるから、腹一杯食え!」
「サンキュー! 恩に着るよ」
後ろ姿を見送ったトゥーラが吐息をついた。
「……これで『プティ・シェ・ヌウ』でキーツに楽曲を提供してもらう時には、作曲料と使用料が必要ね」
「……なにそれ?」
ポールは初めて聞く言葉に問い返した。
ドミンゴ店長が契約書を用意する間、ポールたちは揃って談話している。
「これでキーツもミュージシャンを名乗れるね」
ポールがにやりと笑う。キーツが照れ隠しに言った。
「まぁ、この一曲だけじゃ、定期演奏会は開けないけどね」
「そこはそれ、腕の見せ所だよね。頑張んなよー、もがいてもがいてもんどりうって新曲書きな」
「ストックしてた曲じゃダメかな?」
「うーん、それは時機を見てだな。だって、あの曲……なんていう曲名?」
「宇宙思い」
「なるほど。今朝のインスピレーションで掴んだ成功だろ? それまでの音楽活動ではなかったことだって言ってたじゃんか」
「うん」
「だったらクオリティは『宇宙思い』まで持ってこなくちゃダメだよ。無難にまとめたら聴衆がそっぽ向くぞ」
「——大変だ」
ざぁっとキーツが青ざめる。頭の中で時間を捻出できるか考える。
「まずい、仕事が――」
生産修法の仕事にまで影響しそうだった。
その様子を見て、トゥーラが助け舟を出す。
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「うーん、そうか。でも、時間があっても仕上がるかって言ったら微妙なんだよね」
「そこは作家と似たような波があるんだね。でも、キーツ的に降ってくる状況を作るしかないんじゃない? キーツの曲のいいところは、技術でまとめてないところなんだから、それを活かさないと」
「わかった。とりあえず休日は缶詰やる」
「頑張れー、負けんなー!」
ポールがキーツに両手を向けて、花道をイメージして手をひらひらさせた。
そこへ、さっきの男性ウエイターがやってきた。
「失礼します。キーツさん、契約書の準備ができましたので、店長室においでください。ご案内します」
「わかりました。それじゃ二人とも。もう帰る?」
「待ってるわ。契約のお祝いしなくちゃね」
「奢っちゃるから、腹一杯食え!」
「サンキュー! 恩に着るよ」
後ろ姿を見送ったトゥーラが吐息をついた。
「……これで『プティ・シェ・ヌウ』でキーツに楽曲を提供してもらう時には、作曲料と使用料が必要ね」
「……なにそれ?」
ポールは初めて聞く言葉に問い返した。
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