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第17話『得心がいかないこと』

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「サバラスさん……」
 ランスたちが懸念すると、サバラス老人は手を横に振った。
「これも仕方ないんじゃ。修法者のコールドスリープエアリーは、種に限定してかけることが可能だが。今回はカシナガのみにコールドスリープエアリーをかけた。カシナガだけが冬の空気の中に閉じ込められたまま、繁殖ができない。——NWSが作業を続けていれば、それだけは避けられたんだが」
「それじゃなにかい? カシナガの被害を免れるためだけに、コールドスリープエアリーで全滅まで決定したってか。そんなことして生態系がおかしくなっちまったらどうすんだよ」
「この場合はな、実は選択肢が二つしかない。新緑の季節を迎える前だったから、カシナガが羽化する前に間に合った。森の生産力はそのままに、カシナガのみを繁殖不能にして、森の不調和の原因を取り除くという方法だな。いったん全滅させても、森の環境的・資源的価値は損なわれない、という判断は我々にはできない。そこで、精霊界や偉大なる神霊にお伺いを立てる。例えば、神託が「リセット」を求めていれば、森の調整役であるカシナガの淘汰を意味する。「存続」なら、カシナガを含めた森林の存続を考えにゃならん。今回の神託は「リセット」。一見、人間の利益に立っているようだが、同時に森林の将来像を見つめてる、ということだな」
「うーん」
 ノリヒトは考え込んでしまった。
 お天道様の恵みで生かされていると考える彼には、どうも合点がゆかない問題だった。
「ですが……そうすると、NWSが森に戻ってきても、仕事がないんじゃないでしょうか?」
 ランスが述べると、サバラス老人は言った。
「そんなことはないぞ。カシナガの穿孔跡をそのままにしておいたら、罹患木のままだから、最低でもツリーリジェネレーションは施しておく必要があるじゃないか。それに、あんたらが木の保護にかけとったアースフォローアップという修法。あれがかかっている区域だけ、地力が上がって木の回復力が目覚ましいと報告があったな」
「では、アースフォローアップが森全体に及べば……」
「木もひとまず病気が進行しないということだな」
 ランスたちはさっと目配せした。
 これは早急に人数を割くべきだろう。
 一本ずつ総当たりのツリーリジェネレーションは無理でも、区域でかけるアースフォローアップなら対応可能だ。達人級のオリーブに出向いてもらって、護衛にタイラーで決まりだ。頷く三人。
 頭を掻くノリヒトにサバラス老人が問う。
「儂らのやることに得心がいかんかね?」
「……俺は農家だからよ。修法とやらはきめ細かく自然に干渉できる技術で、大したもんだと思うんだが。裏に潜んでる事情を聴くたんびにひやひやすんのよ。大体は神さんのお恵みで出来上がってる。これは間違いねぇはずだが。思し召しの部分まで食っちまってるんじゃねぇかってな。うっ、ぞくっとくらぁ」
「なぁに、間違っていたら、儂らが淘汰されるだけじゃよ」
「誰に?」
「そりゃあもちろん、天にまします我らが父に、だよ」
「……なるほどな。その御方に出張られたら、おしまいだわ」














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