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第18話『太陽と月』
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サバラス老人はコーヒーを啜って言った。
「おお、なかなか上手だの」
「えーっ、インスタントですよ?」
オリーブが照れ笑いする。
「誰でも同じ、とは限らんよ。人のために淹れたコーヒーはな。匙加減から違うもんだ」
「そ、そうですか」
「うん、うまいよ」
タイラーが一言添える。
「ありがと」
オリーブがそっとお礼を言う。
「……やっぱりお似合いだの。初めて二人を見た時もそう思ったが」
二人が顔を見合わせる。
「何だか神話にも出てくるような二人だと思ってな」
「それってまさか、白い貫頭衣の兄妹みたいな姿とか」
「——よくわかったの。題材は太陽と月だ」
「やっぱり! 男と女が逆転してるっ」
がっくり肩を落とすオリーブ。
「つんつるてんの貫頭衣着た妹なんだ……趣味は狩りとか」
「あれ? それは月の女神の方じゃなかったけか」
タイラーがうろ覚えで言うと、オリーブが喚く。
「タイラーが月か太陽かっていったら月じゃない⁈ あーもう! なんでそうなるんだろう」
「そんな悲観したもんでもないぞ。太陽が女神で月が男神という神話は割とある。性別がない、という月神もいる」
最後の下りでオリーブの落ち込みが一層深くなる。
(枕詞が出たな……)
タイラーは口には出さなかったがそう思った。オリーブが途端に嚙みつく。
「今、枕詞が出た、って思ったでしょ⁈」
「!」
ぎょっとした時にはもう遅かった。マグカップを持ったまま、オリーブがタイラーを追いかけ回す。
「あのねーっ!!」
タイラーはちょっと逃げてわざと捕まった。オリーブに腕をバシバシ叩かれる。
「ヒドイじゃないのっ! よくも言ったなぁ!」
「ごめん、ごめん、悪気はないんだ」
「あってたまるか!」
「ハッハッハ、何とも賑やかだの! 楽しくなりそうだ」
身体を折り曲げて笑うサバラス老人。それを見てオリーブが呆気に取られる。背の高いタイラーがオリーブの頭にマグカップを乗せて笑った。オリーブは肩を竦めてから、場を清めるような明るい声で笑うのだった。
「おお、なかなか上手だの」
「えーっ、インスタントですよ?」
オリーブが照れ笑いする。
「誰でも同じ、とは限らんよ。人のために淹れたコーヒーはな。匙加減から違うもんだ」
「そ、そうですか」
「うん、うまいよ」
タイラーが一言添える。
「ありがと」
オリーブがそっとお礼を言う。
「……やっぱりお似合いだの。初めて二人を見た時もそう思ったが」
二人が顔を見合わせる。
「何だか神話にも出てくるような二人だと思ってな」
「それってまさか、白い貫頭衣の兄妹みたいな姿とか」
「——よくわかったの。題材は太陽と月だ」
「やっぱり! 男と女が逆転してるっ」
がっくり肩を落とすオリーブ。
「つんつるてんの貫頭衣着た妹なんだ……趣味は狩りとか」
「あれ? それは月の女神の方じゃなかったけか」
タイラーがうろ覚えで言うと、オリーブが喚く。
「タイラーが月か太陽かっていったら月じゃない⁈ あーもう! なんでそうなるんだろう」
「そんな悲観したもんでもないぞ。太陽が女神で月が男神という神話は割とある。性別がない、という月神もいる」
最後の下りでオリーブの落ち込みが一層深くなる。
(枕詞が出たな……)
タイラーは口には出さなかったがそう思った。オリーブが途端に嚙みつく。
「今、枕詞が出た、って思ったでしょ⁈」
「!」
ぎょっとした時にはもう遅かった。マグカップを持ったまま、オリーブがタイラーを追いかけ回す。
「あのねーっ!!」
タイラーはちょっと逃げてわざと捕まった。オリーブに腕をバシバシ叩かれる。
「ヒドイじゃないのっ! よくも言ったなぁ!」
「ごめん、ごめん、悪気はないんだ」
「あってたまるか!」
「ハッハッハ、何とも賑やかだの! 楽しくなりそうだ」
身体を折り曲げて笑うサバラス老人。それを見てオリーブが呆気に取られる。背の高いタイラーがオリーブの頭にマグカップを乗せて笑った。オリーブは肩を竦めてから、場を清めるような明るい声で笑うのだった。
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