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第18話『森の賑わい』
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宇宙の九月末生の十五日、土曜日——。
炎樹の森に暮らすサバラス老人の小屋を、NWSリーダー、タイラーとオリーブの二人が訪ねた。
「こんにちはー!」
二回ドアをノックして、オリーブが声を張り上げた。
ちょっとして中から声がした。
「開いとるよ、入っとくれ――!」
オリーブは後ろに控えるタイラーに目配せしてドアを開けた。
「お邪魔しまーす」
二人とも登山でもするのかというふうな、がっちりした荷物を背負っていた。
中に招かれて入ってみると、はたしてサバラス老人は床に這いつくばってブラシで掃除中だった。
「サバラスさん、ご無沙汰してました」
タイラーが声をかけると、サバラス老人はおや、と顔を上げた。
「おお、相変わらずの男っぷりだの。元気にしとったかね?」
「はい、おかげさまで――本当に失礼をしてしまって……」
「ああ、いいんじゃそれは。あんたたちの中核にぎっちり説教しといたからな。
——ずいぶん荷物が大きいな。そいつをベッドの上にでも置いて、コーヒーでも飲まんか?」
サバラス老人はゆっくり立ち上がって、腰を伸ばした。
「よかったら私、淹れます」
タイラーと荷物をベッドに下ろしながら、オリーブが言った。
「すまんね。こんな急でなかったら、台所もピカピカにしておくんだが」
「いいえ、これでも女性なので任せておいてください」
頼もしく言って、オリーブは薬缶に水を汲み、ガスコンロの火を点けた。
それから薄汚れたシンクの掃除に取り掛かった。
「では、お手並み拝見といこうかの」
ニカッと笑って、サバラス老人はタイラーに向き直った。
「引継ぎは無事済んだかね?」
「はい、生産修法はちょうどシフト変更しないといけなかったので、タイミングよく抜けてこられました」
「そうかい、臨機応変にいかんとな」
何度も頷くサバラス老人。その上機嫌を見越してオリーブが言った。
「サバラスさん、お願いがあるんですけど……」
「なんじゃね?」
「こちらにいる間、私たちを泊めていただけませんか?」
「おや、どこかに宿を取ったんじゃないのかね」
「仕事中ですから……それに、サバラスさんのお話も聞きたいし、是非」
「それでその荷物か。儂は構わんが、狭いし不便だよ?」
タイラーが言う。
「最低限の準備はしてきました。食料も用意しましたし、調理道具も持ってきてます。着替えはカーテンで仕切って、お風呂も五右衛門風呂でもいいですし、寝る時は寝袋がありますから」
「ほう、大したもんだ。どのくらいかかりそうかね?」
「途中で終わらせた時点では16%でしたから、オリーブならあと35回で炎樹の森全域にアースフォローアップが施し終わる予定です」
「じゃあ、疲労を推し量って、一日4回ぐらいというところかな」
「そうですね。二週間の日程を見込んでいます」
「なるほど――あんたたちのいいようにしなさい。ゆったりと構えるようにな。それがアースフォローアップの極意だ」
「ありがとうございます」
間もなく薬缶がピーッと鳴った。
オリーブがインスタントコーヒーをスプーンで掬い、マグカップにパッパと二匙入れた。そしてお湯を注ぐ。コーヒーの香りが小屋中に広がる。
「サバラスさん、砂糖とミルクはどれぐらいですか?」
「儂か? 儂はブラックじゃ」
「タイラーもブラックだったよね」
「ああ」
「じゃあ、私もお付き合い」
二人にそれぞれマグカップを差し出し、立ち飲みすることにした。
炎樹の森に暮らすサバラス老人の小屋を、NWSリーダー、タイラーとオリーブの二人が訪ねた。
「こんにちはー!」
二回ドアをノックして、オリーブが声を張り上げた。
ちょっとして中から声がした。
「開いとるよ、入っとくれ――!」
オリーブは後ろに控えるタイラーに目配せしてドアを開けた。
「お邪魔しまーす」
二人とも登山でもするのかというふうな、がっちりした荷物を背負っていた。
中に招かれて入ってみると、はたしてサバラス老人は床に這いつくばってブラシで掃除中だった。
「サバラスさん、ご無沙汰してました」
タイラーが声をかけると、サバラス老人はおや、と顔を上げた。
「おお、相変わらずの男っぷりだの。元気にしとったかね?」
「はい、おかげさまで――本当に失礼をしてしまって……」
「ああ、いいんじゃそれは。あんたたちの中核にぎっちり説教しといたからな。
——ずいぶん荷物が大きいな。そいつをベッドの上にでも置いて、コーヒーでも飲まんか?」
サバラス老人はゆっくり立ち上がって、腰を伸ばした。
「よかったら私、淹れます」
タイラーと荷物をベッドに下ろしながら、オリーブが言った。
「すまんね。こんな急でなかったら、台所もピカピカにしておくんだが」
「いいえ、これでも女性なので任せておいてください」
頼もしく言って、オリーブは薬缶に水を汲み、ガスコンロの火を点けた。
それから薄汚れたシンクの掃除に取り掛かった。
「では、お手並み拝見といこうかの」
ニカッと笑って、サバラス老人はタイラーに向き直った。
「引継ぎは無事済んだかね?」
「はい、生産修法はちょうどシフト変更しないといけなかったので、タイミングよく抜けてこられました」
「そうかい、臨機応変にいかんとな」
何度も頷くサバラス老人。その上機嫌を見越してオリーブが言った。
「サバラスさん、お願いがあるんですけど……」
「なんじゃね?」
「こちらにいる間、私たちを泊めていただけませんか?」
「おや、どこかに宿を取ったんじゃないのかね」
「仕事中ですから……それに、サバラスさんのお話も聞きたいし、是非」
「それでその荷物か。儂は構わんが、狭いし不便だよ?」
タイラーが言う。
「最低限の準備はしてきました。食料も用意しましたし、調理道具も持ってきてます。着替えはカーテンで仕切って、お風呂も五右衛門風呂でもいいですし、寝る時は寝袋がありますから」
「ほう、大したもんだ。どのくらいかかりそうかね?」
「途中で終わらせた時点では16%でしたから、オリーブならあと35回で炎樹の森全域にアースフォローアップが施し終わる予定です」
「じゃあ、疲労を推し量って、一日4回ぐらいというところかな」
「そうですね。二週間の日程を見込んでいます」
「なるほど――あんたたちのいいようにしなさい。ゆったりと構えるようにな。それがアースフォローアップの極意だ」
「ありがとうございます」
間もなく薬缶がピーッと鳴った。
オリーブがインスタントコーヒーをスプーンで掬い、マグカップにパッパと二匙入れた。そしてお湯を注ぐ。コーヒーの香りが小屋中に広がる。
「サバラスさん、砂糖とミルクはどれぐらいですか?」
「儂か? 儂はブラックじゃ」
「タイラーもブラックだったよね」
「ああ」
「じゃあ、私もお付き合い」
二人にそれぞれマグカップを差し出し、立ち飲みすることにした。
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