パイオニアオブエイジ~NWSかく語りき〜

どん

文字の大きさ
176 / 276

第18話『森の賑わい』

しおりを挟む
 宇宙の九月末生の十五日、土曜日——。
 炎樹の森に暮らすサバラス老人の小屋を、NWSリーダー、タイラーとオリーブの二人が訪ねた。
「こんにちはー!」
 二回ドアをノックして、オリーブが声を張り上げた。
 ちょっとして中から声がした。
「開いとるよ、入っとくれ――!」
 オリーブは後ろに控えるタイラーに目配せしてドアを開けた。
「お邪魔しまーす」
 二人とも登山でもするのかというふうな、がっちりした荷物を背負っていた。
 中に招かれて入ってみると、はたしてサバラス老人は床に這いつくばってブラシで掃除中だった。
「サバラスさん、ご無沙汰してました」
タイラーが声をかけると、サバラス老人はおや、と顔を上げた。
「おお、相変わらずの男っぷりだの。元気にしとったかね?」
「はい、おかげさまで――本当に失礼をしてしまって……」
「ああ、いいんじゃそれは。あんたたちの中核にぎっちり説教しといたからな。
——ずいぶん荷物が大きいな。そいつをベッドの上にでも置いて、コーヒーでも飲まんか?」
 サバラス老人はゆっくり立ち上がって、腰を伸ばした。
「よかったら私、淹れます」
 タイラーと荷物をベッドに下ろしながら、オリーブが言った。
「すまんね。こんな急でなかったら、台所もピカピカにしておくんだが」
「いいえ、これでも女性なので任せておいてください」
 頼もしく言って、オリーブは薬缶に水を汲み、ガスコンロの火を点けた。
 それから薄汚れたシンクの掃除に取り掛かった。
「では、お手並み拝見といこうかの」
 ニカッと笑って、サバラス老人はタイラーに向き直った。
「引継ぎは無事済んだかね?」
「はい、生産修法はちょうどシフト変更しないといけなかったので、タイミングよく抜けてこられました」
「そうかい、臨機応変にいかんとな」
 何度も頷くサバラス老人。その上機嫌を見越してオリーブが言った。
「サバラスさん、お願いがあるんですけど……」
「なんじゃね?」
「こちらにいる間、私たちを泊めていただけませんか?」
「おや、どこかに宿を取ったんじゃないのかね」
「仕事中ですから……それに、サバラスさんのお話も聞きたいし、是非」
「それでその荷物か。儂は構わんが、狭いし不便だよ?」
 タイラーが言う。
「最低限の準備はしてきました。食料も用意しましたし、調理道具も持ってきてます。着替えはカーテンで仕切って、お風呂も五右衛門風呂でもいいですし、寝る時は寝袋がありますから」
「ほう、大したもんだ。どのくらいかかりそうかね?」
「途中で終わらせた時点では16%でしたから、オリーブならあと35回で炎樹の森全域にアースフォローアップが施し終わる予定です」
「じゃあ、疲労を推し量って、一日4回ぐらいというところかな」
「そうですね。二週間の日程を見込んでいます」
「なるほど――あんたたちのいいようにしなさい。ゆったりと構えるようにな。それがアースフォローアップの極意だ」
「ありがとうございます」
 間もなく薬缶がピーッと鳴った。
 オリーブがインスタントコーヒーをスプーンで掬い、マグカップにパッパと二匙入れた。そしてお湯を注ぐ。コーヒーの香りが小屋中に広がる。
「サバラスさん、砂糖とミルクはどれぐらいですか?」
「儂か? 儂はブラックじゃ」
「タイラーもブラックだったよね」
「ああ」
「じゃあ、私もお付き合い」
 二人にそれぞれマグカップを差し出し、立ち飲みすることにした。















しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

黄金の魔族姫

風和ふわ
恋愛
「エレナ・フィンスターニス! お前との婚約を今ここで破棄する! そして今から僕の婚約者はこの現聖女のレイナ・リュミエミルだ!」 「エレナ様、婚約者と神の寵愛をもらっちゃってごめんね? 譲ってくれて本当にありがとう!」  とある出来事をきっかけに聖女の恩恵を受けれなくなったエレナは「罪人の元聖女」として婚約者の王太子にも婚約破棄され、処刑された──はずだった!  ──え!? どうして魔王が私を助けてくれるの!? しかも娘になれだって!?  これは、婚約破棄された元聖女が人外魔王(※実はとっても優しい)の娘になって、チートな治癒魔法を極めたり、地味で落ちこぼれと馬鹿にされていたはずの王太子(※実は超絶美形)と恋に落ちたりして、周りに愛されながら幸せになっていくお話です。  ──え? 婚約破棄を取り消したい? もう一度やり直そう? もう想い人がいるので無理です!   ※拙作「皆さん、紹介します。こちら私を溺愛するパパの“魔王”です!」のリメイク版。 ※表紙は自作ではありません。

【完結】番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~

百門一新
恋愛
大妖怪の妖狐「オウカ姫」と、人間の伯爵のもとに生まれた一人娘「リリア」。頭には狐耳、ふわふわと宙を飛ぶ。性格は少々やんちゃで、まだまだ成長期の仔狐なのでくしゃみで放電するのもしばしば。そんな中、王子とのお見合い話が…嫌々ながらの初対面で、喧嘩勃発!? ゆくゆく婚約破棄で、最悪な相性なのに婚約することに。 ※「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。 ※ベリーズカフェに修正版を掲載、2021/8/31こちらの文章も修正版へと修正しました!

断罪後の気楽な隠居生活をぶち壊したのは誰です!〜ここが乙女ゲームの世界だったなんて聞いていない〜

白雲八鈴
恋愛
全ては勘違いから始まった。  私はこの国の王子の一人であるラートウィンクルム殿下の婚約者だった。だけどこれは政略的な婚約。私を大人たちが良いように使おうとして『白銀の聖女』なんて通り名まで与えられた。  けれど、所詮偽物。本物が現れた時に私は気付かされた。あれ?もしかしてこの世界は乙女ゲームの世界なのでは?  関わり合う事を避け、婚約者の王子様から「貴様との婚約は破棄だ!」というお言葉をいただきました。  竜の谷に追放された私が血だらけの鎧を拾い。未だに乙女ゲームの世界から抜け出せていないのではと内心モヤモヤと思いながら過ごして行くことから始まる物語。 『私の居場所を奪った聖女様、貴女は何がしたいの?国を滅ぼしたい?』 ❋王都スタンピード編完結。次回投稿までかなりの時間が開くため、一旦閉じます。完結表記ですが、王都編が完結したと捉えてもらえればありがたいです。 *乙女ゲーム要素は少ないです。どちらかと言うとファンタジー要素の方が強いです。 *表現が不適切なところがあるかもしれませんが、その事に対して推奨しているわけではありません。物語としての表現です。不快であればそのまま閉じてください。 *いつもどおり程々に誤字脱字はあると思います。確認はしておりますが、どうしても漏れてしまっています。 *他のサイトでは別のタイトル名で投稿しております。小説家になろう様では異世界恋愛部門で日間8位となる評価をいただきました。

『まて』をやめました【完結】

かみい
恋愛
私、クラウディアという名前らしい。 朧気にある記憶は、ニホンジンという意識だけ。でも名前もな~んにも憶えていない。でもここはニホンじゃないよね。記憶がない私に周りは優しく、なくなった記憶なら新しく作ればいい。なんてポジティブな家族。そ~ねそ~よねと過ごしているうちに見たクラウディアが以前に付けていた日記。 時代錯誤な傲慢な婚約者に我慢ばかりを強いられていた生活。え~っ、そんな最低男のどこがよかったの?顔?顔なの? 超絶美形婚約者からの『まて』はもう嫌! 恋心も忘れてしまった私は、新しい人生を歩みます。 貴方以上の美人と出会って、私の今、充実、幸せです。 だから、もう縋って来ないでね。 本編、番外編含め完結しました。ありがとうございます ※小説になろうさんにも、別名で載せています

職業『お飾りの妻』は自由に過ごしたい

LinK.
恋愛
勝手に決められた婚約者との初めての顔合わせ。 相手に契約だと言われ、もう後がないサマンサは愛のない形だけの契約結婚に同意した。 何事にも従順に従って生きてきたサマンサ。 相手の求める通りに動く彼女は、都合のいいお飾りの妻だった。 契約中は立派な妻を演じましょう。必要ない時は自由に過ごしても良いですよね?

後宮の手かざし皇后〜盲目のお飾り皇后が持つ波動の力〜

二位関りをん
キャラ文芸
龍の国の若き皇帝・浩明に5大名家の娘である美華が皇后として嫁いできた。しかし美華は病により目が見えなくなっていた。 そんな美華を冷たくあしらう浩明。婚儀の夜、美華の目の前で彼女付きの女官が心臓発作に倒れてしまう。 その時。美華は慌てること無く駆け寄り、女官に手をかざすと女官は元気になる。 どうも美華には不思議な力があるようで…?

【第一部完結】翡翠色の風に乗せて〜私はダメなんかじゃない〜

碧風瑠華
ファンタジー
「お前はダメだ」と言われつづけましたが、ダメだったのは貴方です。 「せっかく離れたのに、また関わるなんて……!」 ルクレ伯爵家の令嬢セリーヌは、第三王子アランディルの婚約者候補に選ばれてしまった。 根本的に合わないあの人との関わりに、心を痛めながらも逃れる方法を静かに模索していく。 ※第一部完結済 ※他サイトにも掲載中です。

処理中です...