パイオニアオブエイジ~NWSかく語りき〜

どん

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第19話『祝福』

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 童話の里の集会所に戻った二人は持ち場に戻った。
 ルイスは臆することなく、ハルニレに声をかけた。
「ハルニレさん、さっきはありがとう」
「いいえ……大丈夫ですか?」
 ハルニレが気づかわしそうに尋ねる。ルイスははっきりと言った。
「うん、心配してくれてありがとう!」
 安心したような笑顔が向けられる。ルイスもまた優しく笑う。
 この心通う瞬間をもっと増やしていけたら。今とは違う景色が見えてくるだろうと、ルイスは心から信じた。
 自然と生産修法にも身が入る。
 焦らなくていい、俺は俺だから。自分なりにこの瞬間に心を込めよう。
 その時だった。
 生産修法の球の下から、出てきたものがいる。
(あっ……!)
 それは黄金色の服を着た、一見として女性とわかる妖精だった。
 零れるような稲穂の冠を被って、柔らかい木漏れ日のように光る不思議な服、波打つ黒髪……まるで人形のように華奢な姿をしていた。
 小首を傾げ、ルイスを見ている。
 そしてもう一人、同じ素材の服と山高帽に稲穂を挿した男性の妖精がふっと現れた。
 男性の妖精が手を差し出すと、女性の妖精は恭しく手を乗せた。ルイスに一礼すると、楽しげに踊り出した。
 ルイスが目を奪われていると、妖精たちは光を散らして視界から消えた。
 この感動を分かち合おうとランスを探したが、近くにはいなかった。
「あっ……!」
 反対側でハルニレが小さな声を上げた。
 見ると、さっきの妖精たちがハルニレの作った球の下で踊っていた。
 ハルニレはまじまじとそれに見入っていた。彼女には妖精が見えるのだ!
 やがて、ハルニレは何とも言えない豊かな笑みを浮かべた。
 さらに不思議なことだが、この妖精のダンスはルイスとハルニレにしか見えていないようだった。
 間もなく妖精たちはハルニレの視界からも消えた。
 ハルニレがどこへ行ったかと視線を彷徨わせた。
 ルイスと視線が合った。
「……」
 沈黙が語ることは大きかった。
 ルイスは黙って、二人のちょうど真ん中あたりの円卓を指差した。
 すると、妖精のカップルは、くるくると軽やかなステップで回っていた。
 ハルニレの顔が喜びで輝く。
 二人は顔を見合わせて笑い合う。
 テレパスも交わさず、心通わせる。
 妖精のカップルの踊りに、辺りから妖精たちが集まってきた。
 ぷりんとしたブドウの妖精、背の高いトウモロコシの妖精、変わった帽子のキノコの妖精たち、恰幅のいいカボチャの妖精、雫のようなイチジクの妖精、シュッとしたオクラの妖精、艶々のナスの妖精——。
 そこは宇宙の九月の園だった。
 愉快なダンスが繰り広げられる、憩いの場。
 実際、ルイスはハルニレと踊り出したいほど愉快だった。それはハルニレも同じ気持ちである。
 妖精たちは祝福しているのだ。
 もちろん、二人の恋の芽生えに。
 もう疑う余地はなかった。
 踊りの輪は恋の喜びを表現するように、一層ダイナミックになっていく。
 観客は二人きり。何と贅沢な演目だろう。二人は幸せだった。
 心躍り出す瞬間を確かに分かち合っていた。
 どんなに報酬を出しても得られない宝物をもらったのだった。
 

 



















 
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