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第19話『帰りのお茶』
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「アヤさん……!」
アヤが仕事帰りに食料品店で買い物をしていると、誰かに呼び止められた。
視線の先にハルニレの姿を認めた途端、アヤは自分の役割を察した。
「ハルニレちゃん、夕ご飯のお買い物?」
「はい、急に秋野菜のグリルが食べたくなって、その買い出しです」
ハルニレは照れながら言った。
「そう、やっぱり女性は食欲の秋よね」
大いに賛同してアヤが笑う。
「私はちょっと気をつけないといけないんですけどね」
チロッと舌を出すハルニレ。アヤは首を傾げた。
「あんまり神経質にならなくてもいいと思うよ。健康が一番」
「アヤさんはスレンダーで羨ましいな」
「そう? 痩せぎすで全然太れないから、私は逆にハルニレちゃんが羨ましいけど」
「じゃあ、間を取ってお茶しませんか?」
「いいね。秋の夕べにコーヒーとモンブランなんてどう?」
「大賛成です!」
二人はその場は別れて、買い物を手早く済ませると、近くのカフェに向かった。
「ここ知ってる? キーツさんが夢を叶えたカフェよ」
「はい、もう噂で持ち切りですから」
二人が選んだのは奇しくもビアンコ・ディアマンテだった。
荷物を奥のソファー席に置いて、レジで注文する。
そして、オータムブレンドとマロンクリームたっぷりのモンブランをトレイに載せてもらった。
席に向かって向かい合う。
「じゃあ、お疲れ様」
「お疲れ様でした」
コツンとカップを鳴らして、コーヒーの香りを楽しむ。
「いい香り! コーヒーって落ち着きますよね。私、ブラックって好きで」
「私もよ。読書しながら飲むのって最高なのよね」
「アヤさんってどんな本を読むんですか?」
「そうね……小説に哲学書、エッセイに料理本。全然節操がないんだけどね」
「へぇ……」
「ハルニレちゃんは?」
「私も割とそうで、恋愛小説にエッセイに自己啓発本。それから、名前を木からもらってるので、木とか葉っぱの図鑑とか眺めてます」
「なるほど……素敵な名前よね。誰につけてもらったの?」
「祖父です。教育関係の仕事をしているので、一風変わってるんです。実家には私と同い年の春楡の木が植わわっているんですよ」
「へぇ……それは楽しいわね」
「もう12メートルくらいになるんですけど、こんもりしてて私にそっくりだって祖父が笑うんですよ。……ヒドいと思いません?」
「あら、それも味じゃない? パラティヌスの女の子は圧倒的に花の名前が多いけど、ひねりが効いていて面白いわよ」
「ちょっとだけ……自慢なんですけどね。エヘッ」
「そうでしょうとも」
コーヒーを飲みながら、アヤはハルニレをチラッと見た。
同性から見ても、ハルニレはチャーミングだ。
本人は気にしているが、ぽっちゃりしているところが親しみやすく、人に警戒心を抱かせない。豊かな表情は見ていてほのぼのする。
年上のアヤにも物怖じしないところといい、おっとりした育ちを感じさせる。
アヤは本題に入ることにした。
アヤが仕事帰りに食料品店で買い物をしていると、誰かに呼び止められた。
視線の先にハルニレの姿を認めた途端、アヤは自分の役割を察した。
「ハルニレちゃん、夕ご飯のお買い物?」
「はい、急に秋野菜のグリルが食べたくなって、その買い出しです」
ハルニレは照れながら言った。
「そう、やっぱり女性は食欲の秋よね」
大いに賛同してアヤが笑う。
「私はちょっと気をつけないといけないんですけどね」
チロッと舌を出すハルニレ。アヤは首を傾げた。
「あんまり神経質にならなくてもいいと思うよ。健康が一番」
「アヤさんはスレンダーで羨ましいな」
「そう? 痩せぎすで全然太れないから、私は逆にハルニレちゃんが羨ましいけど」
「じゃあ、間を取ってお茶しませんか?」
「いいね。秋の夕べにコーヒーとモンブランなんてどう?」
「大賛成です!」
二人はその場は別れて、買い物を手早く済ませると、近くのカフェに向かった。
「ここ知ってる? キーツさんが夢を叶えたカフェよ」
「はい、もう噂で持ち切りですから」
二人が選んだのは奇しくもビアンコ・ディアマンテだった。
荷物を奥のソファー席に置いて、レジで注文する。
そして、オータムブレンドとマロンクリームたっぷりのモンブランをトレイに載せてもらった。
席に向かって向かい合う。
「じゃあ、お疲れ様」
「お疲れ様でした」
コツンとカップを鳴らして、コーヒーの香りを楽しむ。
「いい香り! コーヒーって落ち着きますよね。私、ブラックって好きで」
「私もよ。読書しながら飲むのって最高なのよね」
「アヤさんってどんな本を読むんですか?」
「そうね……小説に哲学書、エッセイに料理本。全然節操がないんだけどね」
「へぇ……」
「ハルニレちゃんは?」
「私も割とそうで、恋愛小説にエッセイに自己啓発本。それから、名前を木からもらってるので、木とか葉っぱの図鑑とか眺めてます」
「なるほど……素敵な名前よね。誰につけてもらったの?」
「祖父です。教育関係の仕事をしているので、一風変わってるんです。実家には私と同い年の春楡の木が植わわっているんですよ」
「へぇ……それは楽しいわね」
「もう12メートルくらいになるんですけど、こんもりしてて私にそっくりだって祖父が笑うんですよ。……ヒドいと思いません?」
「あら、それも味じゃない? パラティヌスの女の子は圧倒的に花の名前が多いけど、ひねりが効いていて面白いわよ」
「ちょっとだけ……自慢なんですけどね。エヘッ」
「そうでしょうとも」
コーヒーを飲みながら、アヤはハルニレをチラッと見た。
同性から見ても、ハルニレはチャーミングだ。
本人は気にしているが、ぽっちゃりしているところが親しみやすく、人に警戒心を抱かせない。豊かな表情は見ていてほのぼのする。
年上のアヤにも物怖じしないところといい、おっとりした育ちを感じさせる。
アヤは本題に入ることにした。
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