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第21話『リサの過去』
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もしかしたら――リサは集団に腫れ物扱いされたことがあるのでは? とパティは思った。
「あーっ、思わず熱弁をふるってしまったわ。とにかくね、そういうこと。パティの場合は最悪の事態の何段階も前だわ。やってしまったことは消せないけど、名誉は挽回できる! 踏ん張んなさい」
「……はい」
「よかった! そう思い直してもらえないと、私の二の舞だからね」
「えっ?」
「実は――私がNWS辞めたのは、それが原因でね……」
「そう……なんですか?」
パティはその経緯を知らなかった。
「パティはNWSに入って、まだ三年ってところでしょ?」
「はい」
「じゃあ、知らないわよね……NWSが結成された当初は、まだ9班しかなくて、私は9班に属していたの。9班の女性メンバーはね、揃いも揃ってアロンのファンなのよ。知ってた?」
「はい」
それはもう有名な話だ。その露骨な態度は9班の業績に影を落としているくらいである。
「私はあの人たちの、班の利益を省みない利己的さに業を煮やして、ある時こう言ったの。「アロンさんじゃ班を率いていけないから、私が代わりにリーダーになる!」って」
「それは……」
状況が思い浮かぶようだった。かくしてリサを無視して、9班の女性メンバーは行動するようになった。アロンが対応に苦慮して、ますます実力が発揮できなくなったのに責任を感じて、リサはNWSを辞めた。
「レベルアップに燃えてたからね、私……思わず本音が口を突いて出たってとこ。皮肉にもNWSを辞めて、トラディショナルオークツリーに入って間もなく、鳥俯瞰者になれたけど。内心は目的が逸れて、結構複雑だったわ」
「そうだったんですか……でも、9班って今もそんな感じですよ。内部分裂っていうか、みんな違う方向をむいてるみたいな」
「相変わらず進歩がないわねぇ。助太刀したろか? なんてね」
「違ってたらごめんなさい。もしかして、リサさんもアロンさんのこと……」
チロッと舌を出すリサ。
「当たり。その人のことを本当に思ってなかったら言えないことってあるでしょ? 私が非難覚悟で言ったことは、結果アロンのためにならなかったけど、アロン本人にはずいぶん感謝されたわ。「プライドが邪魔して誰にも頼れなかったのを改善するきっかけを作ってくれた」ってね」
「そんな……切なすぎます! アロンさんが班の亀裂にしっかり対応できていたら、リサさんみたいな有能な人を辞めさせずに済んだのに!」
「ありがと、慰めてくれて。でもね、容姿が綺麗だったりモテたりするのは、誰だって対応しかねる時だってあるのよ。アロンがちらっと言ってたけど、リーダー会議以外では実力主義な面を隠してるって。班のメンバーには軟派な印象を強く押し出して、逆にナメられることも気にしなくなったって話よ。そう話してくれるだけでもポイント高いし、他の女よりリードしてると思わない?」
「じゃあ、アロンさんとは現在進行形なんですね?」
「そう! 胸の空く思いよねぇ」
「なんだ、怒って損した!」
言いながらパティは嬉しそうに笑った。
リサも笑いながら、こう助言した。
「パティもね……今度は自分に負けず劣らず情熱的な相手を引き寄せてみせてよ。火花散らすケンカができるような、パワフルで男気のある人がいいわ。張り合いあるわよー!」
「えーっ、そんな人おいそれとは……」
「失礼します」
と、急に二人に声をかけてきた人物がいる。
地黒で額に深く皺を刻み、白い歯と笑顔がチャーミングな男だった。
「あーっ、思わず熱弁をふるってしまったわ。とにかくね、そういうこと。パティの場合は最悪の事態の何段階も前だわ。やってしまったことは消せないけど、名誉は挽回できる! 踏ん張んなさい」
「……はい」
「よかった! そう思い直してもらえないと、私の二の舞だからね」
「えっ?」
「実は――私がNWS辞めたのは、それが原因でね……」
「そう……なんですか?」
パティはその経緯を知らなかった。
「パティはNWSに入って、まだ三年ってところでしょ?」
「はい」
「じゃあ、知らないわよね……NWSが結成された当初は、まだ9班しかなくて、私は9班に属していたの。9班の女性メンバーはね、揃いも揃ってアロンのファンなのよ。知ってた?」
「はい」
それはもう有名な話だ。その露骨な態度は9班の業績に影を落としているくらいである。
「私はあの人たちの、班の利益を省みない利己的さに業を煮やして、ある時こう言ったの。「アロンさんじゃ班を率いていけないから、私が代わりにリーダーになる!」って」
「それは……」
状況が思い浮かぶようだった。かくしてリサを無視して、9班の女性メンバーは行動するようになった。アロンが対応に苦慮して、ますます実力が発揮できなくなったのに責任を感じて、リサはNWSを辞めた。
「レベルアップに燃えてたからね、私……思わず本音が口を突いて出たってとこ。皮肉にもNWSを辞めて、トラディショナルオークツリーに入って間もなく、鳥俯瞰者になれたけど。内心は目的が逸れて、結構複雑だったわ」
「そうだったんですか……でも、9班って今もそんな感じですよ。内部分裂っていうか、みんな違う方向をむいてるみたいな」
「相変わらず進歩がないわねぇ。助太刀したろか? なんてね」
「違ってたらごめんなさい。もしかして、リサさんもアロンさんのこと……」
チロッと舌を出すリサ。
「当たり。その人のことを本当に思ってなかったら言えないことってあるでしょ? 私が非難覚悟で言ったことは、結果アロンのためにならなかったけど、アロン本人にはずいぶん感謝されたわ。「プライドが邪魔して誰にも頼れなかったのを改善するきっかけを作ってくれた」ってね」
「そんな……切なすぎます! アロンさんが班の亀裂にしっかり対応できていたら、リサさんみたいな有能な人を辞めさせずに済んだのに!」
「ありがと、慰めてくれて。でもね、容姿が綺麗だったりモテたりするのは、誰だって対応しかねる時だってあるのよ。アロンがちらっと言ってたけど、リーダー会議以外では実力主義な面を隠してるって。班のメンバーには軟派な印象を強く押し出して、逆にナメられることも気にしなくなったって話よ。そう話してくれるだけでもポイント高いし、他の女よりリードしてると思わない?」
「じゃあ、アロンさんとは現在進行形なんですね?」
「そう! 胸の空く思いよねぇ」
「なんだ、怒って損した!」
言いながらパティは嬉しそうに笑った。
リサも笑いながら、こう助言した。
「パティもね……今度は自分に負けず劣らず情熱的な相手を引き寄せてみせてよ。火花散らすケンカができるような、パワフルで男気のある人がいいわ。張り合いあるわよー!」
「えーっ、そんな人おいそれとは……」
「失礼します」
と、急に二人に声をかけてきた人物がいる。
地黒で額に深く皺を刻み、白い歯と笑顔がチャーミングな男だった。
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