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第22話『助力』

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「女子の向こう見ずを防ぎ、男子の現実逃避を許さない、というのがリーダーの基本方針でいいか?」
 マルクが珍しく投げやりに言った。
「ちょっと、何でそこに落ち着くわけ?」
 ポールが呆れて言った。
「悪党相手に建設的になれっていう方が矛盾してるだろ」
「だからって、NWSの士気落としたら、向こうの思うツボでしょうが!」
「じゃあ聞くが、ポールの意見は?」
「それはだな……」
「うん」
「……考案中で」
「そうだろ、そうだろ」
 マルクは特に責めなかった。
 その時だった。
 西側の本棚で、カタタッと音がした。
「何の音だ?」
「あ、本が一冊飛び出してる」
「もしかして……!」
 オリーブが席を立って行って、一冊の童話本を手に取った。
『マーメイドリーフの人魚たち』——。
 オリーブたち五人が出会った人魚、エメラからの緊急連絡だ。
「おおっ、これって例のトゥーラ似の人魚と会える、マジックアイテム⁈」
 ポールが興奮して言った。
「まぁ、そうなんだけど……どうやって使うの? ナタル」
 本を円卓まで持ってきて、ナタルに本を手渡そうとするオリーブ。
 ナタルは手で止めた。
「どうって、特別なことは何も……パラパラッとめくってみたらどうだろう?」
「ふーん、人を選ばないのかな……あ!」
「どうした?」
 タイラーに聞かれて、オリーブが円卓の上に本を開いて見せた。
「ほら、絵の海が動いてる。あっ、それに潮の香りがする!」
「どれどれ⁈」
 ポールが円卓の反対側から身を乗り出す。
「ホントだ。どんどん香りが強くなってる!」
 目を輝かせるポールと、興味津々の当時の部外者、マルク・トゥーラ・タイラー・アロン。
 が、それ以上何も起こる気配がない。
「えっと、あの時って他に何か手続きってあったっけ?」
「確かランスさんが、絵の中の人魚に取次ぎをお願いしたんだよね」
 キーツが思い返して言った。
「ああ、そっか……どなたか取次ぎをお願いできませんか――?」
 オリーブが本に向かって声をかけた。
 途端にページがめくられて、人魚の楽園の場面になり、右端の赤い髪の人魚がこう云ったのだ。
「ちょっと待っててね」
 その人魚は彼らの目の前で、ページからパーンと飛び出して、輝く肢体をくねらせて本の中へダイブした。
「はぁーっ、ファンタスティック! で、こっからどうなんの⁈」
 ポールの好奇心が最高潮になる。
「そういえばあの時は、マーメイドリーフにいきなりテレポートさせられたけど、今回はいいのかな?」
 ナタルが疑問を口にする。
「……人数制限があるとか」
 ルイスが思いついて言った。
「あるいは魔法に条件がある……とか」
 顎に細い指を当てて、アロンが呟く。
「あ! そういえば当時のメンバーに理屈屋がいない!!」
 図らずもポールが事実に気づいた。
 すると、トプンと音がして、先ほどの人魚が本から顔を出して言った。
「人魚のエメラがマーメイドリーフでお待ちしています」
「ありがとうございます。私たちがあちらへ出向いたほうがいいでしょうか?」
 ランスが尋ねると、人魚はニコリと笑んでオービット・アクシスを指差した。
「——?」
 お題が出たが、やはりポールがすぐに気づいた。
「3Dカメラをテレポートさせればいいんじゃない⁈ 座標はマーメイドリーフで!」
「ハンス、そういうわけだから、いったん会議を中止してもいいかしら?」
 トゥーラが即座に反応し、ハンスはわからないながらも了承した。
「わ、わかった! 後で顛末教えてもらっていい?」
「もっちろん! 期待してな」
 と言いつつ、ポールはもはや会議に眼中がないのだった。














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