パイオニアオブエイジ~NWSかく語りき〜

どん

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第23話『ルイスのパン』

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「はい、是非!」
 食い気味に上体を屈めるハルニレ。
 この時を待っていた――!
 一方的に評価されるのは不公平だと思っていたところなのだ。
 素直すぎる反応に苦笑しながら、ルイスは紙袋から包装したパンを取り出した。
 それは四角くて縦にボリュームがあった。上に面白い刻印がしてある。
「変わり種のあんパンなんだ。いろいろ説明するよりも、まずは食べてみて」
 ルイスに言われて、慎重にパンに手を伸ばすハルニレ。
「……いただきまーす」
「あ、割くよりそのまま齧ってみてほしいな。絶対、ハルニレさんの好みだと思うんだけど」
「あ、はい」
 リクエストに応えて、大き目に口を開けて食べてみる。
「!」
 この芳醇な小麦の香り。口に入れた瞬間から感動の連続だった。
 続いてふんわりしっとりの生クリームとこしあんの滑らかな舌触りと風味の好さにすっかり魅了される。
 甘さが程よく上品で、噛むほどに口の中に幸福感が広がる。
 その香りは鼻に抜けて、いつまでもほのかに残っているのだ。
「お――いしぃ――!」
 ハルニレの心底嬉しそうな笑顔に、ルイスも満足した。
「……どうせだから、小豆も生産修法で拵えてみたんだ。もちろん小麦もそうだよ。せっかくハルニレさんに食べてもらうんだから、納得のいくものを作りたくてね。結構失敗しちゃったよ。全部自分で食べたから、この辺の肉になってるんじゃないかな」
 言って、腹肉をつまんで見せるルイス。
 どう見ても皮しかないように思うのだが、そこを突っ込まないのがハルニレだった。
「ルイスさん……」
 それどころか、感動してルイスを見つめている。
「いつもカロリーには気をつけてるみたいだから、真逆の甘いパンを食べてもらうのはどうかと思ったんだけど。……その顔が見たくて、自分の意見を通させてもらったよ。苦情はちゃんと受け付けるよ」
「そんな……! こんな好みのあんパン食べたの初めてです。店に売ってたら朝一番に並んで買いに行きます。それくらい絶品です」
「ありがとう、そう言ってもらえると作った甲斐があるよ」
「というより、私が恥ずかしいです。なんか……こんなに上手にパンを作れる人に、欠陥だらけの試作品を食べてもらってたなんて」
 恥じ入るハルニレにルイスは言った。
「俺には仕上がりを追求できるだけの時間があったよ。引き替えハルニレさんは短期間にあれだけのパンを作り上げたんだから、やっぱり才能あるよ。集会所で初めて食べさせてもらったカンパーニュ、すごくおいしかった! 本当に食べることを楽しんでるんだなって、共感できた。……これからも、完成品もその途中の試作品も食べさせてもらえたら嬉しいんだけどな」
「は、はい。こんなのでよければいくらでも……」
 涙ぐみながら、ハルニレは身体を縮めた。
 嬉し恥ずかし、というところか。
 ルイスはルイスで、ハルニレの作ったパンをじっくり味わって食べた。
 二人の共通の幸せができた瞬間だった。

















 

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