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第23話『ケイン、核心をつく』
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祖父はハルニレに向き直った。
「わかりやすく言おうか? おまえの欠点はお人に甘えすぎてしまうところだ。家族みたいにね。誰だって邪気のない笑顔を向けられれば悪い気はしないさ。それでも、どんなことでも度が過ぎれば弊害が出るものなんだ。今のところ、ルイス君を始め、ハルをハルのままでいさせてくれる人間で周りが固められているようだが。——中には苦々しく思っている人間が必ずいる。その人たちにバカにされない対応ができるかどうかが大人の分かれ目だ」
「チェリーは大人で、私は子どもだって言うの⁈」
噛みつくように叫んだハルニレに、ケインは言った。
「よく考えてみなさい。チェリーだって、ある時期まではハルそっくりの時があったんだ。おまえのマネをして育ったんだよ。でも、ある時何かが違うことに気づいたんだ。そのことに確信を持つまでは、あの子も不安定だった。おまえをイジメていた時でさえ、苦しかったもがいていた。外へ外へ向かうことで、あの子の欠乏感に光が差した。今あの子は人に会うのが楽しくて仕方ない様子だ。自分の力で扉を開いたんだ。チェリーと同じことがハルにできるかね?」
「……」
黙り込むハルニレに、ホリーは優しく言った。
「もちろん、ハルちゃんの素直さも才能ですよ。お人にみっともないところを見せないのは、あなたの美点だわ。チェリーがそれこそ体当たりで学ばなくてはならないことを、すんなり躾で身につけられるのは、やっぱり稀だものね」
「おばあちゃん……」
ケインは核心に触れた。
「ハル……恋はな、高価な品物を持ち出して、自分にレッテルを貼って見てもらうのが醍醐味じゃないんだよ。それは相手に「私はこんなに特別なの。だからあなたも大切にして」と甘えてるのと同じだ。ルイス君が距離を取ったのは、そんな一方的な関係でなく、ハルが大人の女性として学び合える建設的な相手かどうか見極めるためだよ」
「……!!」
再びハルニレが青ざめる。
ルイスが自分を傷つけないように、どれだけ言葉を選んでくれたのか、はっきりわかったのだった。
「私……どうしよう!!」
両手で顔を覆うハルニレの背中を、ホリーは優しくさする。
「落ち着いて、ハルちゃん。まだ恋は始まったばかりじゃありませんか。ルイスさんだって間違うけれど、ちゃんと正して引き返す勇気がありますよ。あなたはどうするの?」
「私もちゃんと引き返す! そして、ルイスさんに失礼をお詫びするわ」
その様子にケインもホリーも心から安堵した。
「あなたの素直さはこれからも大きな強みですよ。ただね、お互いを知るための大切な手間を省かないで。大丈夫、私たちに偽りなく自分のことを話してくれるルイスさんだもの。きっと道の途中で待っててくれますよ」
「はい……!」
そう言って、ハルニレはアパートに戻っていった。
母の手作り料理をしっかりお土産に持たされて。
「わかりやすく言おうか? おまえの欠点はお人に甘えすぎてしまうところだ。家族みたいにね。誰だって邪気のない笑顔を向けられれば悪い気はしないさ。それでも、どんなことでも度が過ぎれば弊害が出るものなんだ。今のところ、ルイス君を始め、ハルをハルのままでいさせてくれる人間で周りが固められているようだが。——中には苦々しく思っている人間が必ずいる。その人たちにバカにされない対応ができるかどうかが大人の分かれ目だ」
「チェリーは大人で、私は子どもだって言うの⁈」
噛みつくように叫んだハルニレに、ケインは言った。
「よく考えてみなさい。チェリーだって、ある時期まではハルそっくりの時があったんだ。おまえのマネをして育ったんだよ。でも、ある時何かが違うことに気づいたんだ。そのことに確信を持つまでは、あの子も不安定だった。おまえをイジメていた時でさえ、苦しかったもがいていた。外へ外へ向かうことで、あの子の欠乏感に光が差した。今あの子は人に会うのが楽しくて仕方ない様子だ。自分の力で扉を開いたんだ。チェリーと同じことがハルにできるかね?」
「……」
黙り込むハルニレに、ホリーは優しく言った。
「もちろん、ハルちゃんの素直さも才能ですよ。お人にみっともないところを見せないのは、あなたの美点だわ。チェリーがそれこそ体当たりで学ばなくてはならないことを、すんなり躾で身につけられるのは、やっぱり稀だものね」
「おばあちゃん……」
ケインは核心に触れた。
「ハル……恋はな、高価な品物を持ち出して、自分にレッテルを貼って見てもらうのが醍醐味じゃないんだよ。それは相手に「私はこんなに特別なの。だからあなたも大切にして」と甘えてるのと同じだ。ルイス君が距離を取ったのは、そんな一方的な関係でなく、ハルが大人の女性として学び合える建設的な相手かどうか見極めるためだよ」
「……!!」
再びハルニレが青ざめる。
ルイスが自分を傷つけないように、どれだけ言葉を選んでくれたのか、はっきりわかったのだった。
「私……どうしよう!!」
両手で顔を覆うハルニレの背中を、ホリーは優しくさする。
「落ち着いて、ハルちゃん。まだ恋は始まったばかりじゃありませんか。ルイスさんだって間違うけれど、ちゃんと正して引き返す勇気がありますよ。あなたはどうするの?」
「私もちゃんと引き返す! そして、ルイスさんに失礼をお詫びするわ」
その様子にケインもホリーも心から安堵した。
「あなたの素直さはこれからも大きな強みですよ。ただね、お互いを知るための大切な手間を省かないで。大丈夫、私たちに偽りなく自分のことを話してくれるルイスさんだもの。きっと道の途中で待っててくれますよ」
「はい……!」
そう言って、ハルニレはアパートに戻っていった。
母の手作り料理をしっかりお土産に持たされて。
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