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第24話『教会での祝賀会』

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 豊穣の十月園慰《えんい》の二十一日、日曜日——。
 カラッとした秋晴れと爽やかな空気に包まれて、レピア湖畔区パスクア村の教会バザー当日になった。
 小さな教会の小さな広場に簡易テントが建ち並び、民芸品や雑貨、食料品、骨董品などが軒を連ねる。
 昨日から始められていた準備は滞りなく進行し、NWSからの助っ人も加わって、とても賑やかだった。
 主催者である牧師のランスが、穏やかながら要所に指示を出し、中心グループの婦人会の女性たちと和やかに話す。その隣で相槌を打ちながら耳を傾けるアヤに、好奇の目を向ける人も多かった。
 この教会の牧師は変わっているとのもっぱらの噂だった。
 日中はどこかで仕事をしているらしく、出かけていることが多いのに、告解室に懺悔したい人が訪ねると、必ずいたりする。
 いつ作っているのか、裏の畑は常に瑞々しい野菜で溢れ、惜しげもなく経済的余裕のない家庭に配り歩く。
 年に一度のバザーはいつも遺漏なく整えられ、どこで知り合うのか様々な年代の人々が集った。
 パスクア村の牧師は大変な徳を積んだ聖人、というのが通説になっていた。

 午前八時……早起きの村の人々は、バザー会場の賑やかさにつられて、広場に集まりだしていた。
 朝食を提供してくれる飲食店は早くも盛況だ。
 アヤがチーフになった飲食店『のどかふぇ』も多くの人々が並んだ。
 ハルニレが作った五種類のパンは飛ぶように売れ、テイクアウトもできるので好評だった。
 がっつりした芋煮や丼ぶりものなどは昼食メニューに回し、朝は胃に優しいにゅう麺やおにぎりなどが出された。
 お年寄り向けのメニューは大当たりで、多くの人の舌を唸らせた。
 ポールやトゥーラは言うに及ばず、ハルニレも善戦していたし、ルイスは皿洗いにウエイターと何でもござれだった。
 アヤは――驚くべき料理の腕前、そして特筆すべきなのは作業スピードだった。
 全工程に関わり、五つか六つの掛け持ちは当たり前。しまいにハルニレから包丁を取り返すほどだった。
 さすがにポールやトゥーラにそうすることはなかったが、立場が同じなら扱いはもっと違っていただろう。
 それに、ポールたちはあくまでも助っ人として、アヤの補助をしていた。
 段取りはすべてアヤが仕切っている。
 雑談もそこそこに、二人はいつもと違う役割を楽しんでいる。
 大変だったのはハルニレだろう。
 アヤの作業スピードに追い付けず、必死に追いつこうと努力はしていたが、結局仕事を取り返されて右往左往した。
 時折、様子を見てトゥーラが助け舟を出していたが、しみじみありがたく思っている暇もなかった。
 ルイスは助けたくても仕事に忙殺されてそれどころではなかった。
 アヤの指示が的確なおかげで、かろうじて浮いてはいない、というところだ。

















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