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第25話『ミレイ、ヨコザワ家へ』
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「ポールってのは……髪がくるくるしてて、目が小さくて、顎が角ばってて、すんげぇ明るい兄ちゃんだろ?」
ノリヒトがミレイを安心させるように言った。
「ヒック……おじさん、ポールお兄ちゃんを知ってるの?」
やっぱり食いついた。ノリヒトはしたり顔で言った。
「まぁな、友だちだよ友だち。じいさんはポールの側にいるんだろ?」
「うん……」
「じゃあ話は早い、童話の里に連れてってやるよ。その前にな……泥だらけになったズボン、洗って乾かさねえとな。ポールにどやされちまうぜ。ミレイっつったな。俺ん家に来い! お風呂入ってけ」
ポンポンと背中を叩いて安心させてやる。
「……抱っこ」
「しょうがねぇなぁ、どれ!」
ノリヒトは事もなげにミレイを抱き上げると、とっとと家路を急いだ。
ヨコザワ家——。
昔ながらの大きな農家の邸宅である。
家に着くと、ノリヒトは声を張り上げた。
「ただいまー! ヨリコ、ちと手ぇ貸してくれ」
「なんだい、この忙しいのに!」
台所からノリヒトの妻、ヨリコの声がした。言葉とは裏腹にパタパタとスリッパを鳴らして玄関までやってくる。
「——りんごジャムの瓶詰で忙しいってのに、何の騒ぎだい! ……おや、その子どこの子? かわいいねぇ」
「話は後だ! 雨ん中、梅の木の下でピーピー泣いてたんで拾ってきた。風邪を引いたら厄介だから風呂に入れる。風呂沸いてるか?」
「拾ってきた、って……犬や猫じゃないんだよ!」
文句を言いながらも、手はミレイの靴を脱がしにかかっている。さすが阿吽の呼吸、ダテにノリヒトの妻はやってない。
「おばさん、ありがとう」
「おや、いい子だね。こんなに冷えちまって……このおじさんがいいって言うまでお風呂に入っているんだよ」
「うん!」
すっかりミレイを気に入って、ヨリコはノリヒトと大騒ぎしながら服を脱がせて、総檜の風呂に入れてやった。
その間、ミレイの服はヨリコが洗って乾かしてくれる。
「このお風呂、いい匂いするね!」
「まぁな、おじさんの自慢の風呂だ。檜の風呂に湯を張ると、お湯が柔らかくなるんだよ」
「お湯って、毛布なの?」
ミレイの子どもらしい発想に、ノリヒトが吹き出す。
「カッカッカ、ちげぇねぇ。大当たりだ」
「カッカッカ!」
「そうだ、ミレイも男なら、どんと笑え」
脱衣所で会話を聞いていたヨリコが、そっと目頭を拭った。
夫妻には子どもがいなかったのである――。
ノリヒトがミレイを安心させるように言った。
「ヒック……おじさん、ポールお兄ちゃんを知ってるの?」
やっぱり食いついた。ノリヒトはしたり顔で言った。
「まぁな、友だちだよ友だち。じいさんはポールの側にいるんだろ?」
「うん……」
「じゃあ話は早い、童話の里に連れてってやるよ。その前にな……泥だらけになったズボン、洗って乾かさねえとな。ポールにどやされちまうぜ。ミレイっつったな。俺ん家に来い! お風呂入ってけ」
ポンポンと背中を叩いて安心させてやる。
「……抱っこ」
「しょうがねぇなぁ、どれ!」
ノリヒトは事もなげにミレイを抱き上げると、とっとと家路を急いだ。
ヨコザワ家——。
昔ながらの大きな農家の邸宅である。
家に着くと、ノリヒトは声を張り上げた。
「ただいまー! ヨリコ、ちと手ぇ貸してくれ」
「なんだい、この忙しいのに!」
台所からノリヒトの妻、ヨリコの声がした。言葉とは裏腹にパタパタとスリッパを鳴らして玄関までやってくる。
「——りんごジャムの瓶詰で忙しいってのに、何の騒ぎだい! ……おや、その子どこの子? かわいいねぇ」
「話は後だ! 雨ん中、梅の木の下でピーピー泣いてたんで拾ってきた。風邪を引いたら厄介だから風呂に入れる。風呂沸いてるか?」
「拾ってきた、って……犬や猫じゃないんだよ!」
文句を言いながらも、手はミレイの靴を脱がしにかかっている。さすが阿吽の呼吸、ダテにノリヒトの妻はやってない。
「おばさん、ありがとう」
「おや、いい子だね。こんなに冷えちまって……このおじさんがいいって言うまでお風呂に入っているんだよ」
「うん!」
すっかりミレイを気に入って、ヨリコはノリヒトと大騒ぎしながら服を脱がせて、総檜の風呂に入れてやった。
その間、ミレイの服はヨリコが洗って乾かしてくれる。
「このお風呂、いい匂いするね!」
「まぁな、おじさんの自慢の風呂だ。檜の風呂に湯を張ると、お湯が柔らかくなるんだよ」
「お湯って、毛布なの?」
ミレイの子どもらしい発想に、ノリヒトが吹き出す。
「カッカッカ、ちげぇねぇ。大当たりだ」
「カッカッカ!」
「そうだ、ミレイも男なら、どんと笑え」
脱衣所で会話を聞いていたヨリコが、そっと目頭を拭った。
夫妻には子どもがいなかったのである――。
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