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第26話『新しいマンション』
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ポピー通りから主街道へ抜けて、一区画北上しラベンダー通りへ右折する。
そこから五区画東へ進むと、南北に走るコンフリー通りに出る。
左折して30メートルのところに、五階建てのマンション『プリズムサンキャッチャー』はある。
メーテスはどの建築物も、赤茶の屋根にクリーム色の壁で統一されているが、ここも同様だった。
通りに面しているので、利便性も文句なしの物件だ。
「着いたー!」
車から降りるなり、オリーブは声を上げ万歳した。
タイラーも真昼時の太陽に目を細めながら、マンションを見上げ腰に手を当てて言った。
「よし、まずは管理人に挨拶だ」
「うん!」
オリーブが一人で行くことになり、マンションの一階左側にある管理人室へのドアを開けた。
「こんにちはー!」
中には管理人室の若い女性事務員がいて、席を立ってやってきた。
「はい、いらっしゃいませ」
「あの、今日引っ越してきた、オリーブ・キングです」
「オリーブ……キング様?」
あっ、とオリーブは気づいた。うっかり旧姓を名乗ってしまっていた。
パパッと手で払いながら言い直す。
「ごめんなさいっ、籍を入れたばかりで……オリーブ・クリムゾンでした」
女性事務員は目を真ん丸にして、派手に吹き出した。
「も、申し訳ありません。お客様があまりにも初々しくていらっしゃるので楽しくなって。失礼しました、オリーブ・クリムゾン様。確かに本日引っ越しのご予定と伺っております。ただいま鍵をお渡ししますね」
赤っ恥はかいたが、どうやらこのマンションに早くも仲良くなれそうな人を発見できた。
本人の確認と入居手続きの後、オリーブはタイラーのところへ戻った。
「どうだった?」
尋ねるタイラーに、オリーブは満面の笑みで言った。
「ほら、これが新居の鍵よ!」
「ああ、じゃあ早速荷物を運ぶか!」
「あ、そうそう。荷物運搬専用エレベーターが北側にあるって。そこに車を回して」
「わかった」
二人でトラックに乗り込んで、マンションの北側へ車で向かうと、大型トラックでも乗り入れられるような道幅の道路があった。
「なんだろうね、この落差」
「収入が高い人のためのマンションなんだろうな」
「東街なのにね」
「今じゃ東街の住人の方が潤ってるからな」
バックで入りながら、他愛もない会話を交わす。
エレベーターの前で停車する。
二人とも車から降りて、まずは荷台から協力して荷物を降ろす。
といっても……あくまでも重いフリだ。
万世の秘法の鳥俯瞰者たる彼らは、テレキネシス(念動力)が使える。それを使えば重さなどないに等しいが、もちろん公には秘密なので、演技が必要になるのだ。
実際は全然重くないのに、さも重そうに運ぶというのは難儀なことではある。
引っ越しにはうってつけの小春日和に、二人は笑顔が絶えなかった。
これからの楽しい生活を暗示するように、マンションの住人が手伝いを申し出てくれた。
そこから五区画東へ進むと、南北に走るコンフリー通りに出る。
左折して30メートルのところに、五階建てのマンション『プリズムサンキャッチャー』はある。
メーテスはどの建築物も、赤茶の屋根にクリーム色の壁で統一されているが、ここも同様だった。
通りに面しているので、利便性も文句なしの物件だ。
「着いたー!」
車から降りるなり、オリーブは声を上げ万歳した。
タイラーも真昼時の太陽に目を細めながら、マンションを見上げ腰に手を当てて言った。
「よし、まずは管理人に挨拶だ」
「うん!」
オリーブが一人で行くことになり、マンションの一階左側にある管理人室へのドアを開けた。
「こんにちはー!」
中には管理人室の若い女性事務員がいて、席を立ってやってきた。
「はい、いらっしゃいませ」
「あの、今日引っ越してきた、オリーブ・キングです」
「オリーブ……キング様?」
あっ、とオリーブは気づいた。うっかり旧姓を名乗ってしまっていた。
パパッと手で払いながら言い直す。
「ごめんなさいっ、籍を入れたばかりで……オリーブ・クリムゾンでした」
女性事務員は目を真ん丸にして、派手に吹き出した。
「も、申し訳ありません。お客様があまりにも初々しくていらっしゃるので楽しくなって。失礼しました、オリーブ・クリムゾン様。確かに本日引っ越しのご予定と伺っております。ただいま鍵をお渡ししますね」
赤っ恥はかいたが、どうやらこのマンションに早くも仲良くなれそうな人を発見できた。
本人の確認と入居手続きの後、オリーブはタイラーのところへ戻った。
「どうだった?」
尋ねるタイラーに、オリーブは満面の笑みで言った。
「ほら、これが新居の鍵よ!」
「ああ、じゃあ早速荷物を運ぶか!」
「あ、そうそう。荷物運搬専用エレベーターが北側にあるって。そこに車を回して」
「わかった」
二人でトラックに乗り込んで、マンションの北側へ車で向かうと、大型トラックでも乗り入れられるような道幅の道路があった。
「なんだろうね、この落差」
「収入が高い人のためのマンションなんだろうな」
「東街なのにね」
「今じゃ東街の住人の方が潤ってるからな」
バックで入りながら、他愛もない会話を交わす。
エレベーターの前で停車する。
二人とも車から降りて、まずは荷台から協力して荷物を降ろす。
といっても……あくまでも重いフリだ。
万世の秘法の鳥俯瞰者たる彼らは、テレキネシス(念動力)が使える。それを使えば重さなどないに等しいが、もちろん公には秘密なので、演技が必要になるのだ。
実際は全然重くないのに、さも重そうに運ぶというのは難儀なことではある。
引っ越しにはうってつけの小春日和に、二人は笑顔が絶えなかった。
これからの楽しい生活を暗示するように、マンションの住人が手伝いを申し出てくれた。
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