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第27話『年は暮れて……』
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とある聖灯の十二月の風景——。
例によって集会所に集まったNWSの面々は、交替で生産修法の仕事の勤しんでいる。
年末が近づいて身も心も浮き立つものが多いのか、シフトじゃないメンバーも来ていて人いきれだ。
あちこちでたむろして話に興じる者、気もそぞろで生産修法をする者、ボードゲームを始める者、ピリピリしながら溜まった報告書に目を通す者、好きなお茶を淹れるのに夢中になる者……。
どの顔も期待で輝いていた。
西側の童話コーナーでは、ノリヒトがローテーブルを挟んで、あの『梅の木さま』の童子と向き合って交渉している。
「ミレイを引き受けたのはいいが、近所に遊び相手になるようなガキがいねぇんだよ。トーマスとルイんとこのガキはもうデカくてな……。そこでだ、ものは相談だが童子さん。ミレイにぴったりくるような遊び相手を紹介してもらえねぇかな?」
童子はニコニコして言った。
「わかりました、どんなお子さんがいいですか?」
「そうだな。贅沢は言わねぇから、面倒見のいいガキ大将がいい。ちょっとくらい羽目を外したって、俺の胆は潰れねぇからよ」
「んな子ども、絶滅危惧種だぜ」
近くで聞いていたポールが揶揄した。
「なんだよ、文句あんのか?」
ノリヒトが絡むと、ポールは言った。
「ヤスヒコさんの胆が潰れたらどうすんだよ!」
ミレイの祖父、ヤスヒコの持病の心臓病を気にする。
「わかってねぇなぁ。じいさんはミレイにもっと子どもらしく活発になってもらいてぇんだよ」
「八割方そうだとして、ミレイはあの無邪気さと繊細さがいいんじゃないの。童子さん、ミレイと気の合う優しい男の子も仲間に入れたって」
「言うじゃねぇか。それならな、ずるっこいやつも欲しいぜ。ミレイは温室育ちだからな。こすからい思いもしておかないとよ」
「何でそんなはみ出しっ子セレクトなわけ? もっと普通にさ……」
「いーや、清濁併せ飲んでこその人物だぜ。もやしっ子セレクトじゃ未来が先細りじゃねぇか。ミレイをなーんにもできない青瓢箪にする気かよ」
「そこまで言うか。せっかく俺の子どもが出来たら遊ばせようと思ったのに」
「おう、遊ばせてやるぜ。手のつけられないお転婆娘を連れてこい」
「何で娘限定なんだよ」
「予言してもいいぜ。あんたらに初めての子どもは、絶対女の子だ」
「はぁ? 根拠は」
「あんたの精の方が強い。二番目からは尻に敷かれてその限りじゃねぇがな」
「それなら男の子じゃん」
「男が強い場合は女の子が生まれんだよ! 勉強が足らねぇぞ」
「悪かったなぁっ!」
ケンカ寸前の二人を見て、童話コーナー側の円卓の席にいたオリーブが言った。
「ポールもノリヒトさん相手じゃ、舌先三寸とはいかないみたいね」
タイラーがブラックコーヒーを一口飲んで言った。
「男にはそういう相手も必要だぜ」
「タイラーにもいるの?」
「俺の場合はアインスさんだな。師匠と言ってもいいくらいの人だし」
「ふーん」
「それより、降誕祭のプレゼントは何がいい?」
「ええっ、いいよ。定番のアクセサリーでもないしさ」
「興味はないのか」
「見てるのは好きだよ。でも、ああいうかわいさは若い子に譲るわ」
タイラーはオリーブのプレゼントをユニセックスなアクセサリーに決めた。
「私のことより、ご実家へのプレゼントを決めなきゃでしょ? ご両親のご趣味は?」
「親父や兄貴はステーショナリーがいいだろうな。あとでアルティスタ街をのぞくか。お袋はこの時期、ショールが手放せないんだ」
「了解、パスクア織の見本を当たってみるわ。マリエルさんへのプレゼントはもう決まってるんだ」
「へぇ」
タイラーの妹、マリエルとオリーブは少し前から文通をしていた。
「アバンダンスの焼き菓子と、雑記帳に万年筆。筆まめだからそういうのはいくらあってもいい、って手紙に書いてあったの」
「もっぱら押しかける求婚者を退けるためのまマメさなんだがな」
「引く手あまただね、って書いたら、興味ない人に返事書くのって修行に近いんだよ、だって」
「あいつらしいな。好きなやつはいないのかな」
「内緒——!」
いるんだな、とタイラーは確信した。
オリーブは隠し事のできる器用な性格を持ち合わせていないのである。
例によって集会所に集まったNWSの面々は、交替で生産修法の仕事の勤しんでいる。
年末が近づいて身も心も浮き立つものが多いのか、シフトじゃないメンバーも来ていて人いきれだ。
あちこちでたむろして話に興じる者、気もそぞろで生産修法をする者、ボードゲームを始める者、ピリピリしながら溜まった報告書に目を通す者、好きなお茶を淹れるのに夢中になる者……。
どの顔も期待で輝いていた。
西側の童話コーナーでは、ノリヒトがローテーブルを挟んで、あの『梅の木さま』の童子と向き合って交渉している。
「ミレイを引き受けたのはいいが、近所に遊び相手になるようなガキがいねぇんだよ。トーマスとルイんとこのガキはもうデカくてな……。そこでだ、ものは相談だが童子さん。ミレイにぴったりくるような遊び相手を紹介してもらえねぇかな?」
童子はニコニコして言った。
「わかりました、どんなお子さんがいいですか?」
「そうだな。贅沢は言わねぇから、面倒見のいいガキ大将がいい。ちょっとくらい羽目を外したって、俺の胆は潰れねぇからよ」
「んな子ども、絶滅危惧種だぜ」
近くで聞いていたポールが揶揄した。
「なんだよ、文句あんのか?」
ノリヒトが絡むと、ポールは言った。
「ヤスヒコさんの胆が潰れたらどうすんだよ!」
ミレイの祖父、ヤスヒコの持病の心臓病を気にする。
「わかってねぇなぁ。じいさんはミレイにもっと子どもらしく活発になってもらいてぇんだよ」
「八割方そうだとして、ミレイはあの無邪気さと繊細さがいいんじゃないの。童子さん、ミレイと気の合う優しい男の子も仲間に入れたって」
「言うじゃねぇか。それならな、ずるっこいやつも欲しいぜ。ミレイは温室育ちだからな。こすからい思いもしておかないとよ」
「何でそんなはみ出しっ子セレクトなわけ? もっと普通にさ……」
「いーや、清濁併せ飲んでこその人物だぜ。もやしっ子セレクトじゃ未来が先細りじゃねぇか。ミレイをなーんにもできない青瓢箪にする気かよ」
「そこまで言うか。せっかく俺の子どもが出来たら遊ばせようと思ったのに」
「おう、遊ばせてやるぜ。手のつけられないお転婆娘を連れてこい」
「何で娘限定なんだよ」
「予言してもいいぜ。あんたらに初めての子どもは、絶対女の子だ」
「はぁ? 根拠は」
「あんたの精の方が強い。二番目からは尻に敷かれてその限りじゃねぇがな」
「それなら男の子じゃん」
「男が強い場合は女の子が生まれんだよ! 勉強が足らねぇぞ」
「悪かったなぁっ!」
ケンカ寸前の二人を見て、童話コーナー側の円卓の席にいたオリーブが言った。
「ポールもノリヒトさん相手じゃ、舌先三寸とはいかないみたいね」
タイラーがブラックコーヒーを一口飲んで言った。
「男にはそういう相手も必要だぜ」
「タイラーにもいるの?」
「俺の場合はアインスさんだな。師匠と言ってもいいくらいの人だし」
「ふーん」
「それより、降誕祭のプレゼントは何がいい?」
「ええっ、いいよ。定番のアクセサリーでもないしさ」
「興味はないのか」
「見てるのは好きだよ。でも、ああいうかわいさは若い子に譲るわ」
タイラーはオリーブのプレゼントをユニセックスなアクセサリーに決めた。
「私のことより、ご実家へのプレゼントを決めなきゃでしょ? ご両親のご趣味は?」
「親父や兄貴はステーショナリーがいいだろうな。あとでアルティスタ街をのぞくか。お袋はこの時期、ショールが手放せないんだ」
「了解、パスクア織の見本を当たってみるわ。マリエルさんへのプレゼントはもう決まってるんだ」
「へぇ」
タイラーの妹、マリエルとオリーブは少し前から文通をしていた。
「アバンダンスの焼き菓子と、雑記帳に万年筆。筆まめだからそういうのはいくらあってもいい、って手紙に書いてあったの」
「もっぱら押しかける求婚者を退けるためのまマメさなんだがな」
「引く手あまただね、って書いたら、興味ない人に返事書くのって修行に近いんだよ、だって」
「あいつらしいな。好きなやつはいないのかな」
「内緒——!」
いるんだな、とタイラーは確信した。
オリーブは隠し事のできる器用な性格を持ち合わせていないのである。
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