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第26話『出逢えてよかった』
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ポールたちが帰った後、やっとソファーの上の荷物を片付けたタイラーたちは、今日の余韻に浸っていた。
「今日は本当にいろいろあったね」
「そうだな……」
「もう九時か……近所迷惑だから、片付けは明日以降にしないと」
「ポールが二、三日休みとれば、って言ってたがどうする?」
「仕事休むほど荷物があるわけじゃないわよ。少しずつやるから大丈夫」
「そうか」
「タイラーこそ、いろいろありすぎたから、心を整理する時間が欲しいんじゃないの?」
「いや、休みなんて取ったら、鬼の霍乱だって噂される。ポール辺りが意味ありげに情報通になって――考えただけでもゾッとする」
プーッとオリーブが吹き出した。
「リアリティあるだろ」
「タイラーにしてはね。でも、ポールって案外気の利く人だよ。トゥーラ一人だったら、こっちからお願いしない限り今日は来ないもん。常々、遠慮深いなぁとは思ってたけど、ポールは逆に痒い所に手が届く人だから、トゥーラの気兼ねを見越しちゃうんでしょうね。どっちかというと、ついて行かなくちゃいけないトゥーラが大変な間柄ね」
「なるほど。君は俺と付き合って、大変だと思うことはないのか?」
「ううん、やっぱり上手だなって思うよ。間の取り方とかエスコートの仕方とか。私が普通の女の子みたいに、当たり前に恋してたら有頂天になってたろうな、って時々考えちゃう」
「……オリーブは普通の女の子以上に、女らしいところがあるよ」
「ええーっ、そ、そう? どこが」
「魂が輝いてるっていうのかな。人に楽しそうだ、仲良くなりたいって行動を起こさせるところがある。とても自然で健やかな魅力を振り撒いてる。そこがかわいいんだけどな」
「お、臆面もなくそんなこと言わないでよ。恥ずかしいーっ!」
「ご所望のようなので、お伝えしたんですが」
「もうっ!」
ポカポカとタイラーの腕を叩くオリーブ。
それが嬉しくて仕方ないタイラー。
二人で笑い合った後、タイラーは真剣に言った。
「オリーブ」
「なに?」
「……会えてよかった」
万感の思いを込めて、そう告げた。
「俺が周りに築いた壁を、君が気づいて破壊してくれなかったら、俺は幸せから遠ざかったままだった。君がいたからNWSでも浮かずに済んだ。こうしていられるのも、君のおかげだと思ってる。ありがとう」
「なんか一瞬、自分が怪獣になった気がしたんですけど」
今度はタイラーが吹き出した。
「気持ちよく壁をぶっ壊すところはまさに怪獣だな」
「言ったなぁっ?」
「何度も来襲されて脅威を感じていたら、目の前で天使に変身してびっくりだよ」
「そうよ! 天使だって目の前を不幸せが遮ったら、迷わずつるはしを手に持つんだからね」
「君は一蹴りだけどな」
夜は更けていった。
「今日は本当にいろいろあったね」
「そうだな……」
「もう九時か……近所迷惑だから、片付けは明日以降にしないと」
「ポールが二、三日休みとれば、って言ってたがどうする?」
「仕事休むほど荷物があるわけじゃないわよ。少しずつやるから大丈夫」
「そうか」
「タイラーこそ、いろいろありすぎたから、心を整理する時間が欲しいんじゃないの?」
「いや、休みなんて取ったら、鬼の霍乱だって噂される。ポール辺りが意味ありげに情報通になって――考えただけでもゾッとする」
プーッとオリーブが吹き出した。
「リアリティあるだろ」
「タイラーにしてはね。でも、ポールって案外気の利く人だよ。トゥーラ一人だったら、こっちからお願いしない限り今日は来ないもん。常々、遠慮深いなぁとは思ってたけど、ポールは逆に痒い所に手が届く人だから、トゥーラの気兼ねを見越しちゃうんでしょうね。どっちかというと、ついて行かなくちゃいけないトゥーラが大変な間柄ね」
「なるほど。君は俺と付き合って、大変だと思うことはないのか?」
「ううん、やっぱり上手だなって思うよ。間の取り方とかエスコートの仕方とか。私が普通の女の子みたいに、当たり前に恋してたら有頂天になってたろうな、って時々考えちゃう」
「……オリーブは普通の女の子以上に、女らしいところがあるよ」
「ええーっ、そ、そう? どこが」
「魂が輝いてるっていうのかな。人に楽しそうだ、仲良くなりたいって行動を起こさせるところがある。とても自然で健やかな魅力を振り撒いてる。そこがかわいいんだけどな」
「お、臆面もなくそんなこと言わないでよ。恥ずかしいーっ!」
「ご所望のようなので、お伝えしたんですが」
「もうっ!」
ポカポカとタイラーの腕を叩くオリーブ。
それが嬉しくて仕方ないタイラー。
二人で笑い合った後、タイラーは真剣に言った。
「オリーブ」
「なに?」
「……会えてよかった」
万感の思いを込めて、そう告げた。
「俺が周りに築いた壁を、君が気づいて破壊してくれなかったら、俺は幸せから遠ざかったままだった。君がいたからNWSでも浮かずに済んだ。こうしていられるのも、君のおかげだと思ってる。ありがとう」
「なんか一瞬、自分が怪獣になった気がしたんですけど」
今度はタイラーが吹き出した。
「気持ちよく壁をぶっ壊すところはまさに怪獣だな」
「言ったなぁっ?」
「何度も来襲されて脅威を感じていたら、目の前で天使に変身してびっくりだよ」
「そうよ! 天使だって目の前を不幸せが遮ったら、迷わずつるはしを手に持つんだからね」
「君は一蹴りだけどな」
夜は更けていった。
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