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第27話『グロリアスポスタリティの風景』
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童話の里内、グロリアスポスタリティ拠点ブルーブリーズブランド工房。
里の中には団体活動するようなってから、集会所よりはコンパクトな作業所がいくつかあり、ここに年配の女性たちで構成されたグロリアスポスタリティの工房がある。
世界の大変革に向けて、急ピッチで用意することになり、その一部を
グロリアスポスタリティが請け負っている。
仮代表のフミナ・アスペクターは、NWS女性陣の知恵を拝借して、ブルーブリーズブランドを起ち上げた。
ブルーブリーズとはオオイヌノフグリを改名した名前で、オリーブが読んだことがある小説からいただいた。
ついでに、NWS女性メンバー二十二名を迎えて、デザインから染色、シンボルの刺繍に至るまで手作りしている。
工房内は年末の追い込みで、足踏みミシンの音や生地をカッティングする音、仕上げアイロンの音など、とても賑やかだ。
クリオ(NWS・9班)は染色工程を任されていて、乾燥ハーブを使って綿生地を染色していた。
柔らかな風合いのハーブ染めは、様々な色調の黄色を生み出している。
同じ黄色でもサフランのように黄味の強い色、透明感のある黄色、灰色がかった黄色などバリエーションも豊かだ。
外に設えた物干し台に干して、冬の寒風に晒すとワントーン明るくなるところがこの仕事の醍醐味だ。
「よし、と」
午前の部最後の染生地を洗濯ばさみで止めて、クリオはパタパタ風に翻る生地を満足そうに眺めた。
「首尾は上々ね、クリオちゃん」
そこへフミナが顔を出した。
「フミナさん! 休憩ですか?」
「ええ、ちょっとね。クリオちゃんにお話があって」
「?」
「ちょっと寒いけど、ベンチに座りましょうか」
「はい……」
二人はすぐ近くの手作りベンチに腰掛けた。
フミナが話してくれるのを待つクリオ。
フミナはこう切り出した。
「もうすぐ聖人降誕祭ね……クリオちゃんは何か予定があるんじゃないかと思って」
「いいえ、特には……」
フミナはゆっくり頷いた。
「先月出してもらったシフト表で、NWSではお休みだから、こちらに来てもらってるみんなもお休みしたいだろうと思って。シフト表も祝日にしておいたのだけど、クリオちゃんだけがイブと当日二日とも丸がついていたのでね。それで聞いてみようと思ったのよ」
「……ご迷惑でしたか?」
「いえいえ、とんでもない。やる気があって感心だけれど、寂しがる人がプライベートでいるんじゃないかしらと。老婆心ですけどね」
「そうですか……お気遣いいただいてありがとうございます。でも……家族とディナーを楽しむ以外は本当に予定がなくて。それに、こちらでのお仕事が性に合っていて楽しいので、させていただけたら嬉しいです」
「そう? それならお願いしますね」
「はい!」
「それから……」
と言って、フミナはエプロンから小袋を取り出した。そして、クリオに手渡してそっと両手で包んだ。
「これは私たちから。他のみんなのもあるのでね、気にしなくていいのだけど。クリオちゃんにはありがとうの気持ちを込めて、一つおまけがあるのよ。開けてごらんなさい」
「はい、では失礼して……」
小袋の折られた口を開いて、中身を取り出してみる。
「あっ」
中には小さなハンドクリームと編み物で作られたコサージュ、そしてダイヤーズカモミールの種の袋が入っていた。
「前にクリオちゃんが「ダイヤーズカモミールで染めた色が一番好き」と言っていたのを思い出してね。特別手に入りにくいとかいう種ではないのだけど、お庭で育ててもらえないかと思って」
「あ、ありがとうございます! 春になったら大切に種まきします」
クリオは感激してプレゼントを押し抱いた。
「まぁまぁ、喜んでもらえてうれしいわ。ハツメさんとも話し合って、早く帰れるようにしますからね」
ハツメ・エターナリスト。
九十歳を超えるグロリアスポスタリティの代表。
丸眼鏡が似合うおばあちゃんだが、足踏みミシンが恐ろしく速い。
「はい、一生懸命頑張りますね!」
「はいはい、お手柔らかにね」
包まれた両手はポカポカと温かかった。
里の中には団体活動するようなってから、集会所よりはコンパクトな作業所がいくつかあり、ここに年配の女性たちで構成されたグロリアスポスタリティの工房がある。
世界の大変革に向けて、急ピッチで用意することになり、その一部を
グロリアスポスタリティが請け負っている。
仮代表のフミナ・アスペクターは、NWS女性陣の知恵を拝借して、ブルーブリーズブランドを起ち上げた。
ブルーブリーズとはオオイヌノフグリを改名した名前で、オリーブが読んだことがある小説からいただいた。
ついでに、NWS女性メンバー二十二名を迎えて、デザインから染色、シンボルの刺繍に至るまで手作りしている。
工房内は年末の追い込みで、足踏みミシンの音や生地をカッティングする音、仕上げアイロンの音など、とても賑やかだ。
クリオ(NWS・9班)は染色工程を任されていて、乾燥ハーブを使って綿生地を染色していた。
柔らかな風合いのハーブ染めは、様々な色調の黄色を生み出している。
同じ黄色でもサフランのように黄味の強い色、透明感のある黄色、灰色がかった黄色などバリエーションも豊かだ。
外に設えた物干し台に干して、冬の寒風に晒すとワントーン明るくなるところがこの仕事の醍醐味だ。
「よし、と」
午前の部最後の染生地を洗濯ばさみで止めて、クリオはパタパタ風に翻る生地を満足そうに眺めた。
「首尾は上々ね、クリオちゃん」
そこへフミナが顔を出した。
「フミナさん! 休憩ですか?」
「ええ、ちょっとね。クリオちゃんにお話があって」
「?」
「ちょっと寒いけど、ベンチに座りましょうか」
「はい……」
二人はすぐ近くの手作りベンチに腰掛けた。
フミナが話してくれるのを待つクリオ。
フミナはこう切り出した。
「もうすぐ聖人降誕祭ね……クリオちゃんは何か予定があるんじゃないかと思って」
「いいえ、特には……」
フミナはゆっくり頷いた。
「先月出してもらったシフト表で、NWSではお休みだから、こちらに来てもらってるみんなもお休みしたいだろうと思って。シフト表も祝日にしておいたのだけど、クリオちゃんだけがイブと当日二日とも丸がついていたのでね。それで聞いてみようと思ったのよ」
「……ご迷惑でしたか?」
「いえいえ、とんでもない。やる気があって感心だけれど、寂しがる人がプライベートでいるんじゃないかしらと。老婆心ですけどね」
「そうですか……お気遣いいただいてありがとうございます。でも……家族とディナーを楽しむ以外は本当に予定がなくて。それに、こちらでのお仕事が性に合っていて楽しいので、させていただけたら嬉しいです」
「そう? それならお願いしますね」
「はい!」
「それから……」
と言って、フミナはエプロンから小袋を取り出した。そして、クリオに手渡してそっと両手で包んだ。
「これは私たちから。他のみんなのもあるのでね、気にしなくていいのだけど。クリオちゃんにはありがとうの気持ちを込めて、一つおまけがあるのよ。開けてごらんなさい」
「はい、では失礼して……」
小袋の折られた口を開いて、中身を取り出してみる。
「あっ」
中には小さなハンドクリームと編み物で作られたコサージュ、そしてダイヤーズカモミールの種の袋が入っていた。
「前にクリオちゃんが「ダイヤーズカモミールで染めた色が一番好き」と言っていたのを思い出してね。特別手に入りにくいとかいう種ではないのだけど、お庭で育ててもらえないかと思って」
「あ、ありがとうございます! 春になったら大切に種まきします」
クリオは感激してプレゼントを押し抱いた。
「まぁまぁ、喜んでもらえてうれしいわ。ハツメさんとも話し合って、早く帰れるようにしますからね」
ハツメ・エターナリスト。
九十歳を超えるグロリアスポスタリティの代表。
丸眼鏡が似合うおばあちゃんだが、足踏みミシンが恐ろしく速い。
「はい、一生懸命頑張りますね!」
「はいはい、お手柔らかにね」
包まれた両手はポカポカと温かかった。
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