好きで好きで苦しいので、出ていこうと思います

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3話(攻め視点②)

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「わかっているだろうな。」

 似ても似つかない2人が出ていって、父が放った一言。
 わかっているだろうな?分かりたくなくても分かってしまうだろう。

「...わかってる。」

 わかってても心が痛い。俺がどんなに嫌と、結婚しないと言い張ったところでこの結婚は進んでしまう。

「お前は、病院の彼女にお別れを言うんだな。」

 父は俺の手をぎゅっと握り申し訳なさそうに、でもどこか欲の見えた顔で俺を見つめた。



 "病室の彼女"

 それは俺の婚約者。いや、婚約者だったと言うべきだろう。生まれた時から一緒に居て、俺も彼女もこの先変わらずずっと一緒に入れると思っていた。

 いきなりだった。

「きゃー!!!」

 屋敷の中で鳴り響く甲高い侍女の声。その横に青白い顔で倒れている最愛の人。

「お嬢様が、、お嬢様が!!」

 さっきまで笑っていたのに、少し目を離した間になぜ。

「きゅ、救急車を呼べ!!誰か!!」


 それから何時間たっただろうか。救急車に乗っていった彼女は今、冷たい手術室にいる。
 彼女を待つ時間が、永遠に感じる。息の音も目立つようなシンと静まり返った待合室では、誰も喋ろうとしない。

コンコン

「失礼します。手術が終わりました」

「あの子は!!!あの子は無事なの!?」

 彼女の母が声を荒らげる。涙を流し、看護師に近づく。

「一命を取り留めました。病室にご案内致します。」

 淡々と、しかしどこか優しげな声で看護師は言った。彼女の母の涙は止まらない。

ー505室

 こちらになります。と案内された部屋は一人部屋で、書斎がついていたりとなんとも豪華な部屋だった。特別室というものだろうか。

 その中で、きらびやかな部屋の中で唯一無機質な空間。何本もの管に繋がれた彼女。ベッドの周りはよく分からない機械が沢山ある。
 心臓の動きを見る機械だろうか。脈を打っている。

「あぁ、どうしてこんな...」

 未だ目を覚まさない管に繋がれた彼女は、一命を取り留めたなんて言葉は思いつかなかった。

「今、危険な状態にあります。一命は取り留めました。ですがそれは応急処置が早く、助かったというものです。急激に体調が変化してしまうかもしれないということを、肝に銘じておいてください。」

 看護師の言葉は重い。

 彼女はただ毎日、屈託のない日々を過ごし笑っていただけなのに、どうしてこんな目に遭わなければならないのか。

「彼女の、ここまでになった原因は、なんですか。」

 どこか聞いてはいけない雰囲気がした。だが、聞かない訳にも行かない。医者も看護師も、最初に原因を言わないのに違和感があった。

 考えたくない、汚い世界でよくある原因。

「それは...」

 看護師が言葉を濁す。そして、それを制止する医者。

「...今の時代、考えられませんが。倒れられて命の危険に陥った原因は、毒によるものです。」

 ー毒。

「そして、一命は取り留めましたが、脳の神経の一部が再起不能となっています。脳は繊細です。治療で治るかどうかも、いまは分かりません。」

 一体彼女が何をしたというのだろう。家の宝と、蝶よ花よと育てられた一人娘が。どうしてこんな仕打ちを受けているのだろうか。

 彼女を妬む人の仕業か、金につられた使用人の仕業か。
 どちらにせよ、俺の大切な人は何者かが入れた毒により、こんな冷たい何本もの管に繋がれているのだ。

 この世界ではよくある事だった。現代にせよ、俺たちのいる世界では想像もつかないほど膨大な金が無数に動いている。
 金で買えないものはないし、金さえあれば強力な毒でさえ手に入ってしまうのだ。そして、協力者でさえも。

 ごめんな、どうしてこうなることを予測できなかったのか。君といる時間があまりにも楽しすぎて、ここが汚い世界とかけ離れすぎていて忘れていたのかも知れない。

「俺が、犯人を見つけるから。」

 君を一生守ると、愛すと誓うから。
 管が繋がっていようが、君の神経が壊れてしまっていようが、俺は君が好きだから。
 だからどうか、目を覚ましてくれ。



それが、俺が何があってもただ1人、彼女だけを愛すと誓った日だった。





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お久しぶりです。リアルの忙しさを理由の小説かけていませんでした。これから少しずつまた書き始めます。

※病気に関しては詳しくないので適当です。
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