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17.反応
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反応
「...そうか。」
エティーナの話のあと、ルーカスはそれだけ言った。彼に、驚いた様子はなく、ただいつもの幼いような笑顔とは打って変わって真剣な顔で顎に手を当てていた。
「いくつか質問してもいいか?」
「(ええ。)」
「それはいつの事だ?」
「(...今からちょうど1日前、かしら。)」
「想像以上に最近だな。でも、君はこの世界に随分と馴染んでいるな?」
「(私がエティーナに入った時に、この世界で生きた彼女の記憶もあったの。エティーナの書いた日記も読んだわ。)」
「ふむ...。」
ルーカスはまだ真剣な顔のまま考え込んだ。こうして見ると、年相応に大人びていて、その美しい容姿もまた変わった輝きを持っていた。
「前の世界の君は、どうやってこちらに来たんだ?」
「(分からない。...けど、向こうで私も自殺したわ。エティーナは睡眠薬とナイフで亡くなったみたいだったけど、私は海に飛び込んだ。)」
「...前の世界で君が死んだ理由を聞いてもいいか?」
エティーナはギュッと手を握りしめた。脳裏に嫌なものがフラッシュバックしそうになったのだ。しかし、その手の上に男らしいルーカスの大きい手が乗る。
ルーカスはいつのまにかエティーナの隣に座って、その手を握っていた。そして、青い瞳でエティーナの戸惑いに揺れる瞳をまっすぐ見つめ返し、エティーナを安心させようと笑う。
「分かった。大丈夫だ。...話さなくてもいい。俺に、少し見せてくれるだけでいい。」
そう言ってルーカスは、エティーナの額と己の額を合わせる。急に近づいた顔に、エティーナは身を固くした。
「緊張しなくていい。ただ、君の全てを曝け出してくれ。痛いことはしない。優しくする。」
「ちょ、ちょっと、あなた...その、言い方は...。」
「何か違ったか?」
「.........、いいわ。勝手にしてちょうだい。」
エティーナは自分ばかりがここまで意識するのが負けた気になって、おとなしく目を瞑った。
なんだか、今なら前世の旦那を思い出してもどうでもいい気がしてきた。
だって、そいつはルーカスのように顔が綺麗でもなければ、純粋でもなかったのだから。死んでまであんな野郎に心を乱される筋合いはないのだ。
ルーカスはエティーナの脳内を直接見ているようだった。魔法師はそんなことまでできてしまうのかとエティーナは感心した。
「...ふむ、これが前世か。前世の君は黒髪なんだな。綺麗だ。...だが、顔色が悪いな?働きすぎだ。ちゃんと休んでほしいんだが...。」
「...ふふっ。」
エティーナの前世を見ているルーカスは、もう過ぎた事なのに、真剣に心配していた。それがむず痒くてエティーナは笑った。
「(...きっとこんな人が近くにいたら、何かが変わっていたでしょうね。)」
「ん?何か言ったか?...ああ!倒れたぞ!?君、やっぱり働きすぎなんだ!!おい!早く治癒師を呼べ...ん?」
おそらく夏菜子が旦那となる男と出会った場面を見ているのだろう。
「.........................。」
そして、なぜかそこからルーカスは黙りこくった。
「(...ちょっと?)」
心で語るかけても、反応はない。
ルーカスはエティーナの手を握ったまま、額を合わせて目を瞑ったまま微動だにしなくなったのだ。エティーナが先に目を開けて、ルーカスの閉じられた目を見る。
「(まつ毛が長いわね...。)」
なんてくだらない事を考えていると、とある事を思い出した。
「あ!!!!」
エティーナが大声をだす。
「(ちょ、ちょっと待って!?どこまで見てるの!?ちょっと!!)」
夏菜子は子供を産んだ。
だから...勿論そういうこともしているわけで...。
流石に他人に自分の夜の情事を除かれるのは何か大事なものを失う気がして、エティーナは額を離そうと暴れる。
そんなエティーナの腰と後頭部をルーカスがガッと掴んだ。それによって一気に体が密着する。
「ひゃあ!!...ちょ、ねぇ、やめて、離してちょうだい...!ねぇ!!」
段々と顔が赤くなるエティーナ。だがその声はルーカスに届かない。
年上の男性に力で勝てるはずもなく、エティーナはとうとう諦めて墓場に埋まる妄想を始めた。
そんなエティーナの事など知らないルーカスは、エティーナの腰をまた強く抱き寄せた。そこには普段の爽やかさなんてものは無く、あるのは野生じみた強引さだった。
そして、ルーカスはやっと口を開く。
「...なんだ、この男は?」
それはルーカスの声とは思えないほど低く、夜の静かな部屋に獣の唸り声のように響いた。
***
ふと思ったのですが、他人の体に意識だけ入り込んだ場合、その前の生は“前世”なのでしょうか。
一応細かいことは気にせず読んでいただけると嬉しいです。
「...そうか。」
エティーナの話のあと、ルーカスはそれだけ言った。彼に、驚いた様子はなく、ただいつもの幼いような笑顔とは打って変わって真剣な顔で顎に手を当てていた。
「いくつか質問してもいいか?」
「(ええ。)」
「それはいつの事だ?」
「(...今からちょうど1日前、かしら。)」
「想像以上に最近だな。でも、君はこの世界に随分と馴染んでいるな?」
「(私がエティーナに入った時に、この世界で生きた彼女の記憶もあったの。エティーナの書いた日記も読んだわ。)」
「ふむ...。」
ルーカスはまだ真剣な顔のまま考え込んだ。こうして見ると、年相応に大人びていて、その美しい容姿もまた変わった輝きを持っていた。
「前の世界の君は、どうやってこちらに来たんだ?」
「(分からない。...けど、向こうで私も自殺したわ。エティーナは睡眠薬とナイフで亡くなったみたいだったけど、私は海に飛び込んだ。)」
「...前の世界で君が死んだ理由を聞いてもいいか?」
エティーナはギュッと手を握りしめた。脳裏に嫌なものがフラッシュバックしそうになったのだ。しかし、その手の上に男らしいルーカスの大きい手が乗る。
ルーカスはいつのまにかエティーナの隣に座って、その手を握っていた。そして、青い瞳でエティーナの戸惑いに揺れる瞳をまっすぐ見つめ返し、エティーナを安心させようと笑う。
「分かった。大丈夫だ。...話さなくてもいい。俺に、少し見せてくれるだけでいい。」
そう言ってルーカスは、エティーナの額と己の額を合わせる。急に近づいた顔に、エティーナは身を固くした。
「緊張しなくていい。ただ、君の全てを曝け出してくれ。痛いことはしない。優しくする。」
「ちょ、ちょっと、あなた...その、言い方は...。」
「何か違ったか?」
「.........、いいわ。勝手にしてちょうだい。」
エティーナは自分ばかりがここまで意識するのが負けた気になって、おとなしく目を瞑った。
なんだか、今なら前世の旦那を思い出してもどうでもいい気がしてきた。
だって、そいつはルーカスのように顔が綺麗でもなければ、純粋でもなかったのだから。死んでまであんな野郎に心を乱される筋合いはないのだ。
ルーカスはエティーナの脳内を直接見ているようだった。魔法師はそんなことまでできてしまうのかとエティーナは感心した。
「...ふむ、これが前世か。前世の君は黒髪なんだな。綺麗だ。...だが、顔色が悪いな?働きすぎだ。ちゃんと休んでほしいんだが...。」
「...ふふっ。」
エティーナの前世を見ているルーカスは、もう過ぎた事なのに、真剣に心配していた。それがむず痒くてエティーナは笑った。
「(...きっとこんな人が近くにいたら、何かが変わっていたでしょうね。)」
「ん?何か言ったか?...ああ!倒れたぞ!?君、やっぱり働きすぎなんだ!!おい!早く治癒師を呼べ...ん?」
おそらく夏菜子が旦那となる男と出会った場面を見ているのだろう。
「.........................。」
そして、なぜかそこからルーカスは黙りこくった。
「(...ちょっと?)」
心で語るかけても、反応はない。
ルーカスはエティーナの手を握ったまま、額を合わせて目を瞑ったまま微動だにしなくなったのだ。エティーナが先に目を開けて、ルーカスの閉じられた目を見る。
「(まつ毛が長いわね...。)」
なんてくだらない事を考えていると、とある事を思い出した。
「あ!!!!」
エティーナが大声をだす。
「(ちょ、ちょっと待って!?どこまで見てるの!?ちょっと!!)」
夏菜子は子供を産んだ。
だから...勿論そういうこともしているわけで...。
流石に他人に自分の夜の情事を除かれるのは何か大事なものを失う気がして、エティーナは額を離そうと暴れる。
そんなエティーナの腰と後頭部をルーカスがガッと掴んだ。それによって一気に体が密着する。
「ひゃあ!!...ちょ、ねぇ、やめて、離してちょうだい...!ねぇ!!」
段々と顔が赤くなるエティーナ。だがその声はルーカスに届かない。
年上の男性に力で勝てるはずもなく、エティーナはとうとう諦めて墓場に埋まる妄想を始めた。
そんなエティーナの事など知らないルーカスは、エティーナの腰をまた強く抱き寄せた。そこには普段の爽やかさなんてものは無く、あるのは野生じみた強引さだった。
そして、ルーカスはやっと口を開く。
「...なんだ、この男は?」
それはルーカスの声とは思えないほど低く、夜の静かな部屋に獣の唸り声のように響いた。
***
ふと思ったのですが、他人の体に意識だけ入り込んだ場合、その前の生は“前世”なのでしょうか。
一応細かいことは気にせず読んでいただけると嬉しいです。
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