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4.オナニーの数なんて嘘でしょう?
しおりを挟む白田君はなんてことの無い、当たり前だよって顔をしてる。俺の顔があんまりにも間抜けだったのか、笑いながらようやく手を離してくれた。ゆっくりと体を起こすけど、え? 何、オナニー?
いやいや、そんな事言われても流石に納得できない。だって、それってつまり、白田君がさっきまでオナニーしてたって事になるでしょ。
「だから、してたよ? オナニー」
「う、嘘でしょ……え、もしかして白田君ってへ」
「変態じゃないからね。佐藤君、知りたいって言ってたでしょ、数字の謎。予想はついてたけど、実際見てもらう方が手っ取り早いかなぁと思ってさ。確証は無かったけど、俺の考え、合ってたみたいだね」
俺が言うのもなんだけど、そんな事の為にわざわざオナニーしたってこと? 予想の斜め上のそのまた上ぐらいに猛スピードでとんでもない答えが突っ込んできたんだけど? ふぅ……落ち着け、俺。いや、まぁ確かに数字は変わったけど、別にオナニーが原因って確定した訳じゃないよね。
……そうだよ、だって男でも0の人ばっかりだったじゃん! 同じ男として、オナニーせずに成人するだなんてほとんど有り得ないって断言出来る。
「それなら0の人ばっかりなのおかしくない?」
「まぁ、そりゃ皆がみんな佐藤君の魅力に気づけてるかって言ったらそうじゃないからね」
ん? どういう事? なんで0の人が多いって話から俺の魅力とか、訳の分からない話題が出てくるんだ?
俺の表情で何かを悟ったのか、白田君はあぁなんてわざとらしく声を上げて
「だって、この数字、佐藤君をおかずにオナニーした数だからさ」
とんでもない言葉を吐いた。
「は?」
「まぁ、佐藤君にとっては驚きなのかな? 俺からしたら、大半が0で俺だけが異常に多くて、他に0じゃなかった人を聞けばなんとなく察しがついたよ」
た、しかに、白田君には、0ばっかりな中そうじゃなかった弟とか幼なじみとか、そんな話はしたけれど。え? じゃあ、その話が本当だったら、和真も慎吾も、悠先輩も? ……なんだか、気が遠くなってきた。みんな、そんな素振り見せなかったけど、俺が気づいてなかっただけなのか?
俺が言葉を発せずにいる間、白田君は黙ってこっちを見ていた。嘘と言うには証拠が揃いすぎている気もするし、本当だと確信するには突飛な話しすぎる。前にも後ろにも、身動きが取れなくなった気分だ。白田君が口を開くまでの時間が長く、長く感じた。
「佐藤君にも色々と考える時間が必要だよね」
そう言われて、少し安心した。嬉しいとか、悲しいとかでもないけど、ただ考えがまとまらない。口には出さなかったけど、早く一人になりたかった。
部屋を出て玄関までの間、俺たちに会話は無かった。たまに、床がギイっと軋む音ぐらい。いやに静かだ。別に俺がなにかした訳じゃないけど、なんとなく気まずい。
こんな時に限って踵が突っかかって、ガッとつま先を押し込んで無理矢理靴を履いた。お気に入りのスニーカーだったんだけどな。
じゃあまた明日、それだけ言おうと振り向くと白田君の顔が思ったより近くて、ぎょっと後ろに仰け反りそうなところで腕を掴まれる。
「ど、うした? なんかまだあっ……」
「忘れないでね、佐藤君」
一言、たったそれだけなのに、背中を撫でられたような感覚が駆け抜ける。どう返事をしたかもよく覚えてない。ただ何かにせっつかれるように、掴まれた腕を軽く振り払うようにして白田君の家を出た。
ドアを閉める瞬間、また明日と声が飛び込んできた。特に返事はしなかった。ただ、忘れないでと言った白田君の笑顔が、頭に焼きついて離れなかった。
いつの間にか結構時間が経っていたらしい、外に出るともう日が沈みかけていた。頬に当たる風を感じながら、何かを誤魔化すみたいにひたすら走る。……とりあえず早く帰ろう。
痛みは無い、そのはずなのに掴まれた手首がいつまでもじくじくと主張していた。忘れるなと言われているみたいだった。
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