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4.始まらない冬休み

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ピンポーン。

何だよ、諦めたんじゃないのかよ。

でもまあこのまま居留守を決め込めばどこか行ってくれるだろう。

そう思って無視するのだが、訪問客は立ち去るどころか、定期的に呼び鈴を押し続ける。

何で立ち去らないんだ。

まるでこっちが居留守を決め込んでいることに気づいているかのよう。

オレは鳴り続く呼び鈴に集中力が切れてしまい、仕方なく玄関に向かった。

無神経なやつだ、1度怒ってやりたい。

「居留守使ってるんだから、早く帰れよ!」

いやいや、居留守を使っていることを暴露してどうするんだ。

「1回で出てこなかったら諦めろよ!」

いやいや、これも居留守を使っていると言っているようなものだ。

「トイレくらいゆっくりさせろよ!」

よし、これだ。

出たくても出られなかったってことにしよう。

そうすればオレは悪くないし、相手も怒られて当然だ。

兄キの家にはドアホンがなければマンションのドアのように外が見える覗き穴もない。

玄関の扉を開けたが最後、相手が誰なのかはその時になるまで全くわからないスリルさがある。

オレはドアをそーっと開けた。

「ちょっと、いつまで待たせんのよ!」

10センチほどしか開けていないドアの外から変な声が聞こえる。

茉の声真似をしているのだと思われるが、クオリティーが低すぎてどこから突っ込みを入れたらいいかわからないレベルだ。

オレはドアをもう少し開けた。

クスミがいる。

「あれ?クスミだけ?」

クスミはオレの質問に答えづらそうにしている。

兄キに口止めされているのかもしれない。

さっきの下手なモノマネは兄キがやったはずだから近くにいるはずなんだが。

「ま、いいや。中入れば?」

オレはクスミに中へ導こうとすると、ドアの影に隠れていた兄キが急に現れた。

「じゃーん!オレはここでしたー!驚いたか?」

「あぁ」

今時こんな小学生でもしないようなことをやっていることに驚きだ。

「メデューサだと思っただろ?」

「メデューサ?あぁ、茉のことか」

兄キの中で茉は完全に中ボスになってしまったらしい。

呼び方もメデューサになってしまったようだ。

「お前、それ絶対本人に言うなよ?」

「メデューサにメデューサって言って何が悪いんだ?」

「本人はメデューサだと思ってないから言うなって言ってんだよ」

だいたいそんなことを言っているのは兄キだけだし。

「それより何で今日もクスミと一緒なんだ?地デジ対応のテレビに代わったんだろ?」

「あぁ!見てきたぞ。やっぱ50型で見るえぬえぬといっしょは格別だな!」

50型のテレビも買い替えたのか?

チューナーの交換だけで済むのに。

「本当はそのテレビでえぬクエする予定だったけど、セーブデータを持っていくの忘れたから家ですることにした」

「ふーん」

えぬえぬクエストのことを格好良くえぬクエと略しているあたりは触れないでおこう。

面倒だから。

さて、外にいても寒いので3人中に入ることにした。

ああ、今日もまたゲームを始めるのか。

静かに過ごせそうだったのに、結局平和だったのは午前中だけ。

もっと早起きして宿題を進めておくんだった。
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