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1.お見合いからの新生活
02.マキナさんの会社
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そこに駐まる白い高級車の前まで行くと、マキナさんは我に返ったのか慌てて手を放される。
「すまない。ちょっと舞い上がってしまった」
「いいえ、お気になさらず」
いきなり手を掴まれてちょっとビックリしたけれど。
平常モードに戻ったマキナさんに、「さあ」と開けられた助手席のドアに促される。
お礼を言ってボクは助手席のシートに座った。
この車って運転は運転手に任せるようなものだと思うけど、自分で運転して来たんだね。
などと内装を眺めている内に滑るように車は動き出した。
ボクの人生で乗ることはないような座り心地や乗り心地に心奪われているとマキナさんが話しかけてくる。
「すまないが、会社に戻って小用を済ませてからでないと新居に送れない。午後からは、業務を入れていたからね」
「はい。構いません」
そう言って、急遽ボクを引き受けたせいでやるはずだった午後の仕事の内、やむを得ない処理を終わらせてからマキナさんの自宅──新居に移ると告げられた。
それほど言葉を交わさぬ内に、ビルが建ち並ぶ中の一つ、その地下駐車場に入っていき車を降りる。
彼女が助手席に回ろうとするのを断って車を降りた。
申し訳なさそうな顔に、気にしないよう笑顔を向ける。
車の乗り降りくらい、自分でできますよ。
こちらを幾度となく振り向き気遣って歩くマキナさんの後ろを付いていくとエレベーターの前へ。
それは社員用のものらしい。懐から出したIDカードをチェックボックスにかざして乗り込んだ。
目的の五階に上がると、そこはフロアぶち抜きの事務所で、不透明の仕切りが立てられて所々に出入口の隙間が空けられている。
「ちょっと、ここで休んでいて」
エレベーター近くのソファーセットを指をさしてマキナさんが言う。
見た感じは接客用とかではなく、社員の休憩用みたいだ。
それを了承しながらも、出入り口の隙間を抜けていくマキナさんを追って仕切りの陰から覗いてみる。
机が固まった一角に進むと、彼女は部下だろう人に指示し始めている。
「午後は少し遅くなる。急ぎの決裁を済ませると退社するので周知していてくれ。食事してくる」
食事と聴こえて、お昼ごはんの時間が来ているのを思い出した。
「食事にしましょう」
仕切りの陰で覗いていたボクのところに戻ってきたマキナさんは、そう言った。
食事と聞いてお腹が鳴り出しそうだった。
社員の人にボクを紹介しなくて良かったのかなあ~、と思いながら事務所の人に会釈して、マキナさんに連いて行く。
お昼前からお見合いだったので、会食しながら話を詰めるかも知れなかったし、早く決着がつけばそこで食事するかも知れなかった。
けれど話はサクサク進んでしまい婚約の諾否まで委ねられて解散した。
すぐさま婚約を了承する連絡をして、新居に移るのも承諾したから食事をするのも忘れていたね。
マキナさんに気付かされなかったら、知らずにお腹が減りすぎてへろへろになっていたよ。
マキナさんとエレベーターで一階に降り、ダイニングホールに進む。
そこは本当にホールになった巨大な食堂だった。百人以上は一度に食べられる規模がある。
会社の一階は迎えいれる玄関だろうというのに、それだけの面積を占めていて大丈夫なのかと心配になる。
ホール内には遅い食事の人がそこそこ居て、入った途端、人の目が集まった。
こちらでも毛色の変わった人を見る目が向けられた。ボクは、ビジネススタイルじゃないから仕方ない。
提供されているのは日替わり定食とビュッフェ・スタイルで人それぞれ好きに選べるみたい。
初見なのでマキナさんに倣おうとしたけれど、彼女は定食に加えてビュッフェでも数品摘まむ豪胆さ──いや健啖さ? を見せていた。
とても真似できなさそうにないので、ビュッフェの数品をトレイに取り、彼女と並んでテーブルに座った。
「君は少食だね? もっと食べないと」
ボクは、そうですねと苦笑いして返す。
平時ならもう少し食べられそうだけど、並んだビュッフェの料理を眺めていたら食欲を殺がれてしまったみたい。
勢い食べる彼女を見ながら、圧倒された心を落ち着かせるようにじっくり食べる。
彼女の身長は百七十はあるだろうか。ボクとは頭ひとつくらい違って大きい。
そのたくましい体はそうやってできたのかなあ、と感心する。
おそらく平均的な肉付きだろうけれど、精力的な活動を維持するにはその量が必要なのだろう。
何かにつけ精力的な人だ。それくらいじゃないと務まらないのだろう。
食べ終わると食後のコーヒーは事務所でゆっくり飲もう、と勧められる。
確かにホールは広いし、他の人の目が気になって寛げないかな。先ほどのフロアに戻ったほうがいいね。
五階に上がり、もとの事務所へ戻った。そこの隅には打ち合わせ用のソファーセットがある。
マキナさんは、そこで休んでいてくれと言って一緒に座る。
「すまない。ちょっと舞い上がってしまった」
「いいえ、お気になさらず」
いきなり手を掴まれてちょっとビックリしたけれど。
平常モードに戻ったマキナさんに、「さあ」と開けられた助手席のドアに促される。
お礼を言ってボクは助手席のシートに座った。
この車って運転は運転手に任せるようなものだと思うけど、自分で運転して来たんだね。
などと内装を眺めている内に滑るように車は動き出した。
ボクの人生で乗ることはないような座り心地や乗り心地に心奪われているとマキナさんが話しかけてくる。
「すまないが、会社に戻って小用を済ませてからでないと新居に送れない。午後からは、業務を入れていたからね」
「はい。構いません」
そう言って、急遽ボクを引き受けたせいでやるはずだった午後の仕事の内、やむを得ない処理を終わらせてからマキナさんの自宅──新居に移ると告げられた。
それほど言葉を交わさぬ内に、ビルが建ち並ぶ中の一つ、その地下駐車場に入っていき車を降りる。
彼女が助手席に回ろうとするのを断って車を降りた。
申し訳なさそうな顔に、気にしないよう笑顔を向ける。
車の乗り降りくらい、自分でできますよ。
こちらを幾度となく振り向き気遣って歩くマキナさんの後ろを付いていくとエレベーターの前へ。
それは社員用のものらしい。懐から出したIDカードをチェックボックスにかざして乗り込んだ。
目的の五階に上がると、そこはフロアぶち抜きの事務所で、不透明の仕切りが立てられて所々に出入口の隙間が空けられている。
「ちょっと、ここで休んでいて」
エレベーター近くのソファーセットを指をさしてマキナさんが言う。
見た感じは接客用とかではなく、社員の休憩用みたいだ。
それを了承しながらも、出入り口の隙間を抜けていくマキナさんを追って仕切りの陰から覗いてみる。
机が固まった一角に進むと、彼女は部下だろう人に指示し始めている。
「午後は少し遅くなる。急ぎの決裁を済ませると退社するので周知していてくれ。食事してくる」
食事と聴こえて、お昼ごはんの時間が来ているのを思い出した。
「食事にしましょう」
仕切りの陰で覗いていたボクのところに戻ってきたマキナさんは、そう言った。
食事と聞いてお腹が鳴り出しそうだった。
社員の人にボクを紹介しなくて良かったのかなあ~、と思いながら事務所の人に会釈して、マキナさんに連いて行く。
お昼前からお見合いだったので、会食しながら話を詰めるかも知れなかったし、早く決着がつけばそこで食事するかも知れなかった。
けれど話はサクサク進んでしまい婚約の諾否まで委ねられて解散した。
すぐさま婚約を了承する連絡をして、新居に移るのも承諾したから食事をするのも忘れていたね。
マキナさんに気付かされなかったら、知らずにお腹が減りすぎてへろへろになっていたよ。
マキナさんとエレベーターで一階に降り、ダイニングホールに進む。
そこは本当にホールになった巨大な食堂だった。百人以上は一度に食べられる規模がある。
会社の一階は迎えいれる玄関だろうというのに、それだけの面積を占めていて大丈夫なのかと心配になる。
ホール内には遅い食事の人がそこそこ居て、入った途端、人の目が集まった。
こちらでも毛色の変わった人を見る目が向けられた。ボクは、ビジネススタイルじゃないから仕方ない。
提供されているのは日替わり定食とビュッフェ・スタイルで人それぞれ好きに選べるみたい。
初見なのでマキナさんに倣おうとしたけれど、彼女は定食に加えてビュッフェでも数品摘まむ豪胆さ──いや健啖さ? を見せていた。
とても真似できなさそうにないので、ビュッフェの数品をトレイに取り、彼女と並んでテーブルに座った。
「君は少食だね? もっと食べないと」
ボクは、そうですねと苦笑いして返す。
平時ならもう少し食べられそうだけど、並んだビュッフェの料理を眺めていたら食欲を殺がれてしまったみたい。
勢い食べる彼女を見ながら、圧倒された心を落ち着かせるようにじっくり食べる。
彼女の身長は百七十はあるだろうか。ボクとは頭ひとつくらい違って大きい。
そのたくましい体はそうやってできたのかなあ、と感心する。
おそらく平均的な肉付きだろうけれど、精力的な活動を維持するにはその量が必要なのだろう。
何かにつけ精力的な人だ。それくらいじゃないと務まらないのだろう。
食べ終わると食後のコーヒーは事務所でゆっくり飲もう、と勧められる。
確かにホールは広いし、他の人の目が気になって寛げないかな。先ほどのフロアに戻ったほうがいいね。
五階に上がり、もとの事務所へ戻った。そこの隅には打ち合わせ用のソファーセットがある。
マキナさんは、そこで休んでいてくれと言って一緒に座る。
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