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3.喜多村本家に居候
65.喜多村本家へ
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「皆、大丈夫?」と護衛の皆に声をかける。
「大丈夫、です」
「同じく」
護衛の歩鳥ミドウさん、斎木チドリさんは問題なし、と。
「問題ありません」
「問題、ありまくり……」
気更来サラサさんは良いとして一人、不満をもらす羽衣ウイさん。
「折角いただいたキャミソールがあ~……」
死守したショーツをもの悲しく眺めては、それに頬ずりする。
できれば返して欲しい。てか焼却したい。
「ねえ、新しく買ったものと交換しない?」
「えっと……脱ぎたてにしてくれるなら」
「…………」
交渉の余地は無し。言葉が継げなくなった。
使用済みでも洗ったあとなら渡してもいい。そんなのは求めていないんだろう。
両脇の歩鳥さんと斎木さんは期待の籠った表情でボクを覗き込んでくる。
「なんです?」
って言うか、歩鳥さんと斎木さんは関係ない、よね?
そう言うとがっかりされた。なんで?
「お相手していただけないなら、せめて肌の温もりを感じられるものが欲しいです」
相手……ってボクって護衛の人からも狙われてるの?
「ちょっと……主人に訊いてくださいな」
「分かりました……」
結果は分かってますけど、と意味深な返答がある。
どう言うことか訊くと、働きに応じて褒美として下賜──下げ渡しするんだとか……。
主人と部下がゴニョゴニョになって絆が深まり、忠誠心が高まるとか?
部下は、それを期待半分で仕えるのもあり、男性警護士などはその最たる職業なのだとか……。
聴いてない。……マキナもきっと許可しない、と思いたい。でも香具羅メイの例もある。
そちらはまだ三年も猶予があるけど……う~ん? 考えるのは棚上げしよう。
「なんか、忘れてる気がするんだよな~」
ローファーを脱いで足袋を履き取り出した草履を履く。
めくれた裾を見る人には彼方を指さして視線を逸らす。
車に揺られて山の麓に着く。巨大な塀と入口のゲートが現れる。
通過儀式を済ませるとゲートが開き、車が入っていく。
なんてものものしいんだ、喜多村本家。
「要塞かよ?」
二メートル以上ある塀の上には忍び返しが付いている。門の両脇には監視カメラがこちらを向いている。
「まあ有り体に言って、そうですね」
事も無げに気更来さんが言ってのける。
「本家ってどんな生活してんだろう?」
まあ訊いても塀の中はパラダイスだろうね?
「所々に石碑みたいなのがあるね?」
「ああ、それは──」
ドローンを撃ち落とす石塔だとか教えてくれる。どんだけ防犯対策されてるんだ。
なだらかな坂を登り屋敷の前に着く。
屋敷の前に花壇がが設けられ噴水もある。
くすんだ石造りの洋館で時代を感じる。
車寄せに停めると皆、安堵の表情をもらした。
「ボクの姿、おかしくない?」
「もうばっちりです」
車を降りて護衛の二人に訊くとべた褒めしてくれる。
「奥様にふさわしいお姿です」
「そ、そう?」
喜多村家警護士の気更来さんも褒めてくれる。
「清楚なお坊ちゃんです」
羽衣さんのは褒め言葉か?……いい加減ショーツは仕舞って、お願い。
姿勢を正して玄関に向かう。荷物は護衛の二人に持ってもらう。
ドアマンみたいな人が扉を開けてくれる。
玄関フロアも広い。壁際に裸像が並んでいる……。
若くて胸が薄いから──男子か。訪問者は女性が多いのかな?
でもね、男子も来るんだからセクハラだよ。
奥から執事みたいな人が来るのに合わせて子供たちがパタパタとやって来る。
「おばさん、だれ?」
「ええっと……」
その問いにボクは返答に困る。言ってもいいのか回りの護衛に視線を向ける。
「マキナ様の奥様です」
気更来さんが答えてくれた。言っても良かったんだ。
「マキナおばちゃんの奥……じゃオトコ?」
「おじちゃん、遊ぼう」
「一緒にお風呂に入ろう」
「おじちゃんはやめて? せめて、お兄ちゃんで」
子供たちに引っ張られて連れて行かれる。
屋敷の子たちは話題に飢えていて、変化があると駆け付けてくるらしい。
「皆さん、キョウ様はお疲れですので、遊ぶのはあとにしてくださいませ」
「「「は~ぃ」」」
少し力なく返事をした子供たちは引き下がった。
「蒼屋キョウ様、ですね? お疲れでしょう。部屋へご案内いたします」
執事然とした女性はボクを知っているらしい。
「ありがとうございます」
荷物は護衛たちから侍女たちに渡り運んでもらう。
喜多村の気更来さん、羽衣さんとはそこで別れる。ありがとうございました。
執事か家令っぽい女性に導かれて屋敷の中を進む。
「護衛の皆さんはこちらに」
歩鳥さんと斎木さんは、しばらく離ればなれにと思ったら、彼女たちの向かいがボクに充てられた部屋だった。
「ありがとう」
案内してくれた執事さんに礼を言って、部屋に入る。その大きさに驚いた。
マキナとの新居の部屋より大きいかも。
侍女さんたちは荷物を置くと下がっていく。ありがとうと見送る。
「疲れた~」
履物を脱いで大きなベッドに倒れ込む。
こいつもエンプレス・サイズだ。いろいろあり過ぎて疲れた。
うつらうつらし始めたころ、ノックがする。
「蒼屋キョウ様、食事の用意ができました。食堂にご案内いたします」
「は~い」
そういえば、お昼だった。携帯で時間を確認する。
「あああ~、携帯、新調してなかった~」
それとウナギ弁当、どうするかな?
「大丈夫、です」
「同じく」
護衛の歩鳥ミドウさん、斎木チドリさんは問題なし、と。
「問題ありません」
「問題、ありまくり……」
気更来サラサさんは良いとして一人、不満をもらす羽衣ウイさん。
「折角いただいたキャミソールがあ~……」
死守したショーツをもの悲しく眺めては、それに頬ずりする。
できれば返して欲しい。てか焼却したい。
「ねえ、新しく買ったものと交換しない?」
「えっと……脱ぎたてにしてくれるなら」
「…………」
交渉の余地は無し。言葉が継げなくなった。
使用済みでも洗ったあとなら渡してもいい。そんなのは求めていないんだろう。
両脇の歩鳥さんと斎木さんは期待の籠った表情でボクを覗き込んでくる。
「なんです?」
って言うか、歩鳥さんと斎木さんは関係ない、よね?
そう言うとがっかりされた。なんで?
「お相手していただけないなら、せめて肌の温もりを感じられるものが欲しいです」
相手……ってボクって護衛の人からも狙われてるの?
「ちょっと……主人に訊いてくださいな」
「分かりました……」
結果は分かってますけど、と意味深な返答がある。
どう言うことか訊くと、働きに応じて褒美として下賜──下げ渡しするんだとか……。
主人と部下がゴニョゴニョになって絆が深まり、忠誠心が高まるとか?
部下は、それを期待半分で仕えるのもあり、男性警護士などはその最たる職業なのだとか……。
聴いてない。……マキナもきっと許可しない、と思いたい。でも香具羅メイの例もある。
そちらはまだ三年も猶予があるけど……う~ん? 考えるのは棚上げしよう。
「なんか、忘れてる気がするんだよな~」
ローファーを脱いで足袋を履き取り出した草履を履く。
めくれた裾を見る人には彼方を指さして視線を逸らす。
車に揺られて山の麓に着く。巨大な塀と入口のゲートが現れる。
通過儀式を済ませるとゲートが開き、車が入っていく。
なんてものものしいんだ、喜多村本家。
「要塞かよ?」
二メートル以上ある塀の上には忍び返しが付いている。門の両脇には監視カメラがこちらを向いている。
「まあ有り体に言って、そうですね」
事も無げに気更来さんが言ってのける。
「本家ってどんな生活してんだろう?」
まあ訊いても塀の中はパラダイスだろうね?
「所々に石碑みたいなのがあるね?」
「ああ、それは──」
ドローンを撃ち落とす石塔だとか教えてくれる。どんだけ防犯対策されてるんだ。
なだらかな坂を登り屋敷の前に着く。
屋敷の前に花壇がが設けられ噴水もある。
くすんだ石造りの洋館で時代を感じる。
車寄せに停めると皆、安堵の表情をもらした。
「ボクの姿、おかしくない?」
「もうばっちりです」
車を降りて護衛の二人に訊くとべた褒めしてくれる。
「奥様にふさわしいお姿です」
「そ、そう?」
喜多村家警護士の気更来さんも褒めてくれる。
「清楚なお坊ちゃんです」
羽衣さんのは褒め言葉か?……いい加減ショーツは仕舞って、お願い。
姿勢を正して玄関に向かう。荷物は護衛の二人に持ってもらう。
ドアマンみたいな人が扉を開けてくれる。
玄関フロアも広い。壁際に裸像が並んでいる……。
若くて胸が薄いから──男子か。訪問者は女性が多いのかな?
でもね、男子も来るんだからセクハラだよ。
奥から執事みたいな人が来るのに合わせて子供たちがパタパタとやって来る。
「おばさん、だれ?」
「ええっと……」
その問いにボクは返答に困る。言ってもいいのか回りの護衛に視線を向ける。
「マキナ様の奥様です」
気更来さんが答えてくれた。言っても良かったんだ。
「マキナおばちゃんの奥……じゃオトコ?」
「おじちゃん、遊ぼう」
「一緒にお風呂に入ろう」
「おじちゃんはやめて? せめて、お兄ちゃんで」
子供たちに引っ張られて連れて行かれる。
屋敷の子たちは話題に飢えていて、変化があると駆け付けてくるらしい。
「皆さん、キョウ様はお疲れですので、遊ぶのはあとにしてくださいませ」
「「「は~ぃ」」」
少し力なく返事をした子供たちは引き下がった。
「蒼屋キョウ様、ですね? お疲れでしょう。部屋へご案内いたします」
執事然とした女性はボクを知っているらしい。
「ありがとうございます」
荷物は護衛たちから侍女たちに渡り運んでもらう。
喜多村の気更来さん、羽衣さんとはそこで別れる。ありがとうございました。
執事か家令っぽい女性に導かれて屋敷の中を進む。
「護衛の皆さんはこちらに」
歩鳥さんと斎木さんは、しばらく離ればなれにと思ったら、彼女たちの向かいがボクに充てられた部屋だった。
「ありがとう」
案内してくれた執事さんに礼を言って、部屋に入る。その大きさに驚いた。
マキナとの新居の部屋より大きいかも。
侍女さんたちは荷物を置くと下がっていく。ありがとうと見送る。
「疲れた~」
履物を脱いで大きなベッドに倒れ込む。
こいつもエンプレス・サイズだ。いろいろあり過ぎて疲れた。
うつらうつらし始めたころ、ノックがする。
「蒼屋キョウ様、食事の用意ができました。食堂にご案内いたします」
「は~い」
そういえば、お昼だった。携帯で時間を確認する。
「あああ~、携帯、新調してなかった~」
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