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3.喜多村本家に居候
107.お散歩しよう
しおりを挟む本館へ戻ってくサキちゃんを見送る。さて、これからどうしよう?
「みんな~もう起きないと」
取りあえず午睡真っ盛りの幼女たちを起こす。
「う~ん、まだ眠い……」
「もうちょっと……」
「眠いよ~」
「歩鳥さん、斎木さん、もう起きてるでしょ? ベッドから降りてよ」
タンポポちゃんたちにワンピースを着せながら護衛の二人を起こす。
「ばれてましたか……」
「もうしばらく、この感触を~」
まったく、斎木さんは危機感ないね~?
「もう、斎木さんは用済み。チェンジ、だね?」
「そ、それだけはご勘弁ください」
ベッドに頬ずりする大きい子をちょっと脅したら飛び起きた。
ボクは解任するつもりもないし、そんな権限もないけどね?
「それで、何して遊ぶの?」
タンポポちゃんたちに訊いてみる。
「ん~、考えてない」
「ん~?」
「そんなの何でもいい」
あ~左様ですか……。
「それじゃ、部屋に戻って勉強のお復習とか、しない?」
「え~~っ?」
「もう朝、やったよ~」
「ん~? やった」
「朝はうるさくしたし、お復習は大事だよ?」
「そんなの明日もやるんだし構わないわよ」
「そうそう」
「ん~? そう」
ん~、タンポポちゃんの意見に引きずられてるっぽいな~。おいおい慣らしていくか~。
って、ボク、住み込む気分でいる……。
「仕方ない。ボク、屋敷の周り知らないから案内して?」
「それなら良いわよ」
「案内する」
「する……」
タンポポたちに用意した衣服を持って部屋を出る。使用人の館を経て本館二階・タンポポたちの部屋に荷物を置く。また一階に降りて遊歩道へ出る。
護衛や警護のみんなは置いてきた。新任の笹さん、打木さんが付いてくるって言うと気更来さん、羽衣さんまでが対抗意識を燃やして付いてくるって言う。
すると、護衛の歩鳥さん、斎木さんまで来るって言い出して、きりがないので全員拒んだ。
壁内にいるうちは安全でしょう。
「ね~? キレイでしょ~」
「そうだね」
「これ」
「キレイに咲いてるね。チューリップ」
「見て見て」
「ツツジも咲き始めたね」
皆と歩いてみると、とんでもなく広い。遊歩道から庭園に歩いていく。これ手入れが大変だわ。
辺縁に杉が並ぶところがあり、バラのアーチを抜けると藤棚や四阿なんかまで設えられている。
「これ、ちょっと飲み物でも持ってくれば良かった」
「そ、そうね。今度は持って来ましょ?」
「うん、持って来る」
「軽食もいるわね」
水仙に囲まれた四阿によって休憩する。
「まだまだ奥にもありそうだね?」
「この奥には何もない」
「そう農場しかない」
「ない……」
「え~、農場まであるの?」
「そうよ」
「そうなの。でも、つまんない」
「ウシがいる。こわい……」
もしかしたら、壁の中でコミュニティができてる? 壁内ではある程度、自給自足してるのか。そうしてないと生活できない気がする。
「また今度、農場に行ってみたいな」
「え~っ、見るところないよ?」
「これ、そなた、何をしておる」
休んでいるところに護衛二人、戸隠さん、角師さんを引き連れミヤビ様が足早にやってくる。
四阿の前まで来られると、ガサガサ後ろから音がする。振り返ったら笹さんと打木さんがいた。
二人とも黒服が草まみれだし落ち葉の欠片やら付けてるし。どこにいたんだよ。
てか、あとを付けて来てたの? いつの間に? こわいよ、特殊部隊。
みる間に四阿の腰壁を跳び越えてボクたちの前に立ち、ミヤビ様たちと対峙した。
ミヤビ様の護衛も前に進んでミヤビ様の盾になる。まさかの事態に息を呑む。びっくりするよ。
「あの、ミヤビ様。どうかされましたか?」
「どうもこうもない。なぜ母家に来ぬ?」
護衛の挙動に動じもせずミヤビ様が問う。あ~、そんな話もあったね?
「そのお話は先ほど聞いたばかりでして、その、このような重大な用件は、マキナと相談いたしまして、ご返答いたしませんと、ですね?」
「何を言うておる。マキナとわらわは愛友じゃと言うておろう。わらわの言うことはマキナも反対せぬ」
あれ? これってもしかして……かな~り一方的じゃね?
「キョ~ウ?」
「ん……」
「う~」
「何、みんなどうしたの?」
「「「…………」」」
皆から返事がない。居心地悪い、とか?
「ミヤビ様、一度マキナと話しておきますので、また後ほど──」
「何を悠長な。今! すぐ! 訊いてみよ」
ん~困ったね。
「まだ、勤務中と思われますので、もう少しお待ちいただければと考えます」
「分かった──」
分かってくれた……ホッ。
「──わらわが、直接話す」
え~~っ! 全然分かってなかったヨ!
お付きの黒服・角師さんから手荒に携帯を奪うと操作し始める。
「お待ちください! 分かりました。わたくしから連絡いたします」
「ならば疾く申せ」
「はぁ~~」
ボクは思いっきりため息をついた……。
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