109 / 203
3.喜多村本家に居候
109.館入り、だって
しおりを挟むメイド長・岩居サザレさんに話を訊いたあと迎賓館に戻り荷物をまとめる。
護衛たちにそれを運んでもらい使用人館を伝って本館に入る。
母家に部屋をもらうのは本来一大儀式で、行列を作って玄関口から入るらしいんだけどパス──というか省略。
元々、婚姻の挨拶に来ただけなのに何の因果で本家の部屋をもらうのか分からないんだから。
「なんで五階なの? もう、二階でも三階でもいいのに」
館の西側の階段をえっちら、ボクたちは登っている。荷物は護衛たちが持ってるから、ほぼ手ぶらなんだけど非力なボクにはキツい。
「ミヤビ様の寝所は最上級にしないといけないでしょう? 今回だけです。次からはエレベーター使えばいいですから」
「ちょっと~~。エレベーター使っていいならそっち使おうよ?」
「なんでも輿入れ──輿を降りてから館入りは自分の足で入る決まりらしいです。門から大分あるので昔は大変だったらしいですよ?」
「ちょっと待って? 門て山裾の門?──」
その昔、敷地の境界である門の前で輿を降り館まで歩いていったらしい。
「──ムダな儀礼だよね? すぐ廃止」
「そうしてください」
「またか~」
膝をぷるぷるさせてボクの部屋だと言うところに着いてみると、迎賓館の部屋より大きい。
入った応接間の隣に居間。そこから寝室につながる……。
「ま、まあ五階だけあって眺めは良いかな?」
「やっと来た──来ちゃったわね~?」
「あ、ユキ様。いらっしゃいませ」
「こちらこそ、いらっしゃい、キョウちゃん」
義曽祖父のユキ様が、お茶を用意するから休憩なさいと労ってくれる。
護衛たちは荷物を降ろし、近習──いわゆる護衛や侍女の控える待機部屋に下がっている。
「とうとう、ここまで来ちゃったわね~」
「ここまで? とは……」
お茶で一息ついたところでユキ様が口を開く。
「ここは当主や当主に順ずるものの住まうところよ」と教えてくれる。
「ショウちゃんもヒロちゃんも、受け入れているから大丈夫よ」
「は、はあ~?」
どこらへんが大丈夫なのかが分からないんですけど?
「あら、分かってないようね? ショウちゃんヒロちゃんを追い越して次期当主格に昇り詰めたのよ?」
「え~~っ。そんなのはご遠慮したいです」
「まあ、少し早くなっただけで、いずれ就く立場だから大丈夫よ?」
まったく大丈夫に感じない。いったい何年先だったんだか……。
「ユキ、こんなところに居ったのか? 大変じゃぞ。山級の鬼君が来る──来られるぞ!」
お茶してたら、なんか、サキちゃんがドタドタ部屋に飛びこんでくる。
「まあ! ど、どうしてそんなことに?」
ユキ様まで慌ててる?
「どうかされました?」
「どうもこうも……そなたは知らぬな──」
姻戚で煌家の権力を裏から握る山級家の〝鬼君〟と呼ばれる男が喜多村を訪れる、らしい。
「へ~。そんな男が来るなら光栄じゃん」
「〝へ~〟ではない。まったく、そなたは……。『初床』をご覧になる、らしいぞ?」
「ええ~~っ! そんな人に見せるものじゃないと思うけど?」
「その通りじゃ。まったく、どうしてこんな事に……」
──あれ? これって、もしかしてボクのせい?
「──あの~、その人ってミヤビ様の?」
「ミヤビ様の正室、じゃな」
身からでた錆、だった……。
「そ、その人って普通は奥に引き籠ってたりしない、の?」
──奥様だし。
「そうじゃ。なにゆえ、初床を見るなどと申されるのか、心緒を図りかねる」
「まったく、そうね~?」
冷や汗がにじんできた……。ストレス反射ってヤツ、だね?
「あの~、ボクのせい、かも?」と、おずおず、口にする。
「どう言うことじゃ? 話してみよ」とサキちゃんが呆けつつ訝しげに聴いてくる。
「ミヤビ様に、初床におよぶ不調法を奥方様に直接会って詫びるって、言っ・ちゃっ・た~」
「✕✕✕✕✕✕✕~!」
言葉にならない声を発してサキちゃんが天を仰ぐ。
「ユキよ、わしは気分が悪い。熱も出てきた。病気じゃ。……出迎えやら何やら、あとは委せる」
「まあ! 逃げるのですか、情けない」
それでも女ですか? とユキ様がなじる。
「女の出る幕は少なかろう。キョウを頼む」
なんか、スミマセン。
なんとかユキ様が取りなして、逃げ出すサキちゃんを宥める。
「どこぞに作法を指南するものは居らぬかの~」
「実家も煌家に出したものは居りませぬ。儀礼典範に聡いものも居ないでしょう、ね~?」
「恥を忍んで他家に聴く、か~?」って、ため息交じりでサキちゃんがぼやく。
「ま、まあ、サザレさんがいいって言った通りやってみる」
「おおっ! サザレが居った。岩居家のものならば」
「そ、そうですね?」
なんか納得してるよ。ボクに分かるよう説明してよ? まあ、だいたい想像つくけど……。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
【短編集】こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について
おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である
そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。
なんと、彼女は学園のマドンナだった……!
こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。
彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。
そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。
そして助けられた少女もまた……。
二人の青春、そして成長物語をご覧ください。
※中盤から甘々にご注意を。
※性描写ありは保険です。
他サイトにも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる