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3.喜多村本家に居候

113.また黒メガネ?

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「キョウよ、皆のガスきをしたいのじゃが?」
「ガス抜きって何?」

 なんか唐突とうとつだね~?

「今のまま、たかぶったままでは業務ぎょうむ支障ししょうがでる──」
「ふむふむ」
「──ひと時、辛抱しんぼうして皆の好きにされてみぬか?」
「え~~っ。そんなのイヤだよ」

 何いってるの、この人。

「大丈夫じゃ。そなたの記憶きおくに残らぬようにする。ひどいこともせぬ。どうじゃ?」
「記憶に残らないと酷いか、そうじゃないか分からないと思うけど?」

 そんな都合つごうよく行くわけないよ。

「そうじゃの~。分かった。聴覚ちょうかくは残しておく。それでどうじゃ?」
「聴覚だけ、ってあとはどうなるのよ?」
「感覚遮断しゃだんして分からなくする、たぶん」

 たぶん……って……

「そんなことできるの?」
「できる。黒メガネで管理者アドミニストレイタ権限モードにアクセスできたようじゃから、たぶん」
「また、たぶん?」

 少し考える。

「この事態じたい収拾しゅうしゅうできるんだね?」
「おそらく──」

 おそらくとか、たぶんが多すぎ。

「──仕方なかろう。実験も検証けんしょうもこれからのものを勝手に発動はつどうさせてしまったのじゃ。わしにも分からん」

 あやつがれば分かるものを──ってサキちゃんがつぶやく。

 もしかして、ボクって実験台にされる予定だったの?

「……分かった。どうすればいいの?」
気更来きさらぎ、あのメガネを」
「えっ? は、はい」
「あの黒メガネするの?」
「そうじゃ」

 あれは禁止って言ってたじゃん。

「メガネでそんなこと、できるの?」
「おそらく、できる」

 まったく、「おそらく」とか「たぶん」とか……。いつものサキちゃんらしくないよ。

 程なく、気更来さんが鈍色にびいろの金属ケースを持ってくる。あのメガネケースだ。

「ほれ、着けてみよ」
「うん……」

 差し出されたケースを開けて中のメガネを着けてみる。

 ──あ! こんなところまでのぞかれてる。これは……監視かんしカメラ?

「では、『ステータス』で身体しんたいステータスを見てみよ」
「ステータス? おおっ? 何かいっぱい数値が出た──」
「やはりか……。では、言う通りにせよ」
「うん……」

 言われるまま『外接エクスターナル』に切りえて『周辺探索たんさく』をカット。これで頭が疲れないらしい。

 でも、監視カメラが分からなくなったよ?

内部インターナル』に戻って『運動機能』から『随意ずいい』と『感覚』から聴覚ちょうかくの他をカット──って『警告ワーニング』って出たよ?

 ──ちょっと~、聞いてる?

「ああ、警告けいこくが出たか? 無視して三十分後にデフォルトに復帰ふっき設定せってい。皆のもの急げ。風呂マットを持ってよ……」

 ──ちょっと~それだけ? 何が起こってるのさ? 目の前、真っ暗になったよ~?

「声を上げるな。全てキョウが聴いているぞ」

 ──お~い、聴いてる? って自分の声、聞こえない。なんで?

「……うっく……くっ」
「……うふっ……ぬふっ」
「そなたら、静かにせぬか」
「三十分、しか、ないのに、なりふり、かまって……ううっ……」

 ──もういい。……ええっと、身体ステータス……普通? だね……。百分の五十あたりをうろうろしてる。

 ──身長の項目こうもくは……さすがに無いか……クッソ~。

 ──『頭脳ブレイン』がバッドになってるよ? なんだよ、指数が『40』って低すぎ。

 ──ちょっと上げてやろ。[↑]をポチッ……あれ?

 ──ポチッポチッ!……あれ? なんで上がらない?

 ──ポチッポチッポチッ!……ダメだ。ロックされてる?

 ──『知能インテリジェンス』『記憶メモリー』も低めだな~。

 ──『外向性』は高めで外交的、『内省ないしょう性』は低めでなやまないようだけど……。

 ──これってボクの性格そのまま?

 ──まあ、良くも悪くも変更できなくて、良かったような悪かったような……。


「これ、そろそろ時間じゃ。片付けよ、急げ!」

 ──お! やっと終わり?

ひますぎだよ。って、何? このにおい~」

 やっと視覚しかく臭覚しゅうかくが戻って来たと思ったら……なまぐさい。

 それに、いつの間にかマット──お風呂マットに寝かされてるし。

「どうじゃ? 痛いことはされておらんじゃろ?」
いたいってほどでも無いけど、手首とか指とかぐきぐきする~」
「……あれほど無理するなと言っておったのに……」
「なに?」
「なんでもない。それで、どうじゃった?」

 どうって言われても……

「なんか、周りが死屍しし累々るいるい、なんだけど?」

 見回すと、女の人が折り重なって倒れてる。何あれ?

「気にするな。皆、天国にイっておるだけじゃ」
「ダメじゃん、天国行ったら」

 まあ、表情はふやけてるから大丈夫……か?

「ぬるぬるされるって、こーゆうことだったのね?」

 身体じゅう粘液ねんえきまみれになってる~。

 またしても、ボクは、サザレさんたちに身体を洗われる羽目はめに……。

 スペシャルソープのおかげで、またいい匂いに戻ったけどさ~。
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