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3.喜多村本家に居候

142.バレバレでした……

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「こちらです」
 気更来きさらぎさんに導かれて行った先は三階、サザレさんに連れて来られたあの部屋。

「なるほど、ね~。って羽衣さん?」
 部屋に入るとしばりあげられた羽衣はごろもさんがベッドに横たわる。かたわらにささ打木うちきコンビ、護衛の歩鳥ほとり斎木さいきコンビまでいる。

「みんなどうして、ここに?」
「我らもご相伴しょうばんあずかることに」
「ご馳走ちそうさまです」
「意味、分かんないけど……」
 なに言ってんの、いったい? みんなが羽衣さんを起こしてベッドから退ける。

「まあまあ、特製とくせいのお茶を飲んでください──」
 そのあと裸で横になりゴーグルを着けてください、と気更来さんに手順を説明される。

「これって何が始まるの?」
 コップを受け取り気更来きさらぎさんに聴く。

「──喜多村謹製きんせいたのしく子作りゲーム』、だそうです」
「なにその……なにその……身もフタもない名前」
「そう言わないでください。サキ様が寝食しんしょくを忘れつくりあげた傑作けっさく自画じが自讃じさん)、だそうですので」
 二回も〝なにその〟と言わなくても分かります、ってあきれられる。

「ええっ、サキちゃんが創ったの?」
「まあ、サキ様とアシスタントAI、ですけどね?」
「はあ、なるほど……」

 また、みんなの前で裸か~。肌着は着けてていいよな?

「こちらをお飲みください」
「うっ、またあの苦い麦茶?」
 飲んでみるとかすかに苦味にがみを感じる。苦い麦茶のうすめたバージョンだね。

「精力を持続させる薬だそうです」
「は~、なるほど……。そりゃあガブガブ飲んだら眠れなくなるわ~」
「は?」
「──いや、こっちの話」

 精力茶を飲んだあと、襦袢じゅばんぎ横たわると頭回りで保持するゴーグルを着ける。

「では、メニューから『ゲーム』を選んで」
「──選んだよ。〝子作りゲーム〟ってあるね」
 てか、それしかないから他を選べない。

「では、それを起動させると──」
『起動させた』
 起動させた直後、声が退しりぞく感覚? と言うのか、微妙びみょうな音のタイムラグを感じる。

『──ちょう覚としゅう覚が遮断しゃだんされ、その他の感覚がゲーム・プログラムに乗っ取られるそうです』

『それって大丈夫なの?』
『サキ様によると大丈夫らしいです』
『らしいってなに。すっごく不安』
『仕方ありません。初・人体実験──実地じっち試験しけんですので』

『オ~イ! また、人をおもちゃにして~。やめる。あれ? あれれ?』
 手を頭にやり、ゴーグルを脱ごうとしても脱げない。

無駄ムダな行為です。五感に運動感覚、そのフィードバックを乗っ取っていますから実体を動かすことはできません』
『だまされた~! 今、ボクを好き勝手できる状態じゃない? お風呂の時みたいに』
『まあ、そうなりますね~』って気更来さんが楽しそうに言う。

『他人事だと思って!』
『他人事ですから』
『お前たち、コロコロする。コロがしてやる~』
 感覚が回復したらヤる、絶対!

『お、落ち着いてください。ゲーム・クリアすればいいだけです』
『ああ、そうか!』
『そうですそうです』
 なんか、否応いやおうなく「子作り」させられるんだ。

『では、チュートリアルのミニ・ゲームです──』
 ゾンビが攻めてくるので、それをハンドガンその他で倒していくゲームらしい。

『──では、前に進みながら照準しょうじゅんしてショット。五感にラグがあれば左下のコンテキスト・メニューで各感覚のラグを最小に調整してください』
『うん……うわっ、来た。きんも~。エイ! エイ!──』
 瓦礫がれきかげから、のそりのそりとゾンビが現れ、ボクを見つけると歩みよってくる。

 それに照準してトリガーを引く。ブローバックの軽い反動を感じ弾丸だんがん発射はっしゃ。ゾンビにあたると軽くノックバックして一瞬いっしゅんゾンビが静止する。

『そうそう。その調子』
『──こいつ全然、倒れない』
『はい。歩きはそれでいいです。ちょっと走って止まり、走って止まりしてラグ調整してください』
『いきなり、さっきのゾンビが消えた』
『チュートリアル──』
『だったね』
 十分ほどいろいろな動作や反応の調整をり返す。

『キョウ様、素晴らしいです。レスポンスは標準以上ですね~』
『そ、そう?』
『では、本番。ウイ・ゾンビが現れますのでたたきのめしてください』
『ウイ・ゾンビ?……りょ、了解』

 それから廃墟はいきょだか古城だかのフィールドを彷徨さまよって羽衣さん似のゾンビをち倒していく。

『これってさ~──』
『なんです?』
『──撃つたびに気持ちいいのは、なんとかならない? そのたびに照準が狂ってりにくい』
『ゲーム・コンセプトをるがすこと言いますね~。ゲームして気持ちよくなり子作りの忌避きひ感をなくそうってコンセプトなので無理だと思います』
『なんかだまし打ちみたいでイヤなゲームだな~。ゾンビが出るのもボク好きじゃない』
 そもそも、単なるシューティングであって子作りの「こ」の字もない。

『それは、これからの課題かだいですね。もうウイがダウン寸前です。とどめのランチャーにえて仕留めてください』
『ランチャー……ああ、これね』
 右下に長細い筒を表したアイコンがある。それを押すとハンドガンからランチャーに持ち換わる。

『外さないように。くれぐれも二発まででお願いします』
『ん? 分かった。エイ!──あ、ああ~、なにこれ? あ~~!──』
『ヤりました! ウイ・ステージ、クリアです』
『──はあはあはぁ~~。……すごく気持ちいいけど疲れる~』
 ──ん? ウイ・ステージ? どゆこと?

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