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4.本家からの再出発
168.蒼湖(おうみ)の学校事情
しおりを挟む「壁内学園ってどんなところ?」
店まで行く道すがらマキナに訊く。
「ああ、喜多村で預かっている男子が通う、と言うより寄宿学校だな」
「はあ~、だから囲ってるって非難されてるの?」
「まあ、そんなところだ。元来は危害防止に預かっていたんだが、壁外に出るものが居なくてな、見合いを勧めるも、中々成婚に到らない。ゆえに喜多村が囲って外に出さないんだと何事につけ槍玉に上がる」
「それじゃあ、追い出すワケにもいかないんだね……」
「婚姻すれば保護を受けられるが、身一つでは生活もままならない」
すぐに貴金属店に着いて話をやめる。店に来たのはアヤメさんの指環にチェーンをつけてネックレスにするため。
「あのさ~」
店内の商談スペースにあるソファーでカエデさんが訊いてくる。タンポポちゃんたちは、ショーケースの宝石を眺めてる。
「何ですか?」
「話だと転校しちゃうんだね?」
「そうみたいです」
「私もキョウちゃんの学校に転校、しようかな~って」
「もう卒業でしょ? 誠臨でいいじゃないですか?」
「卒業まで待てないよ」
「それに仕事はどうするんです?」
「仕事は、どこか喜多村関連に配置代えしてもらえば何とかなる」
「そこまで覚悟があるなら……。でも、たった三ヶ月ですよ?」
「構わない」
カエデさんは意志が堅いようだ。卒業間近で転校しなくてもいいと思うんだけど。
「キョウちゃん、私も何とか親を説得してくるよ」
「うん。親なんてチョロい」
タマちゃんたちも話に乗って転校に意欲を示す。
「はあ~……だったら説得してから、こっちに来ればよかったじゃん。そうすれば、問題にならなかったでしょうに」
「う″っ……夜だったから」
「思い立ったが吉日って言うから、つい」
「そう言う時は、時間を置いて考え直そう? タマちゃんは、何かにつけて突っ走りすぎる傾向があるよ?」
「そんな、こと、ないよ?」
「あ~、私もだけどそう言われるとタマちゃん、思い入れが過ぎるかも?」
「う″っ……水無ちゃんまで言う?」
「でしょ? 次はちゃんと許可もらってから来て。それからボクに連絡してから、ね?」
指環のネックレス化はチェーンを決めるとすぐに加工してくれた。ついでに婚約指環もお願いすると簡単に引き受けてくれる。
これで薬指にずらずら~っと指環が並ばずにすむ。
「このあと、どうする? ボク、下着とか普段着を買いたいんだよね~?」
「それでいいよ」
「写真、撮っていいなら」
「それはやめて?」
いやな予感がしちゃったじゃないか……。
「お待ちしておりました~」
果たして下着売り場にサガラが待ち構えていた。
「さあ、皆さんのオナペット・少年Kがネタを提供しに来ましたよ~!」
しまった。その罠は考えてなかった。サキちゃんだな? そうに違いない。
「オナペット? 何だそれは?」
「キョウちゃん、ど~言うこと?」
「さ、さあ? ボクにもさっぱり」
マキナたちは、あれを知らないんだ……。
「みんなは知らないの? 蒼湖ニュース・バラエティーのネット配信」
「あれは永久保存版」
「ちょっと、水無ちゃんタマちゃん」
マキナたちが頭をひねってると言うのに、タマちゃんたちが答えてしまう。余計なことを!
「ネット? 配信?」
あ~~ほら、みんな携帯、いじり出したじゃないか。
「いや、見ないで。そこのサガラにハメられたんだよ?」
「ハメられた……いつの間に」
「キョウちゃん、わたし知らない。詳細」
「いや、言葉の綾だから」
誤解のないよう、着たらタダになると言う甘言に乗せられ、やらかしたと説明する。
そして、また今回も性懲りもなくサガラが手ぐすね引いて待っていたんだと付け加える。
「──分かるよね?」
企図している人が居るんだと暗に示唆する。
「ん~、イメージ戦略かも知れないな……」
「そんな大したものじゃないと思うけど?」
「分かった。乗せられてこい」
「えっ? いいの? てっきり断わるとばかり」
「そうだな~、見られて減るもんじゃなし」
いや、そこは止めてよ。
「いいよ~、いいよ~」
またしても、片っ端から欲しい肌着を着けてはカメラや携帯の前に現れる。
「もっとエロっぽいの着て」
「それは間に合ってるから。タマちゃん、それ以上、言うと、分かってるよね?」
「……何のことやら?」
「これよ、これ──」
人さし指と親指で丸を作って見せる。
「──即刻、体で返してもらうから」
よく分からなかったようだけど、おもむろに顔色を青くしていく。
「分かった……キョウちゃんが望むなら……」
「いや、そうじゃなくて」
タマちゃんが服のボタンに手をかける。まったく……でも待てよ。
「もう一人、モデルがいますよ?」
サガラに声をかけタマちゃんを指さす。
サガラは、タマちゃんを見て何やらカメラマンと相談し始める。
「こちらの方は喜多村家縁者ですか?」
「いえ、違いますけど」
「では、ダメです。需要はあると思いますが、喜多村の方でないと……」
やはり、喜多村のイメージ向上のためなのだろう、このファッションショーは。
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