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4.本家からの再出発
171.キョウがいない……
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「いません……」
「こちらも同じく」
「見つかりません」
「やはり拉致されたと見るべきか……」
「マキナ様、いったいどうすれば……」
護衛たちにバックヤードや店内、周囲を探索させるも手がかりは脱ぎ捨てられた黒服のみ。
「今は、お館様の返事を待とう……」
大っぴらに動くには、上の指示を仰ぐしかない。
「車両で拐われたとすると周囲の監視カメラから拉致車両を割り出し……」
「その車両をNシステムで追跡するしかないか?……」
護衛たちが言うが、それも万能ではない。後手ごてになるし、車両の乗り換えや、ナンバーを変えられると追跡が途絶える。
「せめて拉致犯の手がかりがあれば……」
「マキナ様、放置された黒服を調べれば何か分からないでしょうか?」
「遺留DNAで持ち主が分かっても雇われの可能性もあるしな……」
何よりそんな時間的猶予はない。
「キョウは、もう帰ってこないの?……」
「イヤだ。キョウを見つけて?」
「今頃、ぐへへされてる……って場合じゃなかった」
「タマちゃん……不謹慎」
「ゴメン……」
「マキナ様……」
「分かってる。分かってるが……」
今は、指示を待つしか……。
『ワシじゃ。根回しは済んだ。フルアクセスを許可する』
「は、はい」
笹たちが通信を受けたようだ。
『必ず、キョウを取り戻せ。もし……』
「もし?」
『もし、奪還が叶わぬならば……抹殺せよ……』
「そんな~」
「どうした?」
悲愴感漂う応答に、つい口を挟んでしまう。
『マキナ様たちには、どう申し訳すれば?……』
『それは……ワシがあとで宥める。忘れるな、キョウには……キョウは、表に出せぬ秘密の塊じゃ』
「了解、しました……。みんな、ワゴンと装甲車に」
笹は、通信を終える。すぐに対応を聞きたいところだが、まずは指示に従う。
護衛たちは、一台のワゴンに乗り込む。上はどう判断されたかに耳を傾け見守る。
「フルアクセスの許可が下りました。気更来、頼む。私では不慣れで役に立たん」
「分かった……」
「マキナ様たちは、装甲車で屋敷にお戻りください。ご学友は五条様、お願いします」
「ああ、かまわん。元よりその心算だったしな」
五条ツバサ先生が答える。
「いや、オレも行く。拐ったヤツに一矢報いねば腹の虫が治まらん」
「しかし、直接対峙するとなると非常に危険です」
「承知の上だ」
笹は、オレの同行をお館様に報告すると、仕方ないと了承を受け、オレの護衛を言い渡される。
「見つけた! 湖西に移動するワゴン車、乗り換えもナンバーも変えていない」
気更来が見つけたと報告する。
「よし、行くぞ!」
「私も付いて行く。ケガしてたら医療関係者がいると便利だよ」
アヤメまで付いてくると言い出す……。
「私は……何も役立てないかも知れないけど……連れていって」
カエデもか。
「うちは……」
ツバキは、苦々しく思っているが役立てないと考えているのか、その先の言葉を継げないでいる。
「ツバキ様以下は、お戻りください。必ず、キョウ様を取り返します! 五条様はご学友を。みんな、情報リンクしてくれ」
「「お願い」」
「──キョウちゃんをお願い」
「──頼みます」
「では、行ってきます」
ツバキたちを残しワゴン車二台で出発する。
「ヤツラ、西へ行ってどうするんだ?」
「分からない」
「街中に隠れて目をくらませ、別の車にするとか?」
「待て。左折して連絡橋に入るぞ」
追尾している気更来が知らせる。
「湖南に逃げるか」
「空港かも?」
「空港じゃあ、どうやって荷物検査を──」
「隣国か?!」
閃いたのか笹が叫ぶ。
「確かに、それならば、検査はされない」
そうだ。キョウに執心するヤツがいたじゃないか。しかも襲撃の証拠が無く、手出しできず野放しのままだ。
「羽衣、空港に隣国の航空機は駐機してるか調べて──」
「もう、やってる……見つけた。駐まってる。四日前からだ。離陸させないよう申請する」
「──上出来。何とか当該車両に追いつけずとも遅らせられれば……」
コンビを組んでいるだけあって気更来と羽衣は息が合ってる。
「──そうか、その手があった」
羽衣は、妙案が浮かんだようだ。入場ゲートを通過させるのに遅延処理させるよう介入すると言う。
危険物持ち込みの検査をゲート管理者に追加したと報告する。
待ってろよ、必ずキョウを取り戻す。
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