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Chapter11(転生編)
Chapter11-⑧【Moonlight】
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違和感はプールに浮かぶ水泡だった。
照明を映す水面が乱れる。
その水泡が陽子に迫る。
誰も気付いていない。
陽子は瞳を閉じ、サビの瞬間を待っていた。
突然、プールの中から人が現れた。
全身ラバースーツを着た男の登場に皆が息を飲む。
演出と思ったのかもしれない。
ラバーマンはシュノーケルを外すと、プールサイドに上がる。
ラバースーツに見覚えがあった。
その正体はシオンだけが知る。
ずぶ濡れのラバーマンが手に持つ物にライトが反射した。
その瞬間、プールサイドに悲鳴が響く。
誰もが演出でない事を理解した。
シオンは呆然とラバーマンを見詰める。
一体、何れ位、プールの中に潜んでいたのか?
その執念に足がすくむ。
陽子の瞳にライトを浴びたナイフが映った。
咄嗟に背を向け、テツオを守る。
一言も発しないラバーマンがナイフを振り上げた。
「壁が今立ちふさがる
僕らを拒むのか何かから守るためなのか
解らずに立ち竦んでる」
サビがシオンの背中を押した。
陽子は背を見せて、しゃがみ込んだ。
振り下ろされたナイフが赤く染まる。
「どうして?」ラバーマンが口を開く。
「テツオは大丈夫か?
陽子さん、早くお父さんさんの所へ!」
ラバーマンの声を掻き消し、陽子の肩を掴む。
陽子は頷くと、よろける足でプールサイドを駆けていく。
「どうしてあの女を守るのですか?」
「守るのは陽子さんじゃない、テツオだよ。」
声を振り絞る。
足を伝う赤い液体がプールへ流れていく。
「結果は同じです。
あの女はシオンさんの大事な人を殺したのです。
スマホを持った女が突然進路を塞いだと、加害者から聞いてきました。」
「知ってるよ。
陽子さんがバイクの正面に立ち、事故を起こしたのだと。」
「だったら何故?」
「だからテツオを守る為と言っただろ。」
穏やかな声で言い聞かす。
「早く逃げて。
アキノリと陽子さんに接点はない。
ここを逃げ切れば、きっと捕まらないから。」
「シオン君、大丈夫か!」
背後から大門の声が迫ってきた。
「早くして!」
赤く染まったナイフを持つと、ラバーマンを押す。
「僕が愛していたのはシオンさんだけです。」
「たから…、そっとしておいてって、書いたのに…。
アキノリは慌てん坊だな。」
「えっ?」
「陽子さんを殺して…、テツオを連れて戻るつもりだったんだ。
三人で幸せに暮らす予定が狂っちゃったよ…。
さあ、早く逃げて…。」
アキノリを突き飛ばす。
ラバーマンが振り返りながら、プールサイドを走っていくのが見えた。
『もっと全力で走れば良いのに…、呑気だな…。』
シオンは小さく笑うと、最後に力を絞り出す。
これからが最大の演出だ。
「待て!」大門が追うのが分かる。
「うわぁ!」奇声を発し、大門へ向かう。
「絶対に逃がさないぞ!」
死に物狂いで押さえつける。
「おっ、おい、しっかりしろ!
犯人は後ろだ!」
錯乱を装い大門にしがみつく。
『もう逃げ切れただろうか?』
力が抜けていき、意識が遠退く。
それでも大門を離さなかった。
「シオンさん、しっかりして!
直ぐに救急車が来ます!」
「テツオに怪我はないか?」
「ええ、シオンさんが守ってくれたから。」
「なら良かった…。
陽子さん、ドレスが汚れるよ…。」
震える手を伸ばし、小さな指を握る。
(つづく)
照明を映す水面が乱れる。
その水泡が陽子に迫る。
誰も気付いていない。
陽子は瞳を閉じ、サビの瞬間を待っていた。
突然、プールの中から人が現れた。
全身ラバースーツを着た男の登場に皆が息を飲む。
演出と思ったのかもしれない。
ラバーマンはシュノーケルを外すと、プールサイドに上がる。
ラバースーツに見覚えがあった。
その正体はシオンだけが知る。
ずぶ濡れのラバーマンが手に持つ物にライトが反射した。
その瞬間、プールサイドに悲鳴が響く。
誰もが演出でない事を理解した。
シオンは呆然とラバーマンを見詰める。
一体、何れ位、プールの中に潜んでいたのか?
その執念に足がすくむ。
陽子の瞳にライトを浴びたナイフが映った。
咄嗟に背を向け、テツオを守る。
一言も発しないラバーマンがナイフを振り上げた。
「壁が今立ちふさがる
僕らを拒むのか何かから守るためなのか
解らずに立ち竦んでる」
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陽子は背を見せて、しゃがみ込んだ。
振り下ろされたナイフが赤く染まる。
「どうして?」ラバーマンが口を開く。
「テツオは大丈夫か?
陽子さん、早くお父さんさんの所へ!」
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「どうしてあの女を守るのですか?」
「守るのは陽子さんじゃない、テツオだよ。」
声を振り絞る。
足を伝う赤い液体がプールへ流れていく。
「結果は同じです。
あの女はシオンさんの大事な人を殺したのです。
スマホを持った女が突然進路を塞いだと、加害者から聞いてきました。」
「知ってるよ。
陽子さんがバイクの正面に立ち、事故を起こしたのだと。」
「だったら何故?」
「だからテツオを守る為と言っただろ。」
穏やかな声で言い聞かす。
「早く逃げて。
アキノリと陽子さんに接点はない。
ここを逃げ切れば、きっと捕まらないから。」
「シオン君、大丈夫か!」
背後から大門の声が迫ってきた。
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赤く染まったナイフを持つと、ラバーマンを押す。
「僕が愛していたのはシオンさんだけです。」
「たから…、そっとしておいてって、書いたのに…。
アキノリは慌てん坊だな。」
「えっ?」
「陽子さんを殺して…、テツオを連れて戻るつもりだったんだ。
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さあ、早く逃げて…。」
アキノリを突き飛ばす。
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「テツオに怪我はないか?」
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「なら良かった…。
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震える手を伸ばし、小さな指を握る。
(つづく)
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