妄想日記1<<ORIGIN>>

YAMATO

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Chapter11(初戀編)

Chapter11-④【traveling】

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「お前等、少しはTPOを弁ろ。」
タケルが苦笑しながら立っていた。
「タケル、約束通りヤマトさんを連れて来たよ。」
ユーキが自慢げに言う。
タケルはTシャツにサーフパンツを穿いている。
Tシャツでは乳首の様子が分からない。
ノンケが見たら、どう見ても爽やかなイケメンだ。
とても冷徹なSだとは思わないだろう。
張りのあるしなやな黒い筋肉と上がったヒップはクォーターの特権だ。
これはいくらトレーニングを積んでも、手に入らない。
「俺は先に出てる。
駅前のカフェにいるから、トレーニング終わったら来いよ。」
タケルが背を向け歩き出す。
発達した広背筋はハーネスが似合いそうだ。
『やはりハーネス男はタケルなのか?』
 
「おう、意外と早かったな。」
パスタを頬張るタケルが声を掛けてきた。
「タケルが帰ったらヤマトさんのやる気がなくなったんで、早めに切り上げたよ。」
ユーキは不満げに口を膨らます。
タケルはレザーパンツにロングブーツを履き、タンクトップを重ね着していた。
「そんな事はないんだけど、どうしても聞きたい事があったから。」
照れ隠しに理由を言う。
「俺の事は呼び捨てでいいぜ。
それで聞きたい事ってなんだい?」
タケルは話し易いように、先を促す。
「何でミサキさんと揉めてたのか気になって。」
単刀直入に聞く。
「やはりその事か。」
苦笑いを浮かべたタケルがコーヒーを啜る。
「ヤマトさんって、SNSで小説を書いているだろう?」
カップから離れた口は予想外の質問を発した。
「えっ、そうなの? 」
ユーキも興味を持った様だ。
「まあ、小説と言うか、願望を文章にしているだけさ…。」
秘め事をばらされ、言葉尻が消えていく。
「ヤマトさんの願望だったら、めちゃ淫乱そう。」
からかうユーキを睨む。
「その文章力を買って、旅行に同行させたいとミサキに頼んだんだ。
もちろんヤマトさんが行くと言えばだけどさ。」
その説明はより思考を混乱させた。
 
「どういう事?
エロ小説と旅行って、全く繋がらないんだけど…。」
柔軟さに欠ける脳では理解出来ない。
「実家は旅館をやっているんだが、今一つパッとしない。
今後、立て直していく為に情報を収集している。
いろんなホテルに泊まって、人気の秘訣をレポートに書き留めているんだ。
足りない物があるから、リピートしない。
何が足りないか知りたいんだ。」
タケルが熱く語る。
話が大きくて、自分に関係あるとは思えない。
「行った先でインタビューしたり、写真を撮ったりで忙しい。
脇でそれらを書き留めてくれる人が必要なんだ。
それをヤマトさんに頼みたい。」
タケルが俺の目を見て言った。
「でも二人で旅行に行けば、当然アレはするよね?
それならミサキが怒る訳だよ。」
ユーキはごく当然の事を指摘する。
「結果的にはそうなる。
だから気に入った人に頼みたいんだ。」
タケルの真剣さは伝わってくるが、俺にはピンとこない。
そんな仕事をてきぱきと熟せるか、自信がない。
「で、どこ行くの?」
ユーキが興味本位で聞く。
「先月はオーストラリアに行ったんだ。
留学している知り合いがいたから、そいつに頼んだんだ。
今回はベトナムかタイを考えている。
ヤマトさんの好きな方でいい。
どちらにしても…。」
もう決まった如く話を進めていく。
「ちょ、ちょっと待って!
俺にそんな事…、出来ないよ。
英語だって満足に話せないし。」
慌てて話を遮る。
ここではっきり断らないと、大変な事になりそうだ。
「大丈夫。ヤマトさんは俺の言った事をパソコンに入力してくれればいい。
それだけだ。
まあ最悪、側にいるだけでいい。」
タケルは臆することなく言う。
言われた方が恥ずかしくて赤面する。
 
 
(つづく)
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