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Chapter3(楓編)
Chapter3-②【GOOD BYE MY SCHOOL DAYS】前編
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突然の別れの理由が見付からない。
記憶のない最後の晩までは良好な関係だった。
一つを除いては。
ユーリは否定したが、やはりケイジとのキスの所為だろうか?
「一晩中、寝てたから心配したよ。」
目覚めた時、そう言われた。
単なる言い間違いかも知れないが、そうは違う様に思えた。
30時間以上寝てた人に間違える訳がない。
敢えてそう言ったのだ。
それが正しいとすると、ケイジの死にユーリが関わっているのか?
目の前の景色がモノクロに変わった。
「ワタル以上に大切な者に気付いた。」と言った。
勝手に『者』と変換していたが、もしかすると『物』なのかもしれない。
『死』と『モノ』が関連付かない。
何故、『死』を隠す必要があったのか?
それに『気付いた』という言い方に引っ掛かる。
もともと知っていたが、ハワイに来る迄気付かなかったとい意味だ。
漠然としていたモヤモヤには理由があったのだ。
順を追って考えていくと、おかしな所は満載だった。
本能がそれを訴えていたのだ。
「あー、惜しい事をしたな。」
シンが伸びをした。
「仲が良かったんだ?」
見掛けに寄らない発言に少し見直す。
「いや、そんなんじゃねぇ。
あいつにCD貸してたんだ。」
シンは吐き出した煙をワタルの顔に吹き掛けた。
「シン…さんは商店街で顔が利く?」
苦笑いを浮かべて、煙を払う。
「勿論さ。一応青年会の幹事やってるからな。」
シンが胸を張った。
「だったらさ、従業員探してる店ないかな?
俺、無職で仕事探してるんだ。
住み込みだと、ありがたいんだけど。」
過ぎた話より、目先の心配事に頭を切り替える。
シンがワタルの顔をまじまじと見た。
「頭を使う仕事は無理だけど、身体だけは丈夫だから何でもするよ。
出来れば履歴書とか必要ない所がいいんだ。」
黙った事で心当たりがあるのかと思い、自分を売り込む。
「本当に何でもするか?
口先だけじゃないだろうな。」
「ああ、何でもする!
住む所があれば、後は何も必要ないし。
目星あるのか?」
身を乗り出して聞く。
「ああ、大ありだ。
しかも住む所だけじゃないぜ。
飯も付けてやる。
衣食住込みだ。」
シンの股間が活気付くのをワタルは見落としていた。
「さあ、ここがお前の新しい職場だ。」
「ここって、シンさんの店じゃないか。」
見覚えのある店構えに戸惑う。
「おい、今から社長と呼べ。
いや、シン様がいいかな。」
店の中へ入っていく姿を不安げに眺める。
「二階が住みかだ。
通勤時間なしだぞ。
こんな好都合な職場はないぜ。
お前、料理出来るか?」
シンは前掛けをし、鉢巻を締めた。
ワタルは無言で首を振る。
「まあ、いいか。
飯炊いて、魚焼く位だ。
誰にでも出来る。」
シンはカウンター越しの厨房へ入ると、手際よく仕込みを始めた。
「何、ぼっとしてんだ。
先ずは便所掃除だ!
便所には神様が住んでるんだぞ。
罰が当たらない様にピカピカにしろ!」
怒鳴られ、慌ててトイレへ駆け込んだ。
(つづく)
記憶のない最後の晩までは良好な関係だった。
一つを除いては。
ユーリは否定したが、やはりケイジとのキスの所為だろうか?
「一晩中、寝てたから心配したよ。」
目覚めた時、そう言われた。
単なる言い間違いかも知れないが、そうは違う様に思えた。
30時間以上寝てた人に間違える訳がない。
敢えてそう言ったのだ。
それが正しいとすると、ケイジの死にユーリが関わっているのか?
目の前の景色がモノクロに変わった。
「ワタル以上に大切な者に気付いた。」と言った。
勝手に『者』と変換していたが、もしかすると『物』なのかもしれない。
『死』と『モノ』が関連付かない。
何故、『死』を隠す必要があったのか?
それに『気付いた』という言い方に引っ掛かる。
もともと知っていたが、ハワイに来る迄気付かなかったとい意味だ。
漠然としていたモヤモヤには理由があったのだ。
順を追って考えていくと、おかしな所は満載だった。
本能がそれを訴えていたのだ。
「あー、惜しい事をしたな。」
シンが伸びをした。
「仲が良かったんだ?」
見掛けに寄らない発言に少し見直す。
「いや、そんなんじゃねぇ。
あいつにCD貸してたんだ。」
シンは吐き出した煙をワタルの顔に吹き掛けた。
「シン…さんは商店街で顔が利く?」
苦笑いを浮かべて、煙を払う。
「勿論さ。一応青年会の幹事やってるからな。」
シンが胸を張った。
「だったらさ、従業員探してる店ないかな?
俺、無職で仕事探してるんだ。
住み込みだと、ありがたいんだけど。」
過ぎた話より、目先の心配事に頭を切り替える。
シンがワタルの顔をまじまじと見た。
「頭を使う仕事は無理だけど、身体だけは丈夫だから何でもするよ。
出来れば履歴書とか必要ない所がいいんだ。」
黙った事で心当たりがあるのかと思い、自分を売り込む。
「本当に何でもするか?
口先だけじゃないだろうな。」
「ああ、何でもする!
住む所があれば、後は何も必要ないし。
目星あるのか?」
身を乗り出して聞く。
「ああ、大ありだ。
しかも住む所だけじゃないぜ。
飯も付けてやる。
衣食住込みだ。」
シンの股間が活気付くのをワタルは見落としていた。
「さあ、ここがお前の新しい職場だ。」
「ここって、シンさんの店じゃないか。」
見覚えのある店構えに戸惑う。
「おい、今から社長と呼べ。
いや、シン様がいいかな。」
店の中へ入っていく姿を不安げに眺める。
「二階が住みかだ。
通勤時間なしだぞ。
こんな好都合な職場はないぜ。
お前、料理出来るか?」
シンは前掛けをし、鉢巻を締めた。
ワタルは無言で首を振る。
「まあ、いいか。
飯炊いて、魚焼く位だ。
誰にでも出来る。」
シンはカウンター越しの厨房へ入ると、手際よく仕込みを始めた。
「何、ぼっとしてんだ。
先ずは便所掃除だ!
便所には神様が住んでるんだぞ。
罰が当たらない様にピカピカにしろ!」
怒鳴られ、慌ててトイレへ駆け込んだ。
(つづく)
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