妄想日記6<<EVOLUTION>>

YAMATO

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Chapter3(楓編)

Chapter3-⑥【夏蝉の音】後編

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「あっ…。」
弾け飛ぶシャワーの中で二人の男が交尾していた。
壁に手を付き、尻を付き出している男に見覚えはない。
ゴーグルをした男はシャワーの放水の中に頭を突っ込んでいる。
後方で腰を振っている男はリュウノスケだった。
リュウノスケが出て行った後を追っていれば、今壁に手を付いているはワタルだ。
掘られている男が部外者の存在に気付く。
上半身を激しく揺らす。
伸びた腕の奥で、乳首に食い込んだチェーンが淫らな音を奏でた。
「引っ張ってやれよ。」
リュウノスケが口を開く。
隆起したマラが腰に巻いたタオルを落とす。
鋭い眼光が突き刺さる。
ワタルは恥ずかしさにタオルを拾うと駆け出していた。
 
肩を落として、夜道を歩く。
二日間身体を洗ってない上に、至る所に塩が膠着いている。
自分の臭いに辟易した。
折角銭湯に行ったのに、またウエットティッシュで拭くだけとは。
寝苦しい夜が続く。
湿度が高い上に、呼吸をする度に饐えた臭いが鼻を衝く。
眠い筈だが、微睡は訪れてこない。
足音が階下から聞こえた。
『シンか?』
だが忍び足はシンの物ではない。
『ど、泥棒?』
起き上がろうとするが、手足が動かない。
『金縛り!』
同時に耳鳴りがした。
足音が近付く。
階段を上ってくる。
ガタガタ震えるが、何も出来ない。
布団を引き寄せる事も出来なかった。
何があっても開くまいと、ぎゅっと瞼を閉じる。
『来るな!来るな!こっちへ来るな!』
夜の訪問者の話を何処かで聞いた。
『誰に…、聞いたんだっけ…。』
耳鳴りが遠ざかる。
それに伴い意識も遠くなっていく。
『最近なんだけどなぁ…。』
動いた手で汗を拭った。
 
「今日のランチは休みだ。
四時迄に戻ってこい。」
朝定食が全て捌け、シンは上機嫌だ。
「ふわぁー、シンさんはどうするんですか?」
欠伸が止まらない。
今朝は特に寝汗が酷かった。
お陰で全く寝た気がしない。
突き刺す様な陽射しの所為で、布団は乾きそうだ。
「勿論、日焼けだ。
もう梅雨が開けたんじゃねぇか?
マジ血が騒ぐぜ。」
シンは厨房の隅に置いてあるバッグに手を伸ばす。
「ランチを休むなら、俺も行こうかな。
ジムの入会は午後からでも充分だし。
眠くて仕方ないんですよ。
ふわぁー。」
ワタルはまた欠伸をする。
「付いて来るのは勝手だが、オイルは貸さねぇぞ。
隣のコンビニで買ってこい。
なかったら斜め前のドラッグストアにある筈だ。
絶対に貸さないからな!」
シンはバッグを掴むと、大事そうに抱えた。
 
蝉のけたたましい鳴き声さえ子守唄に聞こえる。
何故、眠れなかったが、記憶にない。
強烈な陽射しの下でも直ぐ寝れそうなのに。
「お前さ、あんな暑苦しい部屋で安眠を望む方が無茶なんだ。
せめて扇風機位、買ったらどうだ?」
シンの声が遠ざかる。
微睡む瞬間が一番気持ちが良い。
「ちっ、寝ちまったのか。
いいカモ来ねぇかな…。」
全ての音が遮断された。
 
 
(つづく)
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