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Chapter3(楓編)
Chapter3-⑦【この街】後編
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この男に興味が湧いてきた。
隣のマシンに移ると、ゆっくりと走り出す。
「僕だって相手を選ぶさ。
君みたいなバリウケなんて、手を出さないよ。
どうせマグロなんでしょ。」
並んで走る男がワタルを見た。
「どうしてバリウケって分かるんだ?」
当たっているが、決め付けられた事が面白くない。
「その質問が答えさ。」
小さく笑った。
「僕はタク、君は?」
男が名乗る。
「ワタルだけど…。」
「ワタルか、ウケらしい名前だね。
じゃあ、ワタルさん、バリウケ同士仲良くしよ。」
タクはボタンを押すと、スピードを上げていく。
大きく揺れる胸元からチェーンの擦れる音が聞こえてきた。
『ジムでもクリップをしてるのか!』
ワタルはタクの奔放さ呆れる。
「駅の脇にトイレがあるだろ。」
タクが窓外の景色を見たまま言う。
見下ろす先に駅舎がある。
視線を右側にずらすと、便所マークに当たった。
「あそこさ、発展トイレなんだ。
ここでチェックして、タイプが入ったら急行するんだ。」
タクは獲物を追うハンター如く、腕を振りながらも視線だけは外さない。
「この町は本当に発展場だらけなんだな。」
ワタルは心底感心する。
「もしかして新参者?」
タクの視線がワタルに向く。
「ああ、まだ越してきて間もないんだ。
色々、教えてくれよ。」
見開く瞳に自分の顔が映る。
『そんなに驚く事か?』
ワタルはこの少し変わった男に興味を覚えた。
「そろそろ戻る時間だ。」
ワタルは壁掛け時計に目を向けると、三時に近い。
シャワーを浴びるにはそろそろタイムリミットだ。
パネルを操作し、マシンを低速にする。
「えー、帰っちゃうんだ!
この後は?」
タクが残念そうに言う。
「四時から仕事なんだ?」
「夜の仕事?
なら僕と同じだ。
何してる人?」
タクもスピードを落とす。
心地好いチェーンの音も次第に小さくなっていく。
「駅の反対側の居酒屋なんだ。
さっきタクが掘られてた人の店。」
ワタルは卑猥な笑みを浮かべる。
「へー、あの人、居酒屋のオーナーなんだ。
って事は付き合ってるの?」
タクが疑惑の視線を向けてきた。
「な訳ないだろ。
もし付き合ってたら、俺の目の前でタクを掘らないだろ。
単なる従業員だ。」
「へー、そうなんだ。
でもあのピアスマラで掘られた事はあんだろ?
あれってアガルよな。
突かれたらM心に火が点くよ。」
タクは汗を拭きながらマシンを降りた。
股間の膨らみが欲求不満を物語っている。
「いや、それがないんだ。
あれで突かれたら病み付きになりそうでさ。」
「ああ、それって分かる!
付き合ってもないのに溺れるのってヤダし。
あー、ワタルがタチだったら最高なのに。
全然タチった事ないの?」
ベンチに座ったタクが上目遣いの視線を向けてきた。
「全くない訳じゃないけど…。」
ワタルは過去を振り返る。
知り合う相手にタチが多かった。
気が付くと責められてたのだ。
特にウケタチを意識した事はない。
(つづく)
隣のマシンに移ると、ゆっくりと走り出す。
「僕だって相手を選ぶさ。
君みたいなバリウケなんて、手を出さないよ。
どうせマグロなんでしょ。」
並んで走る男がワタルを見た。
「どうしてバリウケって分かるんだ?」
当たっているが、決め付けられた事が面白くない。
「その質問が答えさ。」
小さく笑った。
「僕はタク、君は?」
男が名乗る。
「ワタルだけど…。」
「ワタルか、ウケらしい名前だね。
じゃあ、ワタルさん、バリウケ同士仲良くしよ。」
タクはボタンを押すと、スピードを上げていく。
大きく揺れる胸元からチェーンの擦れる音が聞こえてきた。
『ジムでもクリップをしてるのか!』
ワタルはタクの奔放さ呆れる。
「駅の脇にトイレがあるだろ。」
タクが窓外の景色を見たまま言う。
見下ろす先に駅舎がある。
視線を右側にずらすと、便所マークに当たった。
「あそこさ、発展トイレなんだ。
ここでチェックして、タイプが入ったら急行するんだ。」
タクは獲物を追うハンター如く、腕を振りながらも視線だけは外さない。
「この町は本当に発展場だらけなんだな。」
ワタルは心底感心する。
「もしかして新参者?」
タクの視線がワタルに向く。
「ああ、まだ越してきて間もないんだ。
色々、教えてくれよ。」
見開く瞳に自分の顔が映る。
『そんなに驚く事か?』
ワタルはこの少し変わった男に興味を覚えた。
「そろそろ戻る時間だ。」
ワタルは壁掛け時計に目を向けると、三時に近い。
シャワーを浴びるにはそろそろタイムリミットだ。
パネルを操作し、マシンを低速にする。
「えー、帰っちゃうんだ!
この後は?」
タクが残念そうに言う。
「四時から仕事なんだ?」
「夜の仕事?
なら僕と同じだ。
何してる人?」
タクもスピードを落とす。
心地好いチェーンの音も次第に小さくなっていく。
「駅の反対側の居酒屋なんだ。
さっきタクが掘られてた人の店。」
ワタルは卑猥な笑みを浮かべる。
「へー、あの人、居酒屋のオーナーなんだ。
って事は付き合ってるの?」
タクが疑惑の視線を向けてきた。
「な訳ないだろ。
もし付き合ってたら、俺の目の前でタクを掘らないだろ。
単なる従業員だ。」
「へー、そうなんだ。
でもあのピアスマラで掘られた事はあんだろ?
あれってアガルよな。
突かれたらM心に火が点くよ。」
タクは汗を拭きながらマシンを降りた。
股間の膨らみが欲求不満を物語っている。
「いや、それがないんだ。
あれで突かれたら病み付きになりそうでさ。」
「ああ、それって分かる!
付き合ってもないのに溺れるのってヤダし。
あー、ワタルがタチだったら最高なのに。
全然タチった事ないの?」
ベンチに座ったタクが上目遣いの視線を向けてきた。
「全くない訳じゃないけど…。」
ワタルは過去を振り返る。
知り合う相手にタチが多かった。
気が付くと責められてたのだ。
特にウケタチを意識した事はない。
(つづく)
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