妄想日記8<<FLOWERS>>

YAMATO

文字の大きさ
20 / 219
Chapter3(推し燃ゆ編)

Chapter3-⑥【あの子コンプレックス】

しおりを挟む
「うん…。」
ショーンの事を言うべきか悩む。
今、嘘を訂正しなければ、後でもっと大事になりそうだ。
たった一人の友達を失いたくない。
ソラは可愛いを絵に描いた風貌だ。
確かに野郎系がこの業界のモテ筋だ。
だがソラの様なジャニ系も一定の需要がある。
加えてデカマラという武器を持っている。
これは野郎系にも匹敵するアドバンテージだ。
自虐する程、モテない訳ではない。
「でも声は掛かるんだろ?」
答を待つ間、イカを口に入れる。
「女性と親父からはね。
でも肝心のタイプからのアプローチは皆無なの。」
今度は中トロを飲み込んだ。
ソラは好きな順に食べていくらしい。
最後まで取っておく自分とは真逆だった。
「でもそのルックスなら、その内出来るさ。」
「あのね、その内なんて待ってられないの。
可愛いくて声が掛かるのは20代まで。
僕には時間がないのです。
この顔のおかげで短髪も似合わないし。」
ソラは笑うと口角が大きく上がる。
典型的な犬顔だ。
このルックスでコンプレックスを持つなんて、神様が怒るだろう。
顔、身体、マラ、全て最上級を求めている。
焦っていても、その理想の高さは譲れない様だ。
彼氏が出来ないのはその所為かもしれない。
「何、へらへら笑ってるの?
勝ち組は余裕だね。」
伸びた箸が上トロを奪い去った。
 
「前に発展場のジムでブラジャーをしてたマッチョを覚えてる?」
文句を言う前に思いがけない質問が返ってきた。
「あっ…、うん…。」
気持ちを見透かされた様で、曖昧な返事になってしまう。
「どっかで見た記憶があったんだ。
で、思い出したのがこれ。」
ソラは引き寄せたバッグから一枚のDVDを出した。
「えっ、ショ…。」
名前を飲み込めたのは奇跡に近い。
ぎゅっと唇を結び、手に取ってみる。
小刻みに震えてしまうのは酔いの所為だ。
『ダビデ、スレイブ契約』
エキゾチックな風貌に厚い唇は他人の空似ではない。
現在の極端に括れたウエストではなく、健康的なビルダー然としている。
まだ幼さの残る風貌からすると、かなり前の作品だろう。
 
シルバーのサスペンダータイツがその筋肉を覆っていた。
タイトなウェアが筋肉を締め付けている。
「あの人、ビデオモデルだったんだ。」
知らない振りを通す。
嘘の上塗りをしてしまう。
たが、もっと情報を聞き出したい。
その心理が勝っていた。
ショーンの事は何も知らない。
連絡先すら知らなかった。
唯一の情報はホストだって事だ。
それも偶然聞いたに過ぎない。
褒めて煽ててくれるが、自身の事は一切話してくれなかった。
ホストの前職がビデオモデルだった。
煌びやかな世界を歩いてきた。
そんなショーンが地味な自分を相手にするだろうか?
やはり裏がありそうだ。
「この顔、めちゃそそらない?
あー、こんな変態のイケメンと知り合いたい!」
ソラが手酌で満たしたグラスを傾ける。
「見ていいか?」
今はどんな些細な情報でも、喉から手が出る程欲しい。
ネガティブな思考を打ち消す何かを欲した。
「見たいの?
奥手のヒュウガには刺激が強いと思うけど。」
赤く染まった顔が憎まれ口を叩く。
円盤をトレイに乗せ、プレイボタンを押す。
グラスを持つと、中に波紋が出来た。
自分の心境の様だ。
一気に飲み込んで、それを消した。
 
(つづく)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

今度こそ、どんな診療が俺を 待っているのか

相馬昴
BL
強靭な肉体を持つ男・相馬昴は、診療台の上で運命に翻弄されていく。 相手は、年下の執着攻め——そして、彼一人では終わらない。 ガチムチ受け×年下×複数攻めという禁断の関係が、徐々に相馬の本能を暴いていく。 雄の香りと快楽に塗れながら、男たちの欲望の的となる彼の身体。 その結末は、甘美な支配か、それとも—— 背徳的な医師×患者、欲と心理が交錯する濃密BL長編! https://ci-en.dlsite.com/creator/30033/article/1422322

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。 漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。 陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。 漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。 漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。 養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。 陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。 漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。 仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。 沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。 日本の漁師の多くがこの形態なのだ。 沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。 遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。 内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。 漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。 出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。 休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。 個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。 漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。 専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。 資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。 漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。 食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。 地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。 この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。 もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。 翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。 この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

  【完結】 男達の性宴

蔵屋
BL
  僕が通う高校の学校医望月先生に  今夜8時に来るよう、青山のホテルに  誘われた。  ホテルに来れば会場に案内すると  言われ、会場案内図を渡された。  高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を  早くも社会人扱いする両親。  僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、  東京へ飛ばして行った。

隣の親父

むちむちボディ
BL
隣に住んでいる中年親父との出来事です。

水泳部合宿

RIKUTO
BL
とある田舎の高校にかよう目立たない男子高校生は、快活な水泳部員に半ば強引に合宿に参加する。

処理中です...